個別指導関連情報

全国初、画期的事例! 厚生局が書面回答
「個別指導は行政手続法が適用」「質問検査権を有していない」

個別指導で面接懇談方式を実践 - 「指導」と「監査」の峻別に大きな一歩

 協会は、個別指導の改善を厚労省や厚生局に要請する際に、個別指導を行政手続法に則って運営することを求めている。厚労省は過去(2001年、2003年)に、個別指導が行政手続法に基づくことを認めていたが、近年は明言を避けたり「適用されない」と説明するようになっている。
 協会会員が4年にわたり奮闘した個別指導の実例を通して、関東信越厚生局から「個別指導は行政手続法が適用される」と書面で回答を得ていることを報告する。同事例の中で関東信越厚生局は、個別指導では「質問又は検査をする権限(質問検査権)を有していない」ことも書面で回答している。
 会員の個別指導は、質問検査を受けることなく、指導大綱に則り「面接懇談方式」にて終了し、指摘事項は1点のみ、「概ね妥当」の結果通知を受けている。
 これら2つの回答を書面で得たことや面接懇談方式で個別指導を実践したことは画期的なことであり、「個別指導」が本来果たすべきである「保険診療のルールを学ぶ機会」「研修の機会」にしていく大きな一歩につながるものである。
 協会は、2014年に「個別指導再開問題対策検討委員会」を設置し、本件における会員支援や諸対応を講じてきていた。今回の事例を踏まえ、個別指導と監査を峻別して運営することや、「中断」のルール化などを、個別指導の改善を求めていく。
 本件に関するご質問やご意見等があれば協会事務局まで寄せられたい。(関連:別ページに部長談話。行政手続法の解説は資料3、経過年表は資料5)
 開始から結果通知が届くまでの4年間 - 概要と経過報告 
1.第1回目の個別指導
 会員は、2011年度の集団的個別指導に選定された際、厚生局に高点数による集団的個別指導の選定方法について質問したが、根拠等の回答がされなかったため、集団的個別指導を欠席、2013年3月5日(2012年度)に第1回目の個別指導を受けた。
 個別指導では、弁護士の帯同、録音・録画を実施。厚生局に対して、法律に則った面接懇談方式での個別指導の実施を求め、終了した。この日の指導の中で、カルテを提示することは、健保法、指導大綱にも明示されておらず、一方、会員が任意の協力に基づくという行手法の規定に沿った対応をするために、カルテ提示の根拠を質問。個人情報保護法、健保法の解釈を尋ねると、関東信越厚生局、国保医療課、立会人すべてが対応できず、カルテを提示しないまま個別指導が行われた。厚生局側は、「任意でもカルテを提示しなければ中断する」とほのめかしたり、「カルテが提示されないのなら指導の意味が無いので監査に移行することになる」と誤った説明をすることがあったが、カルテを提示することはなく診療内容の一般的な質問のやり取りが行われた。最終的には2人の指導官が「指導することはない」としたために、事務官から「本日の指導は終了します」と宣言がされることとなった。会員は本当に終了したのか問うたものの、事務官からは終了したことが繰り返し告げられた。この時の厚生局側の体制は、通常の個別指導と同様、埼玉県の指導医、厚生局の指導医、埼玉県の事務官(後に厚生局が加わった)が担当した。
 しかし、結果通知が届かず3カ月が経過した後、厚生局から会員に電話で「終了は誤りだった」と告げられた。指導の「終了宣言」は撤回され、個別指導は「中断している」、その理由は個別指導で「カルテを閲覧していなかった」というものだった。
2.くり返された中断と全国初の画期的書面回答
 会員は、終了したはずの個別指導を「中断」に変えた判断理由、責任の所在、「中断」の法的根拠、行政手続法に違反する行為であること、などについて厚生局に書面を提出。厚生局は「行政手続法は一般法であり、特別法である健康保険法が優先される」と説明し、個別指導は行政手続法に基づく行政指導ではないと主張していた。
 会員が奮闘する中、協会は厚労省指導監査室に「終了」したはずの個別指導が一方的に撤回され、「中断」扱いとされているなど法令違反が行われていることを指摘。この時に、「行政手続法は一般法であり健康保険法が優先される」とする解釈は、裁判判決を誤引用していることが判明した。
 前回から1年後の2014年3月、厚生局から2回目の再開通知が出されたため会員は会場に出向いた。個別指導が再開されるに当たり、厚生局からは「終了宣言が誤りであった」と謝罪はあったが、中断としたことや指導を再開するのは厚労大臣の権限で行えると強弁したため、会員は以降も行政手続法に反していること、中断の法的根拠等を、書面を提出し問い質していった。
 同年9月(3回目)、2016年11月(4回目)に個別指導再開通知が出され、その都度厚生局に出向くも中断の法的根拠等は示されず、「中断は厚労大臣の裁量で行う」という回答のみで質疑のやり取りに終始、指導再開には至らず毎回「懇談」となった。この時会員は、厚生局の回答次第では個別指導に応ずることができるよう、厚生局に出向く都度、対象患者のカルテ、関連資料をすべて準備して会場に持参した。
 厚生局側の体制にも変化があった。2回目から4回目は、厚生局の技官、厚生局指導監査課課長、課長補佐ら厚生局の事務官、埼玉県の事務官、厚生局医療課の事務官に加え、訟務専門員として弁護士が加わり8人という大人数で対応した。協会は、会員を支援しながら厚生局に対して諸要請を継続した。
 再開通知が出される間も、会員は厚生局に質問を出し、厚生局は回答するということを、書面でやり取りした。中断の根拠については具体的な回答は示されなかったものの、2015年3月末ついに厚生局は解釈を修正し「個別指導は行政手続法が適用される」、2017年2月末には「個別指導は質問検査権を有していない」との回答を会員は得た。(資料1・2)
3.面接懇談方式で個別指導は行われ、終了
 5回目の再開通知が出された2017年3月、会員はこれまでの中断の根拠への回答に納得はできないが、「健保法第73条等法律に則って指導が行われるのであれば応じる」との意見書を出し、個別指導が再開された。5回目の厚生局の体制は、厚生局の技官、厚生局指導監査課長、課長補佐ら厚生局の事務官、埼玉県の事務官、及び立会人の7人が担当した。
 厚生局の技官は「それでは●●さんのカルテを見せてください」とカルテの提示を求め、技官が持つレセプトと突き合わせようとした。会員は、①質問検査権(カルテを見てその内容について質問をする権限)が認められているのは健保法第78条に基づく監査の場合であって、健保法第73条に基づく個別指導では認められていない、②健保法第73条に基づく個別指導は行政手続法に基づく行政指導であるので、会員がカルテを提示する必要があると判断した場合にはカルテを提示する、という意見を厚生局に示した。また、当然のようにカルテの閲覧を求める指導医の行為は法律に則っていないことを指摘し、法律に則った形で個別指導を行うように厚生局に求めた。(資料4「面接懇談方式」は指導大綱等に)
・厚生局はカルテの閲覧は、持参物の確認として、持参資料に不足はないかという観点で閲覧した。
・対象患者のカルテとレセプトの突き合わせをするのではなく、指導大綱で規定している“面接懇談方式”が実践された。
・厚生局側はレセプトに基づいて診療内容、検査の実施方法・頻度、電子カルテの記述方法など一般的な質問をし、会員が回答、会員からも疑問点を技官に質問し意見を聞くなどのやり取りが行われた。
・対象患者30件すべてに実施、予定時間の2時間ちょうどで個別指導は終了した。
・通常は指導日から1~1カ月半後に指導結果が送付されるが、今回は指導日から1カ月経たないうちに、結果通知が送付された。結果は、4年前の終了宣言があった時と同様、1点の指摘事項を受けたのみで、「概ね妥当」であった。
 実に終了まで4年もの長期間に渡り厚生局と対峙し、2017年3月に指導は完全に終了した。
 

●資料1 個別指導は行政手続法が適用される(書面の抜粋)

2015年3月31日
関東信越厚生局指導監査課

「基本的考え方」について

<会員から提出した書面の質問>
 行政手続法と健康保険法との関係について、健康保険法第73 条では、指導を受ける義務が規定されており、指導の日時・場所・指導内容については一定の裁量権があると思われるが、目的に照らし合理的な範囲を逸脱してはならないことは明らかであり、また、これら以外について行政手続法の行政指導の条項が適用されるのは当然である。
<厚生局の回答>
 健康保険法に定めのない事項については行政手続法が適用されるものと考えます。
 

●資料2 個別指導は質問検査権を有していない(書面の抜粋)

2017年2月28日
関東信越厚生局指導監査課

個別指導に関する質問について(回答)

質問2)個別指導における質問検査権について
(回答)
1.個別指導は健康保険法第73条に基づいて行うものであり、同法78条に規定されているような質問又は検査する権限(いわゆる質問検査権)は有していません。
2.個別指導の実施方法は、保険医療機関等に課せられている厚生労働大臣の指導を受ける義務に基づき、関係書類を閲覧し、個別に面接懇談方式で実施するものであります。
3.略
 

●資料3 行政手続法の解説埼玉県保険医協会発行「個別指導対策の要点」より

行政手続法(指導に関する項の抜粋)

 保険医の味方になる法律が行政手続法(以下、行手法)です。行政指導を行う際の手続等を定めており、厚生労働省、厚生局等が行う個別指導は全て行手法に則って実施されなければなりません。
 現行の指導大綱・監査要綱は行手法に違反している部分もあります。以下、指導に関する条項と現状の指導で行手法に抵触する場合、協会顧問の梶山弁護士のコメント等掲載しました。
 協会では行手法に則った指導となるように改善を求めています。
 【総】=総務庁(当時)の見解

第1章 総則
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 6 行政指導…行政機関がその任務または所掌事務の範囲において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって、処分に該当しないものをいう。
第4章 行政指導
(行政指導の一般原則)
第32条① 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務または所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
② 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

【梶山弁護士のコメント】
 指導が任意の協力に基づくものであることを明確に示しています。
 自主返還の強要は職務権限を逸脱しており32条違反になります。指導大綱上「改善報告書の提出を求める」規定があっても強要すれば、32条違反です。
 また、指導に不服従の場合の脅しも32条違反です。指導内容に従わなかったことを理由に不利益な取り扱いをしてはなりません。指導大綱上の「正当な理由なく個別指導拒否した場合は監査」の規定も32条違反といえます。
 結局のところ、保険医の任意、自由意思による態度決定を無視して、指導内容に無理矢理従わせようとすることがあれば、32条に違反することは明白です。
【総】行政指導に従うか否かは相手の自由であって、当該相手方の判断の任意性を損なわせることがないよう、行政指導に携わる者に対して、仮に相手方が当該行政指導に従わなかったとしても、これを理由としてその相手方に不利益な取扱いをしてはならないことを職務上の義務として規定したものである。
 

●資料4 「面接懇談方式」は指導大綱に記述あり

1.指導大綱

第3 指導形態
 指導の形態は、次のとおりとする。(1、2 略)
3 個別指導
 個別指導は、厚生労働省又は地方厚生(支)局及び都道府県が次のいずれかの形態により、指導対象となる保険医療機関等を一定の場所に集めて又は当該保険医療機関等において個別に面接懇談方式により行う
(1)~(3)略
第6 指導方法等(1・2略)
3 個別指導(1)・(2)略
(3) 指導の方法
 指導は、原則として指導月以前の連続した2カ月分の診療報酬明細書に基づき、関係書類等を閲覧し、面接懇談方式により行う

2.指導大綱関係実施要領

第7 個別指導(1・2略)
3 実施方法等(1)・(2)略
(1)指導は、原則として指導月以前の連続した2カ月のレセプトに基づき、診療録その他の関係書類を閲覧し、個別に面接懇談方式により行うこととする。
(2)略
 

●資料5 面接懇談個別指導終了までの主な経過


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