声明・談話

<歯科部長談話>マスコミは事実に立脚した報道を 社会保障としての歯科医療を守る立場から診療報酬の大幅な引き上げを求める

 朝日新聞は二月二十七日、「歯科医療費 改定幅超す伸び」「医療の値段『保険村の闇』」とする記事を掲載した。六月の骨太の方針策定前に掲載された今回の記事は二〇一〇年度社会保障費二二〇〇削減の大部分に当てられる医療費を対象にしたバッシングと言える。「医療費の伸び率」を「診療報酬改定率」と混同し、厚労省の見解さえ踏みにじる一方的な報道で、患者、国民と医療関係者を対立させ、お互いの不信を煽るものとなっている。協会歯科部は、社会保障としての歯科医療を守り、事実に立脚した報道を求める立場から部長談話を掲載する。

 二月二七日、朝日新聞は「歯科医療費 改定幅超す伸び 〇八年度上半期 歯科医学会長『請求上げ幅 膨らませた』」との記事を七面で載せ、また関係記事として一五面に「医療の値段『保険村』の闇 緩めた請求基準、不正呼ぶ」と一面半分を使った記事を掲載した。

 「七面記事(改定幅)」では、〇八年度の歯科の診療報酬改定率〇.四二%に対し、〇八年度上半期(四~九月)の「歯科診療報酬が三.四%増」とし、「決めた伸び率を大きく上回った」と断じた。

 これに対し、神奈川県保険医協会の池川明医療運動部会長は、「記事が引用した『三.四%増』とは、厚労省の対前年比の『医療費の動向』の数値であり、診療報酬の伸び率を示すものではない。『医療費の伸び率≠診療報酬改定率』は医療関係者の間では常識であり、近年の医療費伸び率は高齢化の影響が色濃くなっていることは医療費を語る上では初歩的な話である。この医療費伸び率とて、財務省予算から試算すれば歯科は四.一二%(=想定の伸び率三.七%+改定率〇.四二%)となるべきであり、それに比べれば低いのである。決して大幅な伸びなど見せておらず、一月の中医協でも厚労省医療課は同様の見解を示している」と、見解の相違などと言い逃れることができないほどにわかりやすく検証し、明確に反論している。

 そもそも〇八年度歯科診療報酬改定は、技術料本体〇.四二%のプラス改定と言われたが、初・再診料や三〇年間据え置かれていた基礎的技術料が一部のみ、わずかに引き上げられたにすぎず、長年の低歯科診療報酬に加え、贈収賄事件に対する報復的改定であった〇六年度改定による歯科医療費マイナス三.九%で改定された歯科医療費をベースにした上での『技術料本体〇.四二%のプラス改定』である。〇八年だけ見て〇.四二%のプラスであると強弁されても〇六年改定から見れば、低くなった分を回復するにも程遠い、プラスになっていない見せかけのプラス改定である。

 実際、企業と同じく常勤歯科衛生士からアルバイトスタッフへの切替など限度を超えた経費削減は医療の質も低下せざるを得ない状況である。ワーキングプアの歯科医師が増加している現状については『過労死寸前の長時間労働をしてまで診療をしているのか、それは診療報酬が低すぎて経営が成り立たないからであり、家計が成り立たないからである(大阪歯科保険医新聞2/5号より)』として、清家裕氏も税理士の視点から分析している。

 協会は、歯科医療の崩壊を食い止め、患者・国民が必要とする、底辺の広い良質な歯科医療を継続して社会保障として供給でき、歯科医療機関の経営が改善できるように歯科診療報酬の大幅な引き上げを強く求めるものである。

 また、正確な情報を記者の方々に提供することの必要性を強く認識するとともに、マスコミには事実に立脚した報道を強く望むものである。

埼玉保険医新聞 2009年4月5日号


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