論壇

在日米軍駐留経費「思いやり予算」を国民の医療に!

戸田市 福田 純

 医療費の抑制策は一九八〇年代の中曽根政権当時から始まり、世の中バブルで沸いた時代も医療界はこれに浴する事はなかった。日本列島改造論に後押しされ、公共事業費は潤沢にあてがわれたが、「膨張する医療費は国を滅ぼす」との“医療費亡国論”故であった。医療の進歩や国民の医療への要望の高まり、そして高齢化社会を迎え医療費の自然増は避けられない。そんな中、「如何に医療費を、医療費の伸びを抑えるか」が政府与党の課題とされてきた。二年毎の診療報酬改定時も変更前から総枠は決まっており、分担比率の奪い合いに終始されてきた。当初「社会福祉目的税」として導入された消費税も国民は見事に裏切られた。菅新政権が消費税一〇%を提唱し始め、膨張する社会保障費をどこから捻出するか? が喫緊の課題である。厳しい財源を考える中、私は在日米軍駐留経費いわゆる「思いやり予算」に視点を向けた。その前に、まず現状の米軍駐留経費について考えてみよう。世界中の同盟国に米軍の基地は分散し、その中で経費負担している国は二二カ国。米軍支援の総額は七六億ドル。このうち日本の支援額は四六億ドル(総額の六〇%)を超えている。これは日本を除く二一カ国の合計よりも多く支払っていることになる。更に駐留米軍人一人当たりでは(日:一〇・五九万ドル/独:二・一七万ドル/韓国:二・一七万ドル/伊:四・八六万ドル/英:二・一一万ドル)と日本の支援が突出し、同じ敗戦国のドイツと比べても五倍近い。

 そもそも「思いやり予算」はどのような経緯で始まったのか?一九七八年、円高ドル安に苦しむアメリカに配慮し、当時の金丸信防衛庁長官による在日米軍への財政支援から始まった。その年は六二億円だったが二〇〇〇年には二七五五億円に膨れた。これとておもての支援額で実際は六六〇〇億円になるとも言われている。巨大な赤字を抱える米国にあって、日本はていの良い“財布”である。真っ当な議論をせずとも多額のお金を気前よく捻出する同盟国。「上手くおだてて怒らせなければ、これから先も米国の“財布”で在り続けるであろう」と。これでは属国や植民地と同じでとても対等な同盟国と呼べるものではない。日本人の中には、日米安保条約下にあるから、有事の際に「米軍は日本を守ってくれる」と信じ込んでいる人が少なくない。だがそうであろうか? 米国の歴史や現代までの言動をよく観察していればそれは確約されたものでない事がわかる。米国は「自国の国益に忠実に行動する」だけである。「株式会社が株主のためにのみ行動するが如く」である。その途上に日本があれば「日本を守る」と映るだけの話である。在日米軍基地を無料で使いたい放題、駐留経費の八〇%は出してくれる。なんとも日本は居心地がいい場所なのである。

 鳩山政権が普天間基地問題で引責辞任したが、これも米国のおねだりが原因である。米国の世界戦略の中にある米軍再編問題において、沖縄海兵隊は既にグアム移転が決まっていた。更に戦後六五年経過し、老朽化の目立つ各基地施設の更新。それらの費用を「どこから捻出するか?」が米国議会で議論された結果、「(議論もせずに気前のいい)日本に出させよう!」であった。米国が沖縄に固執した理由は「日本はごっつぁんな国」なのである。米国政府とそれと手を組む外務・防衛官僚にまんまと嵌められて鳩山首相は辞任に追い込まれた、という筋書きがある。

 米軍から駐留費を徴収している国々もある中、日本もいい加減にキチンと米国と話をする時期に来ていると私は考える。日本国の借金も一〇〇〇兆円と膨らみ、ギリシャの二の舞を懸念する声が上がる中、もはや米国を思いやっている状況にない。

 加えて、既に日本のGDPを追い抜いたと伝えられている中国。その中国にいまだに多額(累積六兆円)を払い続けているODA費。日本からせしめたODA費を第三国に横流ししている話も聞こえている。もちろん中国からのODA費として、さらに国連の分担金も米国を除く、他の常任理事国の分担金総額よりも日本の分担金額は多い。理不尽な国外支出が多過ぎる。国内の仕分けのみならず、外務省や防衛省関連の事業仕分けも積極的に見直すべきである。

 だが、在日米軍駐留費を削ったくらいで日本の医療費の高騰には追い付かない。二〇三五年には現在の国民医療費三五兆円が約二倍を超えると予想されている。根本から皆保険制度の財源システムを変えないと、今後、数十年先の見通しは立たない。保険料、公費負担や自己負担の割り当てを大きく変えなければ成り立たない。もし保険料だけでこれを賄うと保険料率二四%が、また消費税だけで賄おうとすれば消費税率一三%が必要となるとの試算もある。もちろんこれらの折衷案が考えられるが尋常でない事は明白であろう。

 とにかく、現状は国内の台所事情が火の車なのに、気前よく呑気に諸外国に振舞っている時でない事は明白である。早急に対策を講じていただきたい。

2010年7月5日埼玉保険医新聞掲載


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