論壇

消費税増税は国民世論に反する

さいたま市 松本 光正
 
 なりふり構わぬと言う表現はいつでもあるが、今回の消費税率引き上げの野田首相、民主党、自民党、公明党の姿は、まさに「なりふり構わぬ」という表現がぴったりの行動であろう。何をおいても、絶対に引き上げるという強い姿勢には呆れを通り越し、仰天である。
 なぜこうまでして増税するのか、多くの国民は全く理解出来ないものがある。背後に検討がつかないほど大きな力が働いているのだろう。そうでなければこれほどまでにがむしゃらに突き進むことはない。
 この増税には医療界だけでなく多くの国民が反対を表明している。東日本大震災の被災地では「消費税増税は生活再建の足かせになる」「復興に逆効果」という声が大多数である。消費税一〇%となると、宮城、岩手、福島の被災三県の増税額は毎年五六〇〇億円以上に達する。被災地への支援金が吹っ飛んでしまう規模の増税だ。「一〇〇年に一度の大災害の時に連続して大増税など打ち出すべきではない」というのが被災地の人々の声である。
 増税したならば景気は大幅に冷え込むことは一九九七年、橋本内閣の税率引き上げで学んだはずなのだが、それが一向に生かされないのはなぜか。増税で景気が冷え込んでも、その増税で大いに潤う集団がこの国を動かしているからであろう。
 消費税は最終消費者が負担する仕組みであるが、輸出企業の取引には、消費税が免税される輸出免税という規定があり、莫大な還元を受けている。消費税増税はトヨタや日産を初めとする経団連の面々が仕組んだ大きな罠であり、さらにその背後で日本経済を操るアメリカの力であろう事は想像に難くない。
 節約や見直しを十分にして、それでも税収が足りないというなら誰でもが納得するが、節約もせず、見直しもせずにただ増税では誰しも納得出来ないのは当然である。「経団連の声ではなく、国民の声を聞いて財源の確保をはかるべきだ」と強く言いたい。
 病院や診療所が転嫁できずにかぶっている消費税(損税)は、日本医師会の試算で二三三〇億円(二〇一〇年度推計値)にのぼっている。政府は、損税の問題点は認めたうえで、消費税の一〇%への増税後も「診療報酬で対応していく」(安住淳財務相)としている。しかし、かかった医療費の原則三割が患者負担なので、損税を解消するために診療報酬を引き上げれば患者負担も上がる。医療を非課税としていることと矛盾する。
 この間、診療報酬は引き下げか据え置きされてきたのが実態であり、多くの医師からも、「損税が解消できるだけの引き上げがされるのか」「このままでは医療機関は立ち行かない」という声が噴出している。
 安住財務相は、「とても病院を経営していられない」という声があるのを認めつつ、「医療機関に適切なある程度の負担だけはぜひお願いしたいという気持ちもある」と発言(七月二十五日、参院社会保障・税特別委員会)。損税の完全な解消を放棄する姿勢を示している。
 協会は、仕入れにかかった税の控除ができる税制が必要だと考え、その具体策として医療費の「ゼロ税率」導入を求めている。ゼロ税率にすると、仕入れにかかった消費税が還付され、患者も、消費税負担を一切負わずにすむ。輸出企業には、輸出品に転嫁できない莫大な消費税が戻し税として還付されているのであるから、医療機関が払う消費税も還付すべきだという医療界の要求は、当然である。
 しかし政府は「兆円単位の税収が失われる」(安住財務相)として拒否している。
 そもそも医療は「消費」なのであろうか。大いに疑問である。

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