論壇

新自由主義経済下での社会保障・税の一体改革

富士見市 入交 信廣
 一二年八月、野田内閣のもと、「社会保障機能強化」、「財政健全化」を目的に、消費税増税を含む関連法案が成立した。
A)社会保障
 年金、医療、介護の給付額合計は十一年度で一〇七・八兆円と見込まれ、原資は保険料収入、公費負担、資産収入で賄われ、毎年、一兆円以上増加し続けている。特に、公費負担は三九・九兆円で、その五割弱が公債で占められ、国の借金(一一年度でGDP比二〇四%)増加の大きな原因になっている。
 「社会保障機能強化」として増額部分は、医療、介護分野では、在宅医療、在宅介護、介護施設のユニット化など、年金分野では、低所得者、障害基礎年金への給付加算などに計三兆円を投入する。減額部分としては、医療、介護分野で平均在院日数および、外来受診の抑制、施設介護から在宅介護への移行などにより一・二兆円。年金分野では、高所得者の年金減額、支給開始年齢の六〇歳から六五歳への引き上げなどがある。
 日本の高齢化率は主要先進国中、最も高く、六五歳以上人口は一〇年二三・一%、二〇年には二九・二%と予想される。しかし、日本の社会保障費は、主要先進国中、米国に次いで少ない低福祉国で、家族と企業が社会福祉を補う役割を果たしてきた。
 我が国では、統計上、主な介護の七割を家族が担っている。しかし、核家族化による介護の崩壊(孤独死の増加など)が進行している。一方、終身雇用制度によりセーフティネットを形成してきた企業も「新自由主義」の潮流により変革しつつある。
B)新自由主義
 アメリカを大恐慌から立ち直らせたケインズ学説は、「大きな政府」による積極的な富の再配分などを行った。しかし、先進国の低成長化、消費の低迷、財政赤字の深刻化から、八〇年代頃よりフリードマンらの唱える「新自由主義」が日本も含め、欧米先進国で政治経済に反映されてきた。
 その実態は、多国籍企業が世界市場で勝ち抜くため市場原理主義を掲げ、社会福祉などを最小限にした「小さな政府」のもと、弱肉強食の競争の強化、格差の拡大を容認するため、「剥き出しの資本主義」と呼ばれている。利潤追求のため国内産業の空洞化さえもいとわず「実態のない経済」が生み出されている。
C)税の改革
 「財政健全化」として消費税が導入された。
 本年二月、埼玉協会から会員に配布したパンフレット「私たちのこれから」に興味深い数字がある。八九年に導入された消費税の国民負担累計は一〇年までに二二四兆円で、同時期の法人税率引き下げによる国の減収額は二〇八兆円と、ほぼ消費税で法人減税分を補っている。
 さらにこの間、企業は新自由主義のもと、製造拠点の海外移転、非正規社員の増加などで(九六年の一〇三一万人から一〇年の一九六〇万人)、社会、社員に還元されない内部留保の合計を二六六・二兆円にまで高めている。安倍政権下では、マネーサプライの増加によるミニバブルにより、二%の持続性あるインフレを維持しようとしている。
 二%のインフレ下、一四年に消費税が八%になると、物価は約四%上昇、一五年に消費税一〇%になると、今後四?五年で物価は一〇%上昇すると試算されている。一方、〇一年?一一年の一〇年間で、日本人の平均給与は、一〇%減少している。新しい産業を興し平均賃金が上がらなければ、庶民の生活、税収を圧迫するであろう。なお、消費税は国税収入総枠を増やした実績はない。
 バブル崩壊後、景気刺激のため、ひたすら公共事業投資が行われ「失われた二十年」と膨大な財政赤字が作られた。
 安倍政権は同じ手法を再び行おうとしており、新たな「失われた十年」はより大きな財政悪化を招くであろう。
 とはいえ、安直に増税と社会保障削減に求めるべきではない。
 行きすぎた新自由主義の是正、非正規雇用の是正により実態の伴う経済回復を急ぐべきである。

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