論壇

難治性疼痛について

秩父市 新井恵子
 「腰痛で、整形外科に通っています。カウンセリングが必要だと言われたのですが、○○病院は遠くて行けません」と電話があった。「受診していただいてお話伺っていいですか。今までの経過を書いてきてください」とお答えし、一時間の時間を取った。半年前からの腰痛で、整形外科数か所、心療内科、漢方内科とドクターショッピングを繰り返しておられた。MRI撮影が行われ、異常なく、消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛治療薬、抗鬱剤が処方されていたが抗鬱剤は服用されていなかった。
 腰痛の診断では短期間しか休めないので、仕事は退職されていた。トリガーポイントを診断治療し軽快している。誰にでもおこりうる話である。痛みの治療に対しての問題点と若干の私見を述べたいと思う。

 問題点1:原因がわかっていない
 二〇一三年三月の朝日新聞に八〇%の腰痛が原因不明であると掲載された。整形外科学会と腰痛学会が発表した腰痛診療ガイドラインを基にした記事である。このガイドラインには診断法、治療法のエビデンスレベルが記載されているが、原因不明の腰痛は治療されなくてもいいともとれる内容である。
 昨今、英国医師会の「腰痛・頸部痛ガイド」が翻訳された。非特異腰痛について実際に試みる治療が記載されている。わが国でも痛みの治療についての研究が必要である。

 問題点2:理解されていない
 疎外感に苦しめられている人も多く、痛みをもった患者を支えようとする意識が社会全体に乏しいため、患者の多くが、孤独に痛みと闘わざるを得ない状況にある。がん対策基本法のように、難治性疼痛対策基本法の設立を求めて、国会活動を始めた団体がある。痛みを放置してはいけないという認識を社会全体が持つ必要がある。

 問題点3:多職種の連携が必要である
 患者さんは、整形外科、神経内科、精神科、ペインクリニックなど多種の科のどこを受診していいかわからない。
 現状では、治療家同士の有機的な繋がりはない。海外にある学際的痛みセンターは"痛みに対して診療科・職種の壁を越えて取り組む"という理念に基づき設立されている。日本では、一、二の大学に設置されているが、圧倒的に数が少なく、早急に拠点病院が作られる必要がある。

 問題点4:医科歯科の連携が必要である
 歯科の痛みは歯科領域だけで解決せず、また医科の痛みも医科領域だけでは解決しない。法律では別々に養成されている医師、歯科医師は、協働する必要がある。

 問題点5:筋膜の機能に対する研究が必要
 二〇〇三年、故ケネディ大統領の主治医トラベル女史によって、トリガーポイントの概念が発表された。昨年開かれた日本疼痛学会では「筋筋膜性疼痛に対する臨床」というタイトルで、コメディカル講演会が開催された。
 難治性疼痛の原因は筋筋膜性疼痛だけではないが、少なくとも筋膜の痛みは治療されるべきである。誰がやるのであろう。やらなければならないと思った職種の人がやるべきであろう。医師も筋膜の治療を始めると、患者さんに感謝され臨床が楽しくなる。

 問題点6:代替医療に対する研究が必要である
 混合診療は解禁されていないが、代替医療としての痛みの治療は多数ある、医療関係者でもわからない状況に、患者さんは戸惑うばかりである。この領域でも研究が必要である。
 
 以上、問題点、現状、私見を述べた。ご意見、ご批判をいただければ幸いである。

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