声明・談話

歯科診療報酬改定に対する談話

1.止まらない「歯科医療崩壊」
 2014年の診療報酬改定において、歯科診療報酬本体はプラス0.99%。消費税補填分(0.87%)を除くとわずか0.12%のプラス改定であり、財源は前回改定の10分の1以下の約34億円である。
 自公政権により断行された4回にもおよぶマイナス改定は「歯科医療崩壊」を引き起こし、その後の民主党政権により、わずかではあったものの2回のプラス改定が行われた。長年2兆5千億円程度で推移していた歯科医療費は、近年では拡大が見られたものの、依然として歯科医療崩壊は進行しており、今回の改定も歯止めをかけるものではない。

2.善良な歯科医師を巻き込む「患者紹介ビジネス」への対応
 2014年の改定は高齢者が増え続けている現状を踏まえ、財源の多くは高齢者数がピークを迎える2025年への対応として挙げられている、病院、施設から在宅への患者の移行にあてられた。
 その結果、患者紹介ビジネス「不適切事例」への対応として、「歯科訪問診療2」は大きく引き下げられ、同一日に10人以上診療した場合に算定する「歯科訪問診療3」143点が新設された。大幅な引き下げにより、施設を中心に訪問診療を行っている歯科医院は深刻な経営的打撃を被ることになる。本来であれば、厚生労働省が患者紹介ビジネス業者を指導監視するべきであり、善良に訪問診療を行っている歯科医師を巻き込むことは断じて容認できない。
 医科では特養や老健には嘱託医や看護師を配置する制度があり、診療報酬以外にも社会保障財源の手当てがある。歯科は診療報酬のみで補っているにもかかわらず、同一建物居住者への歯科訪問診療が引き下げられたことにより、将来的に施設に訪問診療を行う歯科医師はいなくなることが考えられる。施設の入居者は歯科医療を受けられなくなる危険性があることに警鐘を鳴らしたい。また、診療報酬以外の社会保障財源の手当てを歯科においても図るよう要求する。

3.保険で良質な補綴治療を担保するために
 歯科技工加算はわずかに引き上げられたが、歯科技工士が直面する過酷な労働環境や、離職や高齢化など様々な問題を改善できるものではない。良質な補綴治療を担保するためにも、補綴全体の点数を引き上げるべきであり、院内のみでなく、開業歯科技工士に対する評価も必要である。また、保険導入されたCAD/CAM冠は、診療所に所持していなくても歯科技工所が所持していれば算定できる柔軟な施設基準により、零細な歯科技工所と大規模に展開する歯科技工所の格差がますます拡大することが懸念される。

4.損税負担を解消するために必要なこと
 消費税増税による補填財源は初・再診料などに充てられたが、医療機関の経営を圧迫する損税を解消するものになっていない。抜本的な改革を行わなければ、医療機関の消費税損税負担は解消されない。支払った消費税が申請により還付される「ゼロ税率」の適用を求める。

5.2014年改定の改善点
 今回の改定により改善された項目もある。歯科医師に多大な事務負担を強いていた歯科疾患管理料の文書提供要件が大幅に緩和された。CAD/CAM冠が保険導入されたことは評価したいが、装置の機種も含めて適用範囲が狭いため、今後拡大していくことが課題といえる。周術期口腔機能管理では医科点数表に歯科へ紹介した場合の点数が新設されるなど、医科歯科連携にかかる項目が評価された。実践には課題が多いが、医科歯科連携の推進が重要視されていることは評価したい。う蝕多発傾向者の判定基準が臨床の実態に即したものとなり、フッ化物塗布が格段に行いやすくなった。また、在宅などで療養を行っている初期根面う蝕の患者にも対象が拡大された。歯周病安定期治療では算定要件とされていた「根分岐部病変を有する」ことが削除された。
 これらの改善点は、私たちがすすめてきた歯科医療の重要性の啓発活動と、診療報酬の改善を求めてきた運動の成果である。


 私たちは、歯科医療の崩壊を食い止め、患者・国民が必要とする、諸外国では類を見ない底辺の広い良質な歯科医療を継続して社会保障として供給でき、歯科医療機関の経営が改善できるように歯科診療報酬の大幅な引き上げを厚労省に強く求める。
 あわせて、国民が安心して歯科医療を受診できるよう、患者の窓口負担の大幅な軽減を求める。
2014年3月23日 埼玉県保険医協会 歯科部

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