パブリックコメント

埼玉県保険医協会は、4月21日に厚労省医政局総務課医療安全推進室宛てに、医療事故調査制度の施行準備にあたって、下記のパブリックコメントを提出しました。
(医療事故調査制度の施行に関する省令への意見)
医療法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見
埼玉県保険医協会
理事長 大場敏明
提出意見
◆(全体に関する意見)
 改正省令案には、医療事故調査制度を施行させるための方法が示されています。
 施行の省令、通知の策定にあたっては、本制度の目的として貴省が示しているとおり、「医療の安全を確保するために、医療事故の再発防止を行う」(2014年10月16日更新版「医療事故調査制度について」のQ&Aより)ための具体的の方途として、記述がされるべきです。

 「WHOのドラフトガイドラインでは、報告システムか「学習を目的としてシステム」と、「説明責任を目的としたシステム」に大別されており、ほとんどのシステムでは、どちらか一方に焦点を当てていると述べています。その上で、学習を目的とした報告システムでは、懲罰を伴わないこと(非懲罰性)、患者、報告者、施設が特定されないこと(秘匿性)、報告システムが報告者や医療機関を処罰する権力を有するいずれの官庁からも独立していること(独立性)などが必要とされています。
 今般の我が国の医療事故調査制度は、同ドラフトガイドライン上の「学習を目的としたシステム」にあたります。したがって、責任追及を目的とするものではなく、医療者が特定されないようにする方向であり、第三者機関の調査結果を警察や行政に届けるものではないことから、WHOドラフトガイドラインでいうところの非懲罰性、秘匿性、独立性といった考え方に整合的なものとなっています。」(以上、前記Q&A回答の参考として記載)

 省令案は大筋、この目的に沿っており評価できるものといえます。しかし、事故調査報告の取扱について、訴訟に利用される可能性が残されていると解釈できます。
 民事訴訟でも刑事訴訟でも訴訟における目的と、本制度の目的は、多くの場合において異なります。責任追及に向けた方途に、本制度における調査報告が利用されることは、制度の本旨を歪めることとならざるを得ません。悪質性のある事例や、繰り返される事例については、本制度によらない方途により、原因や責任を追及されるべきです。

 調査制度のあり方として 「他業種ではどうなっているか」「他国ではどうなっているか」と云う観点で比較すると、例えば、航空機業界の調査制度は正に「学習型」です。ドラフトガイドラインにあるように「学習型」がワールドスタンダードです。

 パブリックコメントの募集は、省令案に限られていますが、省令案の他、通知案、そしてそれらも含めたガイドライン案としてパブリックコメントが募集されること希望します。制度の具体的運用は、通知やガイドラインに委ねられるのが、その理由です。

(個別事項)
◆センターの指定に関する事項
(指定の基準)
 医療法施行規則(案)第1条の13の2、3,4
◯本制度の目的に照らして、センターの独立性、中立性、公平性、専門性など、第三者機関の在り方を担保する規定、基準が必要です。
◯厚生労働省や都道府県の職員、出向者、退任者など、医療法における管理監督的立場を担う、公務員関係者の関与を排除する規定を含めてください。

◆支援団体について
 参議院厚労委員会の付帯決議に「支援団体については、 地域間における事故調査の内容及び質の格差が生じないようにする観点からも、中立性・専門性が確保される仕組みの検討を行うこと。また、事故調査が中立性、透明性及び公正性を確保しつつ、迅速かつ適正に行われるよう努めること」とあり、支援団体は告示で定められるとしています。
 支援団体となる要件を明示し、付帯決議の内容を担保するべきです。例えば、支援団体における支援担当者の資格、経験、年齢。支援する事項の列記など。

◆遺族への説明
 センターが行った調査の結果、医療機関が行った調査の結果については、本制度の目的に照らして運用されるべきで、遺族は、医療関係者に対して責任を追及する目的で調査結果の書面を利用してはならないことを明示してください。
 事故の責任追及は、本制度とは別に行われるべきです。

◆病院等に対する本制度の周知について
 厚生労働大臣は、特に規模が大きくない医療機関等に対して、本制度の目的や対応方法を定期的に周知する機会を設けてください。
以上
参考: 医療事故調査制度の施行に係る検討について
 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000078773.pdf

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