論壇

安保関連法成立 日本を危険に巻き込む集団的自衛権行使容認

富士見市  入交 信廣
 本年5月、「武力攻撃事態法改正法」など10本の改正法案、新規制度として「国際平和支援法」の計11本の法案が、安倍内閣より「健保関連法案」と同じく、ごった煮状態で衆議院本会議に提出された。内容が複雑多岐にわたり、故意にと思われるほど法案を理解困難にしている。
 これらは「安保関連法案」(以下【法案】)と呼ばれ、戦後歴代内閣が認めてきた我が国の「個別的自衛権」に対し、否定されてきた「集団的自衛権」を立法化するものである。同じく重要な点は、①我が国への直接の攻撃がなくても米国など親密な他国が攻撃を受けた場合、武力行使できる自衛隊②世界のどこにでも行ける自衛隊③平時から、いつでも武器使用のできる自衛隊すなわち軍隊を作ることである。
 かつての大日本帝国の海外派兵ですら「邦人の生命、財産が危うく、日本国の権益が侵されている」との個別的自衛権のみの発動で、他国からの攻撃侵略がなくとも海外出兵し、第二次大戦で大敗した。この事実からも、海外派兵できる自衛隊、集団的自衛権を容認する【法案】の大きな危険性が示唆される。
 【A】1959年、最高裁の砂川判決では日本の個別的自衛権と米国の集団的自衛権により米国が日本に駐留することの合憲性をみとめ、日本の集団的自衛権については全く言及されていない【B】「72年見解」では、ベトナム戦争に日本も巻き込まれるのではないかとの国民の不安に対し田中内閣のもと内閣法制局のまとめた、我が国の個別的自衛権は認めるものの、集団的自衛権は憲法上許されないとした。前記【A】【B】について、安倍内閣は、日本を取り巻く安全保障環境が変化、他国への攻撃でも日本の存立を脅かす事態は起こりうると、強引な解釈変更を行い、我が国の集団的自衛権を認めると閣議決定した。
 その後、与党の圧倒的多数により、【法案】を衆参両院で通過させた。白を黒と言いくるめるこの【法案】については、6月の衆議院憲法審査会で、自民党推薦の長谷部恭男氏を含む3人の憲法学者がいずれも、憲法違反だと指摘している。
 何故このような横暴は許されるのか。まず(1)2013年12月の特定秘密保護法で政権に都合の悪い情報は出てこなくなった。(2)2014年4月の国家公務員法の改定で600人の官僚幹部人事が官邸に握られ、官僚達も政権に対し、正論も本音も言えなくなった。(3)小選挙区制度により、候補者の公認と資金を党幹部が一手に掌握することになり、党員は党幹部に反対意見を言いづらくなった。この三段階ステップを巧妙に構築した第二次安倍内閣は、閣議決定を通して、日本を軍事的独裁国家に変貌させることも可能にした。
 一方、近隣諸国に目を向けると、近年、中国は南沙諸島の珊瑚礁を埋めたて、3000m級滑走路を建設している。尖閣諸島を含む東シナ海で一方的に中国は、防空識別圏を設定したが、当然、次に南シナ海にも、防空識別圏を宣言すると思われる。すでに、東シナ海域で、航空自衛隊の緊急発進が、近年急増している。「世界の警察官」を自認しなくなった米国ながら、南シナ海での米軍機の飛行が制限されるなら、米政府のアジア防衛戦略上大きな支障となる。全くの絵空事ではなく、南シナ海で、米中の戦闘機のニアミス、偶発的戦闘が起こらないとの保障はない。
 集団的自衛権を旨とする【法案】ゆえに、もし米中間に戦闘がおこれば、日本は巻き込まれざるを得ない。中国沿岸部には、多数の弾道ミサイルが日本にむけ配置されていると言われる。まず沖縄、次に日本本土へとミサイルが飛来しないとは限らない。
 この時期、危険な【法案】を成立させた安倍首相は後世に「名」を残したいとのことであるが、「悪名」のほうを残す可能性大である。

Copyright © hokeni kyoukai. All rights reserved.

〒330-0074 埼玉県さいたま市浦和区北浦和4-2-2アンリツビル5F TEL:048-824-7130 FAX:048-824-7547