論壇

医療安全確保のために「院内感染対策加算」新設を提案

ふじみ野市  山田 洋孝
 医療安全管理体制の確保が無床診療所をも含めて法的に義務づけられた、第四次改正医療法の施行から十有余年。8月27日付け読売新聞紙上に歯科ユニット(歯科用チェアーマウントユニット:歯科診療で使用する診察用チェアと回転切削装置等の歯科医療器具、歯科用無影灯、うがい装置などを一体化した装置一式)の水配管汚染に警鐘をならす記事が掲載されたことは記憶に新しいかと思う。
 これは、昨年の同紙によるハンドピース滅菌不徹底報道に続く歯科医療安全に関する記事であった。
 歯科診療では、市井の診療所における日常の外来診療であっても診療ごとに大量の機材を使用する。診療に使用したハンドピースを始めとした医療機材の洗浄・消毒・滅菌といった再生処理や歯科ユニットの整備、消耗部品交換には多大な労力と、そして何よりも費用を必要とする。
 安全で安心な医療を提供する上で、院内感染対策を含め、医療安全の取り組みは欠かせない。しかしながら長年に渡り低点数に押さえ付けられてきた歯科保険診療報酬では、急速に進歩する医療機器の医療安全確保に必要な経費を賄いきれなくなっている。
 件の記事で指摘された歯科ユニットの水系回路配管に関しては、本邦では診療前のフラッシング(配管内等に溜まっている水を排出し、新鮮な水に置き換える操作)で対処しているのが現状であり、記事中で触れられている水配管の消毒機能は海外からの輸入ユニットの一部についていた機能であり、国産歯科ユニットでは近年になって1社がようやく対応ユニットを登場させている。
 この機能は後付けではないため、導入には歯科ユニット自体を対応品に買い換える他はなく、医療安全上有用であっても一台数百万円もする設備を複数台買い換えるのは現実的ではない。またそれらのユニットは大半のユニットに比し高価である。
 来春に予定されている診療報酬改定は、昨今の情勢から厳しい内容になるであろう事は想像に難くない。殊に初再診料の引き上げや長年据え置かれてきた技術料の改善は何れも喫緊の課題であるにも係わらず、引き上げ要求に対する厚労省の反応は芳しいものではない。
 しかるに、医療安全を確保し継続性のある保険診療を行うためにも外来環境加算とは別建てにて、院内感染対策加算を求めたい。即ち、既存の外来環境加算は緊急時対応可能な体制を維持するためのものとして位置付けし、これとは別に日常診療でスタンダードプリコーションを実施する費用の手当てとしての院内感染対策加算である。
 処置内容からディスポーザブルなPPE(グローブやマスク、プラスチックエプロンやプラスチックガウンなどの使い捨て個人防護具)のコスト、また使用する機材の再生処理に要するコストを、現在医療の現場で一般的に用いられている、感染の危険度に応じて機材を分類し処理方法を規定するスポルディングの分類に当てはめて設定し、これらに基づいて各処置行為に院内感染対策加算を付けるという発案である。
 これは安全で安心な保険医療提供体制を維持するために最低限欠かせない要求であると考える。如何であろうか。
 来る11月29日に、県北では初開催となる協会主催の歯科医療安全講習会を熊谷で開催する。初冬の午後を院内感染対策を再度学び直すこの機会に是非ご参加いただきたい。

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