論壇

日本の衰退は止められるか?

川口市  石津 英喜
はじめに
 イギリスのEU残留・脱退を問う国民投票は脱退派が上回り、全世界がまさかと驚いた。だれがこの結果を予想できたであろうか。
 一方、日本での参議院選挙は、予想通りの与党圧勝でまさかの展開にはならなかった。改憲の是非のみが問われた選挙ではないが、改憲勢力が票を伸ばし改憲を発議する要件が衆参両院で整ったことで、選挙後一気に改憲議論が報道されている。与党に票をいれた人の中にも、憲法改正には反対だという人も少なくないはずなので、もしも日本で国民投票が実施されたとしても、まさかの結果になることはないと祈っている。どうかテロとの終わらない戦争に巻き込まれることがないようにと願うばかりである。
生活困窮者が増加
 さて、日々の診療で思うのは、生活困窮者が増えていると感じることが多いことである。生活保護世帯を含め、何かアクシデントが起きたときにすぐに困難に至るケースは非常に多い。
 私が勤める県南部の病院では、15年くらい前までは時に路上生活者の方が救急車で搬送されることがあったが、その後は無料低額宿泊所と言われる生活困窮者向けの宿泊所に暮らしている元路上生活者の生活保護の方を多く見かけるようになった。無料低額宿泊所とは生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を提供することを目的とする社会福祉法に基づく施設であるそうだが、無料でも低額でもなく生活保護費のおおくがピンはねされているそうである。
 路上生活よりは身なりや衛生状態は良いが、古くなった独身寮などの一室を更にベニヤ板などで仕切って二段ベッドが一つあてがわれ、二段ベッドの1階部分が居住スペース、2階部分が荷物置き場として利用されていると聞く。二段ベッドが1つで家賃が月4万円が相場と聞いたことがある。いわゆる貧困ビジネスである。
 行政側もその施設を容認している感がある。役所としては、何らかの社会的問題を抱えている入所者を数カ月見極めた上で自立させる方針の様であるが、支援体制がないため長期間脱出できない方も多いと聞く。また、これらの施設の入所者さんの中には驚くような重病を患っている方も多い。
 生活保護でなくても、ゴミ屋敷から救急搬入されるひとり暮らしの方。親戚とはもちろん疎遠であり、たとえ命に関わる状態であっても相談できる家族がいない、衣服の汚れや体臭を気にかけられなくなりかなり不衛生であったりする。いろいろな形態の老人施設が多数増え、施設で具合が悪くなり救急車で搬入されるも施設の人手が足りず、誰も付き添ってこないケースもまま遭遇する。家族も面会にこない。
 現在の非正規雇用者が高齢となる数十年後には、貧困層がさらに膨れ上がるのは目に見えている。
 すでに現在、介護保険の抑制政策も露骨に行われていて介護難民という言葉もちらほら聞かれるが、今後はますます公的な医療や介護サービスが受けられない人が増加することに危惧せざるを得ない。
このままでは日本が衰退?
 本論壇が発行される頃には新東京都知事も決まり、リオ五輪の話題が盛り上がっていると思うが、最近の開催地であるアテネ・北京・ロンドンなどいずれもその後の経済状況はいいとは言えない。
 東京も新都知事の実力次第では、無事に五輪後不況を切り抜けられるのかもしれないが、このまま前都知事の計画通りでいけば閉幕後には不要になった多数の大型競技施設とともに日本の衰退も近い。
 このような状況でこそ、平和憲法維持、社会保障充実、経済復活を願う。かなり険しい道のりかもしれないが、まだ不可能ではない。

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