論壇

彩の国から肥の国へ ~三陸からのエールの橋渡し~

白岡市  高井 徹
はじめに 県内中学校でのふれあい講演会にて
 「暗いに対し明るい、遅いに対し早いという反対言葉があります。上映の最後に被災地の子供たちの国内外に向けた“ありがとう”の合唱がありました。それではその“ありがとう”の反対語は分かりますか」これは県内の中学校で例年行っている、自主製作した動画「被災地に思いを寄せる」を上映して「利他のこころを震災支援活動から学ぶ」ふれあい講演会の最後に投げかける生徒への質問だ。“ありがとう”を漢字で書くと“有難う”がヒントと問いかけてみる。

東日本大震災支援活動
 公的支援が及びにくい地区に物資を届けるボランティア活動を知人とその仲間が行っていることを聞いた私は、彼らを支える後方支援活動を始めた。歯ブラシ、マスク、タオルなどを個別に冷凍用ビニール袋に詰めたアメニティーセットを作り、それらに子どもたちを中心に老若男女の応援メッセージを添えて彼らに託し送り続けた。
 しばらくすると、弊院、校医をする中学校、町役場(現市役所)などにアメニティーセットを利用した方々から、応援メッセージへの礼状が届き、そこから被災地での支援活動へと繋がり、現在は毎年5月の大型連休に、保団連の「よりよく食べるはよりよく生きる」を用いた口腔衛生啓蒙活動と実地指導や、歯型採り要領で拳の石膏模型作りなどのイベントを行っている。最近は我々からの一方通行ではなく、現地の方々から我々に対しての催しがあり、支援から交流活動へと変化してきた。

熊本大震災支援活動
 今年5月の活動時に、今度は熊本の被災地へ我々がアメニティーセットを送ることを伝えた。すると、物資のセット作りを気仙沼の子ども達が行い、児童養護施設の子ども達や職員、岩手県大槌町では主として高齢の方々から熊本への応援メッセージが集まった。
 「今はまだ明日のことは考えられないと思います。私たちもそうでしたから。しかしながら明けない夜はありません。お互い頑張りましょう。」「家族、妹皆流されてしまい、一人での仮設住まいになってしまいました。それでも生きています。前を向くには時間はかかることでしょうが、私も生かされていることに感謝できるようになりました。」など、三陸の方々の生の声を添えて、5月中旬、熊本県御船町の保健センターに、救援依頼の速乾性手指消毒薬と共に送った。

熊本との繋がり
 その2週間後、私にお礼のメールが届いた。熊本市在住で、実家が被災したが、甚大なる被害が出ている益城町や御船町にて口腔衛生ボランティア活動に従事している歯科衛生士からで、活動時に我々のアメニティーセットを手に取り、三陸からの応援文に思わず涙があふれたとあった。
 その繋がりから、都内の小学校1、2年生が書いた応援メッセージを添えたアメニティーセットをその方に送り、避難所での活動に利用してもらった。入学間もない子ども達のメッセージは、被災者に笑みをもたらし、避難所に明かりがともったようだとの嬉しい知らせが届いた。その後、講演をした県内の中学校などで集められた義援金が、この歯科衛生士の母校の小学校で活用されている。

あたりまえに感謝
 はじめに紹介した、ふれあい講演会での最後の質問“ありがとうの反対語”の答えは、上映に登場する前年の中学生の講演感想文にあることを伝える。「電気、水道が使え、家があり、友達がいて、学校に行き勉強ができること、今まではあたりまえのことだと思っていましたが、東日本大震災を通して、ありがたいことだと感じ、幸せなことだと学びました」というもの。「あたりまえの対極が有難いである」ことに会場内の一同がうなずいている。
 病気になって初めて健康のありがたさを実感する。我々医療人は患者の“有り難い”ことから“あたりまえ”の状態に戻す、維持することを求められているのだと、支援活動を通して気付かされた。
 これからも寄り添う気持ちを持ち続けたい。

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