論壇

柏崎刈羽原子力発電所の視察に赴いて

戸田市  福田 純
 東日本大震災から6年9カ月が経過したが、福島原発事故の避難指示区域からの避難者でいまだに自宅に帰れない人々が2.4万人おられ、今年も不自由な思いを抱き、仮設住宅で冬を迎えられる方々には言葉もない。帰るに帰れない現実と向き合っている人々がいるという事から目を背けてはならない。
 新幹線が数分おきに時間通りに走るなど、高度に管理された日本で起きた事故、という事で、ドイツを始めEU諸国や隣国の台湾や韓国までもが福島第一原発事故(フクイチ)の悲惨な現実から多くを学び、脱原発路線を打ち出している。
 ところが、唯一の被爆国でもある事故当事国の日本の現在の姿はどうであろう。安倍政権は原発推進策を着々と推し進めている。すでに鹿児島県の川内原発を皮切りに再稼働し、新潟県の柏崎刈羽原発も再稼働へ向け、原子力規制委員会からその安全運転に関して「合格」のお墨付きが出た。だが、医師でもある米山新潟県知事は「日本でもう一回、原発事故が起きれば、日本にその収拾能力はなく、日本の存亡にも拘わることになる」との考えから「柏崎刈羽原発の再稼働には慎重でならねばならない」と表明。まずはフクイチの総括を国に任せることなく(県知事の職責として)「新潟県独自に検証する」としている。
 そのような時、保団連が企画した柏崎刈羽原発の視察会に参加することにした。日本に於ける原子力発電所の社会的立場ならびに立地状況、柏崎刈羽原発の(過去から現在、そして将来を考えた)歴史や立ち位置などを自分の目で見てこようと思った。
 10月22日は台風21号が日本に接近し、時折強い雨が降る中の視察となった。総勢40数名の視察団が乗ったバスはまず初めに、原発の全景が見渡せる新潟の海岸に到着した。この海岸はかつて蓮池薫・祐木子さんが北朝鮮に拉致された場所であることを聞き、原発とは数kmしか離れていない至近距離に位置している事、そして、今でも北朝鮮の工作員や協力者たちが暗躍し、テロ等の計画準備をしていても、何ら不自然でない場所であると強く感じた。バスは原発敷地内をゆっくり走りながら原発視察の心得などの説明を受け、午前9時ビジターズハウスに到着した。ここではまず、入管時に身分証を提示し本人確認後入館。東電の説明担当者から約40分間、発電所の概要や福島の事故を受けての安全強化対策等の説明がなされ、質疑応答に入った。
 視察メンバーの鋭い質問に副所長は嫌な顔一つ見せず淡々と応答しており、かなりのトレーニングを受けていると察せられた。私は稼働中の原発事故が生じた際の〝住民避難路の確保と避難誘導の手順〟について尋ねたが理想的かつ希望的観点に終始しており、不安を払拭できるものではなかった。原発内の自損事故には自信があるようだが、総合的に考えた場合、合格点はあげられないと判断した。
 ヒトは巨大地震という自然災害の脅威に対し、もっと謙虚に畏敬の念を抱くべきである。その思いの上に立ち、フクイチの全交流電源喪失の真なる主原因はどこにあるのかを探る必要がある。その結果、国や東電の主張している〝想定外の津波〟ではなく〝大地震〟そのものであったと考えるに至った。国会事故調はフクイチの主因は地震によるもので、これへの対策を講じてこなかった〝人災〟であると厳しく指摘。客観的事実を時系列的に検証すれば事故調報告に合点がいく。
 日本はマグニチュード6の地震が全世界の20%も発生する地震大国である。世界最大規模を誇る柏崎刈羽原子力発電所が事故に遭遇すれば被害もフクイチ以上となろう。福島の原因究明があやふやなうちの再稼働などあり得ない話である。原子力規制委員会の安全宣言は原発稼働に対してのみであり、その他の付随的(避難状況や想定外)事項には及んでいない。また、日本海から密かに原発を狙う輩をも念頭に置いておく必要もあろう。
 視察中TEPCO原発サービスホール内で配布されている漫画冊子『原子力発電所に質問です』の中に、主人公の「福島の事故って地震は直接的な原因じゃないだろう?」との問いがあった。それに対して、返答をはぐらかしている箇所が2カ所ある。この部分に、真実と僅かばかり東電の良心が隠されている気がした。原発事故に限らず、安倍政権の国民に対する〝不都合な真実〟への隠ぺい体質はどこ迄続くのだろうか?

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