論壇

安倍政権骨太の方針と消費税増税

富士見市  入交 信廣
 2018年6月15日、第二次安倍政権発足以来、6度目の経済政策運営と改革の基本方針(骨太の方針)が閣議決定された。
 新たな財政再建計画は、①基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)を黒字化する計画を、これまでより、5年遅い25年度に設定し直した、②社会保障費の伸びは「高齢化による増加分に抑制」、③21年度いずれもGDPに対する割合でPB赤字を1.5%程度、債務残高を180%台前半、財政赤字を3%以下に、④19年10月消費税を10%に引き上げ、⑤車や住宅購入支援策などの経済対策を19、20年度当初予算に計上などである。
 鶴田廣巳関西大名誉教授が、月刊保団連6月号(2018:1271号)で、我が国では、かつて、高度成長による経済の歪み、通貨の変動相場制への移行、二度にわたる石油危機、世界的高度成長の崩壊などにより、70年代までの高度経済成長は終焉を迎えた。75年度補正予算から、我が国の本格的な財政赤字が始まる。以後、国と地方の長期債務残高は、17年度末には実に1,093兆円にまで増加している。と、日本の現状を指摘している。
 赤字の原因を、歳出側から見ると、社会保障費(年金、医療、介護、少子化対策)の割合が最も大きく、政府歳出の約三分の一を占め、今後も増加が予想される。財政赤字削減を理由に、社会保障費の過大な削減は、医療を担う我々は容認してはならない。
 財政再建は近世どのように行われてきたのだろう。29年の世界恐慌では、ケインズ経済学説を取り上げたルーズベルト大統領のニューディール政策は成功、アメリカは繁栄する。しかし80年代に入り、財政赤字の累積、官僚主義による非効率化によりミルトンフリードマンらが新自由主義(①小さな政府 ②規制緩和 ③自由化)を唱えた。イギリスのサッチャー首相、アメリカのレーガン大統領らは、この政策により、それぞれの国の景気を立て直した。しかし、日本では新自由主義による景気回復ははたせず、多くのマイナス面があらわれた。中曽根政権以来、小泉政権がこれを引き継ぎ、規制緩和などに力を注いだ。後に問題となるのが、派遣労働の自由化で、リーマンショックでの、大量の派遣切り以後、非正規雇用者の著しい増加を招いた。
 先に紹介した鶴田関西大名誉教授が月刊保団連で述べられた税制改革による財政再建策が、合理的に思えるので、以下に引用させて頂く。
 ①所得税の公正、公平と累進性の確保による所得再分配の強化で5~6兆円の税収。②法人税の税率を現在の23.4%から90年代末の30%程度に引き上げで3兆円以上。③資本金10億円以上の企業の内部留保に対し約2%の課税で約4~7兆円。④純金融資産5,000万円以上1億円未満の準富裕層の保有資産517兆円に0.52%の緩い累進税率で約4.7兆円。⑤金融取引税の採用で1.8~3兆円。⑥タックスヘイブンに対する規制と課税の強化で3~5.4兆円。これらを合計すると、年間21~29兆円の税収を得られ、現在の8%の消費税率を5%に戻せる。
 自民党政権には、その支持基盤とのしがらみゆえ、実現困難なものが多々あると思われるが、この財政再建策が現状打破のヒントになろう。
 現政権下、ケインズ経済学的に土建国家を持続し、新自由主義的にトリクルダウン型経済運営を行ってきた。その結果、非正規労働者、ワーキングプアを増やし、結婚ができず、少子化が進行、貧困の世代間の固定化させ、また、負け組には自己責任を負わせるという、弱肉強食のジャングルのような国ができつつある。
 財政赤字削減のため19年10月に消費税の10%への増税を織り込んでいる。消費税は89年3%、97年5%、14年8%と施行されてきたが、97年、14年の引き上げ後には、景気回復の主たる牽引役の家計消費を抑制、不況を引き起こした。「角を矯めて牛を殺す」のたとえのごとくである。さらなる不況を引き起こすであろう10%への消費税増税を行うべきではない。
 財務省官僚の発想には消費税の引き上げで財政の帳尻をあわせることしかなく、新しい産業をおこし好景気による税の増収を図るという発想はない。そのような発想こそ、政治の領域に属する。過去20年間、財政再建に失敗し続けてきた自民党政権も、新しい産業発展のための経済政策および前記のような税制改革を模索しない限り我が国の未来に光は見えてこない。

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