論壇

何故カルテ(診療録)を書くのか

上尾市  小橋 一成
 何故カルテを書くのか。
 それは、カルテに書かれている内容を患者に見てもらい理解してもらうためである。

はじめに
 医療(診療)は患者と医師のお互いの信頼関係で成り立つと思っている。そして、医師は長い間外来で治療を行い、説明してきた治療内容について患者は承諾を得ているものと思っている。双方疑いを持つことはなく、友好的な関係にある、と思っている。
 ところが、ある日、家族が患者と一緒に来院することがある。病状について説明をした時、患者・家族が今まで説明していた内容を十分理解していない。または全く理解しておらず、改めて説明する必要があることを経験する。こういう時に一番良い方法は今までのカルテに書かれている内容を見せながら説明して理解してもらうことである。

紹介状 緊急入院では
 病院での治療が必要な患者に紹介状を発行することは、よくある。その際、病院主治医より直接、診断名だけではなく、その根拠を聞かれることもある。◯◯◯という薬は何のために使っているのか?などである。主治医に対して、患者が説明できる範囲と思っていたが、驚くべきことに、患者ならびに家族に丁寧に説明していたにもかかわらず、一部しか伝わっていないことがある。時には、「言葉尻」を捉えられ、全く逆のことを伝えていることもある。また、当方には全く話さず、病院の主治医に初めて重大な症状を伝えることもある。
 この事態は患者自身の病状悪化や高齢化、認知症が起きているせいかもしれない。一部の例ではあるが、少なくとも開業医で行った医療内容が患者に十分に伝わらないか、誤って伝わることもあるという、認識を持たなければならない。

カルテ開示を求められる場合がある
 外来とは違い入院した場合、新たな病態が次々と見つかることがある。
 病状が悪くなると、本人だけではなく、家族全体も心穏やかでなくなることはよくある。特に、緊急入院をして亡くなった時、医療関係者が最善の努力をし、適切な治療を行ったとしても、一部ではあるが、患者の家族がそれまでの対応と違い、冷淡になることは、多くの医師が経験しているのではないだろうか。
 医療内容を伝えるべき患者本人がいなくなった場合、今までの病歴を知りたいとの思いを抱く人がいる。そのため、カルテ開示を請求されることがある。その時には原則カルテを見せなければならない。医療訴訟の場合も全く同様である。

カルテを書くことは本当に大変である
 何時如何なる時でも、実際に行った医療行為を確実にカルテに書くことには大変な意味がある。まずは安心して医療ができるということである。また、医師一人ではなく、職員全体に院長の考えている事、やっていることが明らかになり、職員全体で患者に様々な問いかけができる。問いかけの返答も記載すべきである。
 患者の協力も必要だ。自宅で血圧を測ったり、万歩計の歩数を記録したり、糖尿病患者では血糖値の測定も報告してもらう。前回の外来から本日まで何があったのかメモを書いてもらうのも良い。そういったことを通じて、患者自らが病気に関与し、一緒に治していこうという姿勢を作れることは最も大切である。
 時間がなければ、音声入力なども駆使することを考慮しなければならない。

おわりに
 カルテを書くのは、単に、個別指導の際によく指摘される、特定疾患療養管理料の算定要件などを満たすためだと考え、診療行為・医学管理料等の記載が第一義的と考えると、かなり辛いことである。そうではなく、医師をはじめとして診療所全員の努力により、医療レベルを確実に上げられるのだ、という信念を持つと、カルテを書くことが楽になる。
 同時に、医療現場は常に見られているという認識も必要である。記録に残さないことは結局は、そのうち記憶にもなくなるということである。

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