論壇

命をかけた裁判のたたかい、政府を動かす
肝炎患者救済・原爆症認定そして自立支援法訴訟

三郷市 大場 敏明

 数年来、被害者・障がい者が、次々と裁判にも訴えるたたかいに立ち上がり、様々な困難を乗り越え、続けて勝訴してきている。そして、ここ数カ月間、政府と和解の「確認書」を締結し、救済の法律などを成立させる成果を勝ちとってきた。肝炎被害救済(昨年十一月)、原爆症認定集団訴訟(十二月)、そして自立支援法訴訟(今年一月)である。

被害者・障がい者、命をかけ裁判でたたかう

 被害や制度があまりにも不当であると裁判にも訴えてたたかうことは、被害者・障がい者にとっては、健常者以上に大きな困難を伴う。何よりも自らの健康と体調が良くない上に、様々なスティグマ(偏見・差別)により辛い体験を続けてきた中で、マスコミなどに広く身を晒すことは、大きな勇気が必要である。

 肝炎被害救済のたたかいは、「三五〇万人の肝炎患者の命を救え」と裁判に訴え、救済法の制定を求めてきたが、昨年十一月三十日に全てのウイルス性肝炎感染者と患者を救済する肝炎対策基本法を実現した。しかし一方で、毎日一二〇人が亡くなられ、B型肝炎被害者への救済策の具体化はこれからである。

 原爆症認定集団訴訟(原告三〇六人)は、六年余に及ぶたたかいの結果、最近まで二一連勝を続け、昨年八月に「確認書」が交わされ、十二月には「基金創設法」として原告全員救済の制度が法制化された。しかし、この間七〇人余の原告被爆者が亡くなられ、文字どうり命をかけてたたかい抜かれたのであった。

立支援法訴訟で、「応益負担は憲法違反」と

 自立支援法訴訟は、「障害が重いほど負担も重い(応益負担の)法律は憲法違反」と訴えて、全国一四地裁で七一人の原告が提訴(二〇〇八年十月)していたが、今年一月に、政府と「基本合意」に調印した。

 その「合意文書」で、国は「障害者の尊厳を深く傷つけたことを心から反省する」と明記し、応益負担制度の廃止と二〇一三年八月までに障害者自立支援法を廃止し、新たな総合的な福祉法制を実施することを約束したのである。それを受け、原告団は訴訟の終結を表明したのである。

 障害者自立支援法によって、障害者が生きるために欠かせない福祉や医療の支援に一割の自己負担が発生するようになってから、経済的理由から支援サービス利用を減らす障がい者が増加してきた。その結果、地域での生活が困難になる事例が増えており、それは生存権を保障した憲法に違反するとして、集団訴訟に立ち上がったわけだが、「応益負担」制度の違憲性を世に問うたたたかいであった。

世界一の窓口自己負担と、日本の医療崩壊

 障がい者の尊厳を傷つけた自立支援法は、介護保険制度の利用料一割負担などがモデルになっている。そして、これらの「模範」になっているのが医療保険制度における窓口自己負担である。三割にまで増えた負担は、公的保険制度をとっている先進諸国のなかでは、世界一高い。それが国民の受療権を制限し、生存権(憲法二五条)を脅かし、医療崩壊の深刻化に拍車をかけてきた。

 ヨーロッパ諸国は、受診時の患者負担は原則無料である。応益負担は廃止されるべきであり、窓口負担「ゼロ」の運動が、医療崩壊を立て直し、憲法を暮らしに生かす喫緊の課題であると考える。

2010年3月5日埼玉保険医新聞掲載


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