論壇

今回の診療報酬改定、消費税増税に反対

われわれの存在意義が問われている

上尾市  小橋一成
 四月一日より、診療報酬の改定と消費税が増税された。もともと、消費税増税は、来たる超高齢社会のための医療・福祉の充実、ならびに国の借金返済が目的であり、直前の国民総生産(GNP)が伸びていることが前提であった。ところが、GNPの伸び率は、事前予想で一・六~二・六%と予想されていたが、今年になって初めて昨年度の経済成長率が〇・七%と確定した。この時点で消費税増税の根拠は失われていた。
●消費税増税は奇妙なもの
 消費税増税の経過をよく調べて見ると、奇妙なことが分かる。今まですべて支払った消費税は二一三兆円(二〇〇九年度まで)である。しかし、大企業の減税分が一八二兆円となっており、私達が支払った消費税の九〇%に一致する。消費税は不公平税制の典型である。より貧しい人達に、より多く負担がかかる。
 現在でも、窓口負担が重く、治療中断する患者が多くいる。今後はさらに受診中断患者が増える可能性がある。必要な医療を窓口負担の理由で受けられないということがあってはいけない。
●診療報酬改定
在宅医療の大幅引き下げがもたらすもの
 診療報酬改定は消費税増税分を除くと、実質マイナス一・二六%になった。中でも、在宅医療において、同一建物居住者に算定する在宅時医学総合管理料等の点数が同一日に複数人に訪問診療を行った場合、七五%も下げられた。
 一九八六年に開始された訪問診療は、二〇〇〇年四月より施行された介護保険制度により、多くの寝たきり患者が在宅や施設等で医療を受けられることとなった。多くの医療関係者が苦労して、一人一人の高齢者を治療してきた。
 一例では、グループホームに入居している認知症患者に対して、院内処方の医療機関が認知症の薬を処方した場合、在宅医療をするたびに赤字となる例がでてきた。そのため、二十四時間体制で、人員配置も厚くして在宅医療を行ってきた医療機関にとって、体制を確保するだけの報酬が無くなり、在宅医療ができなることを意味する。それ位、今回の改定は酷いものである。
 一方、二〇一一年十月より導入された、サービス付き高齢者向け住宅は、制度設計に問題があった。多くは企業実績もあり、資本力のある民間業者によって経営が行われているため、当然、より効率の良いやり方で、利益も考える。そして、その帰趨として、医師へ仲介料をとる業者が出てきた。そのような事例を持って、「不適切事例」と新聞で報道された。本来は、国が個別の実態を把握すべきであるが、全くせず、一部不適切事例の排除を名目に、診療報酬の大幅引き下げを行い、多くの善良な医療・介護を行っている医療関係者を排除することになった。これは、本末転倒であり、責任転嫁である。
 今まで医療・介護は私達の大いなる頑張りで、なんとか維持してきた。しかし、今回の改定は、認知症をはじめとする、一番社会的に弱い人々への医療を取り上げるという大変なことが起き始めている。
●TPPにより医療崩壊
 さらに、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を結ぼうとしている。アメリカ本国では、どんなにがんばっても、日本のような安価で医療を受けられる「国民皆保険制度」を作ることができなかった。
 アメリカでは医療は民間会社の経営する医療保険を使うしかない。しかし、アメリカの保険会社は大企業であり、市場原理主義といって強者のやり方でやってくる。その結果、個人の医療費ならびに保険料の支払いが膨大なものになり、多くの無保険者を生じている。
 今回、在宅医療の一部の医療破壊が始まっているが、TPPへの参加は、われわれの予想超えて日本の皆保険制度自体を破壊するもとなると考えられる。
●今こそ運動を
 診療報酬改定、消費税増税への反対運動をするのは、今まで何とか保たれてきた、患者・国民の医療・介護の一部が無くなるものと認識すべきである。
 患者・国民の医療をまもることは、 まさにわれわれ医療関係者の存在意義が問われているのである。

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