論壇

消費税10%増税 医療業界はゼロ税率で団結を

富士見市 入交 信廣
 本年4月、8%への消費税引き上げの影響で、4、6月の年間換算GDPは、9月8日の内閣府発表の二次速報値によると7.1%減となった。7、9月のGDPの増減は、11月に発表されることになっている。
 政府は、来年10月からの10%消費税引き上げを本年12月に判断することにしている。多分、マイナス成長で引き上げは困難だと思われる。
 昨年4月以降、日銀は、過去最大の金融緩和(アベノミクス第一の矢)、財政出動(第二の矢)により、株価上昇、国債長期金利の低下(国債値上がり)などの景気浮揚策を行っている。この人為的操作は、いつまでも効果が持続するとも思えない。先だって行われる企業減税に引き続き消費税増税を実行しないと、日本の財政再建への外国人投資家の失望からの日本株売り、株価低下を回避するため、必死の努力をすると思われる。

医療費と消費税

 保険診療は、現在非課税であるが、医薬品、医療材料の仕入れ消費税の還付は無く損税となっている。1989年の消費税3%導入の際には、診療報酬の増額で対処するとの、厚労省の対応があった。しかし、この25年間を振り返ってみると、まったく内容は反故にされていることが分かる。消費税が10%になると、損税も膨大となり、設備投資の多い病院など、経営危機に陥る医療機関の多発が予想される。
 事業者が負担する消費税の種類を以下に述べる。
(1)課税
 「課税」の場合、仕入れ消費税の控除(還付)が行われ、損税の回避ができる。5月27日、自民党の国民歯科問題議員連盟総会で、財務省主計局の藤井審議官が、「仕入れ税控除は、二重課税を避けるための仕組みである」との見解を述べている。
(2)軽減税率
 消費税基本税率が10%とすると、たとえば、診療費については5%と軽減させる。この場合、「課税」と同様、仕入れ消費税の還付が可能である。
(3)不課税
 給与、賞与など、対価を得ない取引には、課税されない。
(4)免税(ゼロ税率)
 あくまでも、「課税」に分類されるが税率ゼロで、仕入れ時消費税の還付が受けられる。輸出業者がこれにあたり、2007年度の消費税還付金は、一位のトヨタ3219億円をはじめ、上位10社の合計は1兆1450億円にのぼる。(湖東京至氏 税理士・元関東学院大学法科大学院教授試算)
(5)非課税
 課税の対象としてなじまないものや、社会的配慮から課税しないもので、現在の保険診療がこれにあたる。医療費支払い時に消費税が発生せず、二重課税とならないため、仕入れ時消費税の還付はなく、損税が発生する。

医療団体はゼロ税率で一致団結を

 消費税は、将来20%まで引き上げられると言われており、10%になる時点で、損税解消の方法を医療界一団となって実現させなければ、日本の医療の将来は暗いものとなろう。
 消費税はその逆累進性ゆえに、社会の格差、不平等の拡大をもたらし、高率の税負担を医療の場に適用することは、憲法25条の定める生存権の侵害となる恐れがある。事実、EU他多くの諸国では、医療に対しての消費税の課税は行われていない。「軽減税率」も、「課税」に変わりなく、税率も恣意的に操作されうるので、避けるべきであろう。
 輸出に力を入れる財界が消費税増税を歓迎するのは、「免税(ゼロ税率)」により、仕入れ時消費税が還付されるからである。現在、様々な消費税対策を主張している各医療団体が「ゼロ税率」を導入できない訳はないと思われる。各医療団体が一致団結することを願う。
 ゼロ税率が実現したとすると、約1兆5000億円の税収減となる。財務省、政府はその対策として、社会保障費の削減、所得申告時に税還付不正予防のためのインボイス(伝票)添付の義務化を含め、事務手続きの煩雑化などの不利益で対応する可能性が高い。可能性の高低はともかく、予想され得るこの不当性に対応する準備を検討しておく必要がある。

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