論壇

新専門医制度は前途多難

富士見市  入交 信廣
新専門医制度の目的
 2002年、医師の広告規制が緩和され、一定の外形基準を満たす団体が認定する専門医が乱立し、権威ある第三者機関の認定の必要性が生じた。そのため、2014年5月、質の高い専門医の養成を目的に、認定、評価までを担う日本専門医機構(「機構」)が設立された。社員には、日本医学会、日本医師会、全国医学部長病院長会議で構成、その後、四病院団体協議会、医療研修推進団体、医学教育振興団体が加わった。
制度の仕組み
 2年間の初期研修終了は必須である。現制度では、その後1年の研修で専門医資格の取得ができる。これまでと違うのは、専門医資格の取得を望む医師は、第1ステップでは、後期研修医(専攻医)として19領域のいずれかの研修を、3年以上受け専門医資格を取得する(例えば、内科専門医)。第2ステップでは、29のサブスペシャリティ領域の研修を3年以上受け、同領域専門医資格を取得する(例えば、循環器内科医)。研修プログラムは、一定の基準を満たした複数の専門研修基幹施設が作成、専攻医は、研修期間中に複数の施設を回ることが定められている。
問題点
.22学会からなる学会認定医機構が1981年に設置され、専門医研修を運用してきた実績がある。このため、第1ステップには、このうち内科、外科など18の基本領域の学会が2014年12月、「機構」の社員として、運用に加わった。
 しかし、もともと、中立的な立場であるべき機構に被評価者としての学会が社員として加わる矛盾が生じている。
.2004年の研修医制度発足時、都市部の基幹病院に若手医師が集中した。また大学病院が、派遣していた指導医を引き上げた。このため、地域医療の中核の空洞化がおこり、また病院間の格差が生じた。日医は、2017年度の新専門医制度開始時に、同様の事態発生の懸念を表明、本年7月、開始が1年延期されることとなった。
 研修医制度では、2004年度の臨床研修希望者に対し募集者数が1.3倍と多かったことが、医師の地域偏在を招いた要因の一つとされている。解決策として、厚労省は、2010年から募集定員の上限設定を導入し、2020年には約1.1倍まで縮小させ医師の偏在を是正する方針である。新専門医制度においても、同様の手法が検討されている。
 しかし、臨床研修制度は医師法で定められた制度であり、国の関与は可能であるが、新専門医制度は、「機構」と各学会がプロフェッショナルオートノミー(専門家による自立性)に基づき運営する制度である。したがって、新専門医制度に対して、この手法の適用は困難と思われる。
.毎年400人ほど誕生している救急科専門医の約半数は、他科での診療経験を積んだ医師である。このようなベテラン医師が若手と同じ研修を強要されれば救急科専門医激減が予想される。
 同様のことが、リハビリテーション科、臨床検査科など、他科から転向する医師が多い科に共通する。また、第2ステップのサブスペシャリティ領域の研修内容の詳細は未だ不明確であるが、ベテラン医師が別分野の専門医資格を複数獲得(ダブルボード)する時にも同様の障害となる。開始時期を定めない平行研修を認め、それぞれの研修期間経過後、専門医受験資格を認めることなどの案がある。
.「総合診療専門医」は今回初めてできる制度である。
 本年6月、「機構」役員の改選が行われた。新理事長となった吉村氏は総合診療専門医を「①僻地や離島で活躍するオールラウンドの医師、②地域に根ざしたいわゆる家庭医、③主に病院総合診療科を担当する医師、を包括するもの」と提唱している。
 以上から、学会が加わった「機構」のガバナンス(意思決定機構)、医療の地域偏在、ダブルボード獲得、総合診療専門医、サブスペシャリティ領域などの問題が未解決である。また、医療の高度化は歓迎すべき事だが、当然起こる医療費上昇の抑制の必要もあり、前途多難を予想させる。

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