論壇

年頭所感

 埼玉県保険医協会理事長 大場敏明
 昨年は日本の貧困率が高いことが社会に広く認識され、「下流老人」「保育園落ちた日本死ね!!」の言葉が象徴するように、国民のくらしが一層困難な状況に向かっていることが可視化された一年でした。英国のEU離脱決定、米国のトランプ候補の勝利に驚いた方も多いと思います。ヒト、モノ、カネが行き交うグローバル経済のいきすぎが、富の集中と貧困層の拡大、社会保障の縮小、低賃金労働の競争をもたらし、あのような結果になったといわれます。世界も日本も社会の連帯が希薄となり「分断」が進んでいる印象を強く持ちますが、若者と高齢者、高所得と低所得、地方と都市、いずれにおいても、公正な社会政策や社会保障を必要としています。
 「格差を是正する方法というのは、どれだけ国の予算を社会保障に当てられるかにあるということは既に明らかになっています」
 これは昨秋に、世界医師会会長のマイケル・マーモット氏が日本の講演会で述べた言葉です。政治の場に理解が拡がるよう医療界の行動が必要であることが痛感されます。
 日本の医療や社会保障にかかる費用はGDP比でみれば、世界的には決して多くありません。世界一の高齢社会を迎えている今こそ、医療や社会保障を充実させる政策づくりこそが望まれています。しかし、安倍政権の優先課題は、カジノやTPP、南スーダンへの自衛隊派遣であって、国民の期待とは大きく乖離しています。
 昨夏の参院選で、改憲を志向する勢力が、憲法改正の国会発議に必要な議席の3分の2を超える議席を確保しました。まもなく総選挙が行われるように取りざたされますが、医療や社会保障政策の選択のみならず、日本の将来を左右する大変重要な進路の選択の機会が訪れる年になりそうです。
 昨年4月の診療報酬改定は、様々な名目により削減された予算が医療本体に振り替えられることはなく、実質的にはマイナス1.43%の改定でした。地域包括ケアシステムの構築に向け、様々な仕掛けが施された改定でしたが、現場の医師・歯科医師にとっては馴染みづらいものが多い状況です。
 国の財政で医療費増加が問題視される一方、患者負担を具体的に増やす法案の検討が進んでいます。また、新専門医制度、「登録医」制度と受診時定額負担、保険医指定前の地方研修義務づけ、など、医療費支出の抑制を旗印に「管理医療」の方針が強く打ち出され、国民皆保険制度の特徴である「フリーアクセス」や、日本の特性である「自由開業医制」を否定する方向での政策が推し進められようとしています。
 世界一の健康を支えている日本の医療費40兆円の半分以上は、建物、薬品、材料などの費用で、人件費は半分以下、最近十年では給与費の上昇も見られていないのが実状です。国民の負担増や、医療界への削減施策ばかり続きますが、実は企業の負担はそれ程増やされていないことが数字でも示されています。応分の負担を課すべきです。
 協会の会員数は昨年3月に4,000人を超えその後も着実に増加しています。昨年の総会では本当に多くの会員から理事会へ激励をいただき、心より感謝申し上げます。協会の40年以上に及ぶ歴史と活動に確信を持ち、全ての会員の皆様と協会活動の発展、医療・社会保障の改善運動に、より一層力を尽くす一年とする所存です。
 皆様方にとって本年が健やかな一年となりますよう祈念いたします。

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