声明・談話

<日経社説に抗議>4月9日社説「規制改革に再点火し危機を克服せよ」に抗議し正確で公平な報道を求めます

2009年4月27日

日本経済新聞社 御中

4月9日社説「規制改革に再点火し危機を克服せよ」に抗議し正確で公平な報道を求めます

埼玉県保険医協会
理事長 青山 邦夫

 私ども埼玉県保険医協会は、埼玉県内の開業医師・歯科医師3,670人が加入する団体です。

 御社は4月9日付けに「規制改革に再点火し危機を克服せよ」と題した社説を掲載しました。1カ月前の3月9日に掲載した 社説「レセプト完全電子化を後退させるな」に対し、当協会をはじめ、各医療関係団体から抗議が相次いで寄せられ、今回の社説でも、レセプトオンライン請求「義務化」が医療のIT化の「画竜点睛」という主張をされています。

 御社はレセプトオンライン請求「義務化」が画竜点睛である理由として、「電子レセプトがあまねく行き渡れば、実際に行われている治療方法の分析がたやすくなり、医療の向上に役立つ」と記しています。現実のレセプトには病名と行われた検査や処置が記載されていますが、その検査結果や処置後の経過などが記載されません。つまり現在のレセプトでは治療方法の分析は出来ず、分析を行うにはカルテレベルの情報が必要です。また、06年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進三カ年計画」では「民間等も含め活用する際、過度に厳重な要件を課して、いたずらに利用を制限することのないよう」と強調しています。事実上、レセプトデータの民間企業への開放という将来の健康情報の産業利用への布石となっています。

 また、「患者や国民の利は大きい」としていますが、レセプトオンライン請求は単なる医療費の請求方法であり、患者や国民に利ではありません。それよりも、データ漏洩や第三者機関での活用が問題です。4月1日の衆院厚労委員会質疑で、「データの送信過程で情報漏洩が発生した場合責任は誰がとるのか」との質問に対し、厚労省の水田保険局長は「どこで起こったかによって決せられる」と答弁しました。また「オンライン請求してほしくないという患者さんがいた場合、どのように請求することになるか」との質問には「請求省令で医療機関と審査支払い機関、保険者を律するもので、患者の意思そのものは反映されない」としています。

 レセプトデータがひとたび漏洩すれば本人はもとより、疾患によっては家族や子孫まで深刻な影響を及ぼしかねません。貴紙の社説と逆に、患者及び国民の著しい不利益をもたらすものになることをあらためて指摘します。患者や国民のどのような情報がどのようにオンラインで取り扱われようとしているのか、報道機関として正確に伝えることが求められます。

 さらには、レセプトオンライン請求という国民に義務を課すことを省令で進めることに官僚の裁量拡大の危険性を孕んでいることに注目すべきです。省令による義務化は一旦撤回し、憲法で定められた唯一の立法機関である国会で議論を尽くすべきです。

 われわれは、患者情報を守る立場から、また、「義務化」によって廃業に追い込まれる保険医を一人も出さないという立場から、御社4月9日の社説「規制改革に再点火し危機を克服せよ」に抗議するとともに、「義務化」が持つ問題点について、正確で公平な報道を心がけていただくよう求めます。

以上


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