声明・談話

領収証の「明細書」発行義務化の撤回を求める要請書

2010年4月23日

関東信越厚生局 指導監査課
課長 加島 秀夫 様

(同内容を民主党県連にも提出)

埼玉県保険医協会
理事長 青山 邦夫
他、会員 1,020人

領収証の「明細書」発行義務化の撤回を求める要請書

 新政権となり初めての診療報酬改定が実施されました。今回の改定に伴い、保険医療機関及び保険医療養担当規則(以下、療養担当規則)も改定され、医療機関における「明細書」発行を義務化としました(医科診療所は7月、歯科は来年4月)。

 しかし、この改定は、健康保険法に違反しており、関係者の十分な再検証が必要です。中医協では「明細書」の発行を義務化にすることまで十分に検討をしていません。

私たちは、患者の知る権利や医療の透明化を否定するものではありませんが、今回の「明細書」発行義務化には、以下の点も検証不足で問題があります。

①重要な個人情報の自己管理を、老若男女全ての患者に負わせること

 「明細書」には、患者プライバシーに関する重要な「個人情報」が含まれ、第三者に読み取られる危険性を持つ。義務化に伴い「個人情報」の管理責任を全ての患者に負わせることになる。

 ②「明細書」の必要性の判断を、老若男女全ての患者に負わせること

患者から「不要の申出」を受けることも想定されているが、「明細書」の必要性を全ての患者に委ねることは、医療現場においては不適切。希望者への対応で十分である。

 ③大多数は「明細書」の内容を理解できえないこと

診療報酬は専門用語の集まりで体系も複雑で判りづらい。個別の点数項目が詳細に記載してあっても、患者が自分の医療内容を理解することは不可能。

④「明細書」の内容は支払時に確定していないこと。請求上のルールが周知されていないこと

 診療報酬は月単位で保険者に請求するもの。診療の都度発行しても、内容は暫定的で正確ではない。レセプトは支払基金において減点審査を受ければ、明細内容は不正確になってしまう。

⑤過剰に詳細な内容は不要であること

 診療所外来で支払う金額の多くは、500円~3000円以内であり、社会通念上、この金額に対する「明細書」としては、現状の領収証で十分。「明細書」には、検査項目や、X線写真の部位、大きさ、造影剤、デジタル化保存の有無まで表示。料理の食材価格をレストランの明細書に求めているのと同義。

⑥医療機関への新たな負担は、医療再生に逆行すること

 患者に「明細書」の説明を求められても、医療機関では矛盾で判りづらい診療報酬を説明しきれない。発行の実務負担増も時間ロスになる。「悪性腫瘍特異物質治療管理料」など患者に明細内容の配慮が必要な場合は医療機関が発行の判断をすることに。患者に不信を持たれる。

⑦法律上、医療機関の役割は医療の提供。医療費の仕組みを説明する義務はないこと

治療方針や治療内容について、説明と納得のうえに治療行為を患者や家族ととも進めることが優先課題である。健康保険法における医療機関の本来の役割は、患者に対する医療提供をすること。患者への医療費の内訳提示やその説明義務は定められていない。

 低医療費政策のもと、ギリギリの体制で患者の治療に集中している医療現場に、診療報酬の説明責任など、新たな負荷増大で医療崩壊を加速させることのないよう、また、医師・歯科医師と患者の信頼関係が損なわれることのないよう以下を強く要望します。

1.領収証の「明細書」発行義務化を撤回すること。

 義務化により患者と医療現場に不要な負担を強いることがないよう、希望者への発行とすること。

以上


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