声明・談話

歯科診療報酬改定に対する談話

 二〇一〇年度歯科診療報酬改定は、二・〇九%とわずかではあるが、一〇年ぶりのプラス改定となり、初・再診料や三〇年間据え置かれていた歯周治療、麻酔、有床義歯などの基礎的点数が一部ではあるが、わずかに引き上げられた。これらは、私たちが日本の歯科医療に甚大な悪影響を及ぼした〇六年度改定以降、改善のためにすすめてきた歯科医療の重要性の啓発運動と保険で良い歯科医療の実現を求めてきた運動の反映である。

 社会保障費二二〇〇億円削減が強行された医科、歯科、調剤を含めた全体の改定率四度連続のマイナス改定から舵が切られたが、長年の低歯科診療報酬による歯科医療費マイナスで歯科医療機関と国民歯科医療を崩壊寸前にまで陥れているにもかかわらず、今回の改定ではその打開は決してできるものではない。

 改定内容でも、初・再診料の引き上げがされたが、そのためにスタディモデルの包括や歯科疾患管理料の評価が引き下げられるなど、根拠のない包括が前回に引き続き強行された。

 歯科訪問診療の評価体系を見直し、訪問先を「在宅等」で統一し、患者一人の場合は歯科訪問診療料1、複数の患者の場合は歯科訪問診療料2を算定、いずれも「二〇分未満」の場合は歯科訪問診療料ではなく、初・再診料の算定に変更された。

 在宅歯科医療の推進を謳いながら、今改定で在宅に対する制限が強化されることになり、改定の主旨と逆行した内容は即刻改善が必要であり、一律の算定要件を歯科の訪問診療にだけ持ち込み、医療行為の評価を時間で縛る悪しき先例を作ることには断固反対する。在宅歯科医療に積極的に対応できるよう往診料の復活など抜本的な見直しを求める。

 歯周治療については、中等度以上の患者が一時的な病状安定後に継続的な治療として行う歯周病安定期治療(SPT)の年数による逓減制が廃止され、大幅に点数が引き上げられたが、軽度で歯周病の管理を希望する患者は対象となっていない。全身疾患と歯周病との関連が取り上げられ、慢性疾患としての歯周病を管理することは医療費総枠、患者の健康にとっても有意義であることから対象を拡大することを求める。

 また、診療報酬の算定要件などを定める通知は依然増加しており、複雑な算定要件や煩雑で不必要なカルテ記載など、現場の実態と乖離した内容は改善されていない。総じて今改定は、マスコミも報じる今日の歯科医療の危機的状況を打開するには程遠いものと指摘せざるを得ない。

 私たちは、歯科医療の崩壊を食い止め、患者・国民が必要とする、他の西側諸国では類を見ない底辺の広い良質な歯科医療を継続して社会保障として供給でき、歯科医療機関の経営が改善できるように歯科診療報酬の大幅な引き上げを厚労省に強く求める。

 あわせて、国民が安心して歯科医療を受診できるよう、患者の窓口負担の大幅な軽減を求める。

2010.3.22
埼玉県保険医協会歯科部会


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