声明・談話

入院患者の他医療機関受診抑制通知の即凍結を要望します

2010年7月29日

厚生労働大臣 長妻 昭 殿
 
埼玉県保険医協会
理事長  青 山 邦 夫
さいたま市浦和区北浦和4-2-2 アンリツビル5F
Tel 048-824-7130  Fax 048-824-7547
 
入院患者の他医療機関受診抑制通知の即凍結を要望します
 
 謹啓 国民医療の確保に対するご尽力に敬意を表します。
当会は、埼玉県内の開業医を中心とする医師と歯科医師約3750人が加入している団体です。
 
 さて、2010年4月実施の診療報酬改定において、課長通知で導入された入院患者の他医療機関への受診制限は、患者、医療機関双方に甚大な実害をもたらします。

複数の病気を持つ患者がそれぞれの専門的な診療科がない医療機関に入院した場合、継続的な医療管理ができなくなるとともに、治療に必要な薬が中断されます。一方で、他医療機関に受診することができ、必要な薬が投与された場合でも、入院医療機関には受診日の入院基本料を減額するというペナルティがあるため、頻回に受診が必要となるようであれば受診回数を減らす可能性を考慮、あるいは、専門的な診療科のある病院へ転院、転院先がなければ退院を余儀なくされます。
 
 当会は、厚労省が複数の疾患を持つ患者は総合病院、または必要な診療科がすべて揃っている病院に入院すべきであるという考えのもと、現場の実態を検証せずに通知を改定したことに誤りがあると考えます。また、患者に必要な医療は、医師の責任において他の医療機関と適切な連携のもと、診療を行った医療機関ごとに保険診療を行えるようにすべきです。そして、入院患者が専門的な治療を受けるために他医療機関に受診した場合、入院基本料を減額するというペナルティを取りやめるべきです。
 
 課長通知に従えば、入院医療機関は、患者を入院させるに当たり、罹患している疾患すべての治療に対応できるかどうかを確認し、対応出来ないのであれば、総合病院等に紹介せざるを得なくなります。つまり、患者に大きな影響を与え、総合病院のさらなる疲弊を招き、地域医療を担う中小病院や有床診の存続を困難なものとします。
 
 佐藤敏信前医療課長らは、4月以降7月までの3ヶ月間で、通知の改正1回、事務連絡による訂正2回、疑義解釈で運用を4回提示しました。さらに、6月29日の政府答弁で、新たな解釈を示しましたが、問題解決には至っていません。患者への受診制限は改善されず、現場に混乱、怒り、行政不信を増大させているだけです。

このように、医療現場を無視した通知を乱発した前医療課長は、厚労省本来の役割である国民医療を守るのではなく、医療崩壊をさらに加速させた点においても責任は重大です。ところが、7月末の人事異動で、前医療課長は環境省総合環境政策局環境保健部長に昇進、栄転となりました。今回の件のみならず、民間では考えられない評価、ばかげた人事を行う官僚の論理、官僚制度そのものが、国民感覚と大きく外れているものであると言え、人事担当者の責任も問われます。
 
 つきましては、当会で行った入院患者の他医療機関受診についての緊急実態調査の調査結果をお送りさせていただきます。ぜひご高覧いただき、直ちに下記を実施してくださいますようお願い申し上げます。
 
 
1.医療再生に逆行する「入院患者の他医療機関受診の通知」を即凍結すること
 
以上

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