論壇
まともな交渉に成り得ないTPP(環太平洋経済連携協定)
戸田市 福田 純
(1)情報操作されるTPP聖域なき関税撤廃協定
二〇一〇年十一月、横浜で開催されたAPECで管首相(当時)が突然“平成の開国”と称し、あらゆる関税を撤廃した「TPPなる貿易協定参加」へと口火を切った。これを機に財界とマスメディアはこぞって確たる論拠も無く推進論を展開している。しかしながら、TPPにはそこかしこに怪しさ、危なさが感じられる。TPPに関してマスメディアは情報の隠蔽・矮小化に加えて虚偽・偏向報道を恣意的に行なっているため、成熟した世論が醸成されない。日本政府やマスメディアは国民に正しく必要な情報を与えるべきである。
(2)他国の民主主義を壊すISD条項(エゴ丸出しの米国手法)
国際条約は国力や外交力の差により、締結国間に不平等条項が織り込まれるのが常である。とりわけTPPにはI S D(Investor-StateDispute 投資家対国家間の紛争)条項が内包され、圧倒的に事が米国に有利に運ぶよう仕組まれている。これに関しては読者が各自インターネットなどで検索し、どんな条項かを確認していただきたい。その他、後戻り不可の「ラチェット条項」や不利益を予測しただけで訴訟が可能な「非違反申し立て」という難癖項目に至っては常識ある日本人には到底、理解しがたい。そして締結された国際条約は「全ての国内法の上位に位置する(民主国家を脅かす)」から厄介である。
(3)TPP交渉以前に“エシュロン”あり:米国との情報戦に勝ち目がない日本
幕末以降、日本は米国との情報戦に勝ったためしがない。太平洋戦争開戦も「真珠湾攻撃は奇襲に非ず」が今や史上の事実である。さらに現代において、アメリカ国防総省の諜報機関が管理運営する“エシュロン”という通信傍受システムがある。世界中のあらゆる電子媒体(携帯電話、インターネットはもとよりファックス等)の通信傍受が可能である。加えて、特定の語彙、例えば「爆弾」、「テロ」等や特定された人物の声紋にも即座に反応する。既に日本の各国大使館や国会議員間の通信傍受も行われており、日本のTPP交渉内容はとっくに米国には筒抜けである。外交交渉は国家間の高度な駆け引きが常であるが、手の内を完全に読まれている相手に日本はポーカーゲームを強いられている。
(4)米国バッシングの風が吹くと現れる北朝鮮の影
今年三月、北朝鮮が人工衛星(大陸間弾道弾=ミサイル)発射の通知後メディアから一斉にTPPの記事が消えた。紙面や報道時間に限りがあるとは言え、TPPで米国に吹きかけた逆風から目を逸らすには有効である。一九九八年、沖縄問題で米国バッシングが起きた時、一発のテポドン発射でこの機運が霧散した。先日、米韓FTA締結直前にも北朝鮮の軍事行使があり、韓国は不平等条約を締結する羽目に陥った。日本は韓国の轍を踏んではならない。
(5)新自由主義者には判らないPricelessの価値
人口のたった一%の富裕層が政治と経済を牛耳る米国主導の世界戦略で世界中がぎくしゃくしている。先日、ブータン国王夫妻が来日した折、改めて日本人は気付かされたのではなかったのか?「GNP(国民総生産)よりGNH(国民総幸福量)を目指そう!」と。互いを労わる美しい心を礎にした皆保険制度は世界に誇れる日本の宝である。(金に目が眩んだ)新自由主義者によって壊される美風。TPP参加により貴重な日本の宝が失われそうである。新自由主義者に操られた財界の面々には判らないだろう。日本の美風はプライスレスである事を。そして、一度失われた日本の宝は二度と戻る事がない。