論壇
2012年衆院選 民意と自民党圧勝の背景をさぐる
戸田市 福田 純
二〇〇九年の衆院選で民主党は三〇八議席を獲得し大勝。歴史的な政権交代をはたした。
その選挙内容は小選挙区制の得票率四七・四%に対し、議席獲得率は七三・七%におよび、対する自民党は一一九議席(得票率三八・七%に対し議席獲得率は二一・三%)であった。そして、その三年後において、逆に自民党が二九四議席(得票率四三%に対し、議席獲得率七九%)を得たのに対し、民主党は五七議席(得票率二二・八%を得たにも拘らず議席獲得率は九%)に留まった。この様に小選挙区制では民意に反映されない多くの「死に票」が生まれることから、一票の格差問題以上に小選挙区制は代議員制民主政治の在り方に疑問が投げかけられている。民意の反映を念頭に置きながら、今回の自民党圧勝の要因をさぐってみた。
①民主党への逆風
民主党の政党運営失敗と野田グループの有権者への裏切り政策に他ならない。
サッカーの試合で例えると、鳩山政権はゲームメークに不慣れなプレーヤーが連携不足からオウンゴールで失点していた。ところが、菅や野田のマニフェスト違反政権は、本来味方であるはずのプレーヤーが自陣のゴールに蹴り込むといったサポーター(有権者)への裏切り行為があり、国民からブーイングされた結果である。
②戦後最低の投票率
二〇〇九年の政権交代で原動力になった多くの浮動票投票者(支持政党なし)たちの前回の選挙で民主党に投票したという自責の念と政治不信とにより投票する気力を奪った結果であろう。「投票したい候補者」や政党がないといった有権者が少なからずいたことは否めない。
脱(反)原発と考えている人達の二八%が自民党に投票している(十二月の読売新聞世論調査による)。
③多党乱立
小選挙区制では票が分散し、得票数以上の大差となる小選挙区制の弊害が大きい。かつて中選挙区制で上州戦争と呼ばれた群馬県第三区で、福田・中曽根・小渕の歴代首相経験者がそろって当選していたが、現在の小選挙区制ではあり得ない現象である。
④急な解散宣言
野田首相のチキンハートにより解散が早まり急きょ総選挙となり、準備不足の民主党議員が大勢いた。また中小政党では政策論争をすり合わせ、共闘する準備期間が足りなかった。
⑤各政党間の政策
急な解散宣言は、各政党間の政策の重複にも大きく影響した。景気回復や東北復興支援は各党の共通課題であり、主な争点は消費税増税、原発の処遇、TPP参加表明、外交・防衛問題を含む憲法改正であった。
かくして各党が入り乱れ、論争は重複したため票は分散。危うい論点を含有している「日本維新の会」の躍進は報道機会が多く、TV受けしたため“支持政党なし”の票が流れたのであろう。小沢グループを内包した「日本未来の党」は小沢氏への検察による(不当な)国策捜査の影響を引きずりダーティー・イメージを払拭できずに結果、伸び悩んだ。
さて、自民大勝を受け安倍政権発足後、選挙公約にある最優先課題の景気対策に着手し、結果、円安方向、株価一万円台と回復基調に見える。しかし一ドル九〇円をにらむ円安に、既にガソリン価格は上昇し、景気回復より先に物価が上昇。庶民にとって負の要素が見え始めている。
さらに金融緩和に消極的であった日銀に対し、物価上昇率二%を掲げ、次期日銀総裁の人事にも圧力をかける背景には、二〇一四年四月から予定される消費税八%への付帯事項(今年の秋までの景気回復)があるためで、安倍政権にとって消費税のアップが絶対条件であり、今はこれにまい進している。ちなみに財務省の評価基準のトップは増税を実現した人、二番目に天下りの利権を確保した人とされている。
今衆院選で自公合わせて三二五議席を獲得し、衆議院再可決が可能な三分の二を超えている。例え今夏の参院選で負け、ねじれ現象が起きても採択可能な数は確保している。しかしながら、審議のスピード化を目指すため、参院選までは順法速度での安全運転を決め込み、それ以降は憲法改正、TPP参加表明や原発稼働推進に動きだす可能性があり目を離せない。国民の一人として、対米従属内閣の行く手を注視する必要がある。
その選挙内容は小選挙区制の得票率四七・四%に対し、議席獲得率は七三・七%におよび、対する自民党は一一九議席(得票率三八・七%に対し議席獲得率は二一・三%)であった。そして、その三年後において、逆に自民党が二九四議席(得票率四三%に対し、議席獲得率七九%)を得たのに対し、民主党は五七議席(得票率二二・八%を得たにも拘らず議席獲得率は九%)に留まった。この様に小選挙区制では民意に反映されない多くの「死に票」が生まれることから、一票の格差問題以上に小選挙区制は代議員制民主政治の在り方に疑問が投げかけられている。民意の反映を念頭に置きながら、今回の自民党圧勝の要因をさぐってみた。
①民主党への逆風
民主党の政党運営失敗と野田グループの有権者への裏切り政策に他ならない。
サッカーの試合で例えると、鳩山政権はゲームメークに不慣れなプレーヤーが連携不足からオウンゴールで失点していた。ところが、菅や野田のマニフェスト違反政権は、本来味方であるはずのプレーヤーが自陣のゴールに蹴り込むといったサポーター(有権者)への裏切り行為があり、国民からブーイングされた結果である。
②戦後最低の投票率
二〇〇九年の政権交代で原動力になった多くの浮動票投票者(支持政党なし)たちの前回の選挙で民主党に投票したという自責の念と政治不信とにより投票する気力を奪った結果であろう。「投票したい候補者」や政党がないといった有権者が少なからずいたことは否めない。
脱(反)原発と考えている人達の二八%が自民党に投票している(十二月の読売新聞世論調査による)。
③多党乱立
小選挙区制では票が分散し、得票数以上の大差となる小選挙区制の弊害が大きい。かつて中選挙区制で上州戦争と呼ばれた群馬県第三区で、福田・中曽根・小渕の歴代首相経験者がそろって当選していたが、現在の小選挙区制ではあり得ない現象である。
④急な解散宣言
野田首相のチキンハートにより解散が早まり急きょ総選挙となり、準備不足の民主党議員が大勢いた。また中小政党では政策論争をすり合わせ、共闘する準備期間が足りなかった。
⑤各政党間の政策
急な解散宣言は、各政党間の政策の重複にも大きく影響した。景気回復や東北復興支援は各党の共通課題であり、主な争点は消費税増税、原発の処遇、TPP参加表明、外交・防衛問題を含む憲法改正であった。
かくして各党が入り乱れ、論争は重複したため票は分散。危うい論点を含有している「日本維新の会」の躍進は報道機会が多く、TV受けしたため“支持政党なし”の票が流れたのであろう。小沢グループを内包した「日本未来の党」は小沢氏への検察による(不当な)国策捜査の影響を引きずりダーティー・イメージを払拭できずに結果、伸び悩んだ。
さて、自民大勝を受け安倍政権発足後、選挙公約にある最優先課題の景気対策に着手し、結果、円安方向、株価一万円台と回復基調に見える。しかし一ドル九〇円をにらむ円安に、既にガソリン価格は上昇し、景気回復より先に物価が上昇。庶民にとって負の要素が見え始めている。
さらに金融緩和に消極的であった日銀に対し、物価上昇率二%を掲げ、次期日銀総裁の人事にも圧力をかける背景には、二〇一四年四月から予定される消費税八%への付帯事項(今年の秋までの景気回復)があるためで、安倍政権にとって消費税のアップが絶対条件であり、今はこれにまい進している。ちなみに財務省の評価基準のトップは増税を実現した人、二番目に天下りの利権を確保した人とされている。
今衆院選で自公合わせて三二五議席を獲得し、衆議院再可決が可能な三分の二を超えている。例え今夏の参院選で負け、ねじれ現象が起きても採択可能な数は確保している。しかしながら、審議のスピード化を目指すため、参院選までは順法速度での安全運転を決め込み、それ以降は憲法改正、TPP参加表明や原発稼働推進に動きだす可能性があり目を離せない。国民の一人として、対米従属内閣の行く手を注視する必要がある。