論壇

皆保険制度存亡の危機

協会活動の果たす役割大きい

ふじみ野市 山田 洋孝
 一九七二年に発足した埼玉県保険医協会は、本年六月の時点で会員数は医科歯科合わせて遂に三九〇〇人を超える大所帯に発展した。
 県内の開業医に対する組織率は実に医科四三%、歯科五四%に達する。
 保険診療を機軸とし、「開業保険医の経営と権利を守り、国民医療を守り発展させる」保険医協会の活動に斯くも多く諸先生方の御賛同が得られたことは感謝の念に堪えない。
 さて、五〇〇号を迎えた先月号の協会機関紙に、機関紙部部長が寄せた記念談話をお読みになられたであろうか。
 日本の社会保障制度は、今、大きな転換期を迎えようとしている。中でも健康保険制度が形骸化する懸念は大きく、国民皆保険制度は存亡の危機に瀕しているといっても過言ではない。健康保険証一枚で国民誰もが安心で安全な医療を受けられるという事実が長寿日本を支えてきたことに異論を挟む人は少ないであろう。
 身近で当たり前のように甘受されているこの制度だが、一九六一年に始まった国民健康保険事業以前、日本に公的な国民医療保障制度はなかった。現在、全国保険医新聞紙上で連載されている「いしゃ先生」をお読みになられているであろうか?そこには、皆保険導入以前の日本の農村医療の姿が描かれている。
 病気になっても医者に掛かることなど考えられない世界。現在の日本の視点からすればそれは不幸そのものであり、絶望であり、恐怖でさえある。
 我々日本人が過去に追いやった筈のこの不幸な時代が、その姿を変えて再び台頭しようとしている。TPP交渉に見え隠れする民間による医療保険保障制度の台頭はその一例であろう。保険制度の根幹を揺るがしかねない危機が手を伸ばせば触れるぐらいの近い将来に潜んでいる。
 戦後の混乱期の中、国民の健康を願い設立された国民皆保険制度。縁遠かった医療が身近なものとなり、大きく発展を遂げてきたわが国の医療制度。戦後復興と併せて、日本の医療は保険制度と共に進歩の道程を歩んできたといっても過言ではなかろう。
 我々、保険医にとって、そして患者とその家族にとって、この、かけがえのない日本の国民皆保険制度を次の世代に引き継がなければならない。
 一九七二年の発足以来積み重ねてきた、健康保険制度を守り、育てる協会の活動がさらに重要性を増してくる困難な時代を迎えた。
 協会活動は審査・指導対策部、税務経営対策部、保険医年金など各種共済制度を扱う共済部、各種研究会等を扱う研究部、歯科部、新聞発行を行う機関紙部等など、様々な部を始めとした協会会員の有志で構成された多くの部署から成り立っている。
 日本の社会保障制度が大きく変わろうとしているこの時代だからこそ、協会活動を更に充実させなければならない。その為に、もっともっと多くの会員諸氏に活動に参加していただきたい。
 国民皆保険制度の形骸化と謂う、この難局を乗り切るため、会員諸氏にご理解とご尽力を切に願う次第である。

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