論壇

ヒヤリ・ハットに始まる医療事故防止と集団的自衛権行使

戸田市  福田 純
 日本は第二次大戦後、まがりなりとも一度も戦争をしないで来た。これもひとえに平和憲法九条(第一項戦争の放棄と第二項の戦力の不保持と交戦権の否認)のおかげと考えられている。ところが安倍政権は、国民の代表が論議する国会ではない閣議決定という、民主主義を無視した禁じ手を用い、憲法九条を蔑ろにするという奇策を用いた。その理由は、米国の国益に沿った方向に国を導く、つまり集団的自衛権を行使させるという日本の交戦権を獲得させ、米国の片棒を担がせるためである。
 何故、安倍首相はこれ程まで米国に媚びるのか? 以後は私の推論である。祖父、岸信介元総理の影響が色濃いと思われる。東大卒で優秀であった祖父と常々比較され、劣等感を抱きつつ「いつか祖父(の業績)を追い抜いてやる」と考え、現職を遂行している。さらに、東条内閣の閣僚でA級戦犯となり死刑をかろうじて免れ、後に総理大臣にまで上り詰めた背景にアメリカとの密約がなかったか?「日本をアメリカの国益に沿う方向に導け!」との密命。これに違わなければ、「岸自身の命だけでなく子々孫々に及ぶ安倍家の命運も…」と言ったことがあったとすれば、どうであろう。
 かつて日本でも、アメリカ合衆国のことを〝美国〟と言っていた時期があった。安倍首相の言う「美しい国:日本を取り戻す」とした彼流の解釈は「美国=アメリカ」へ「日本を取り戻す=売り渡す」と解釈すれば、彼の過去から現在、それと、今後の彼の行動規範が読めてくる。TPP交渉も含め、日本の国益を最優先に考えるのではなく、アメリカへの隷属を目指した国家戦略が見て取れる。
 さらに安倍首相は「積極的平和主義」を掲げ、今年四月、武器禁輸三原則を防衛装備移転三原則に代え、六月にはフランスで開催された国際武器見本市(ユーロサトリ)に参加し、日本の防衛装備を世界にアピールした。精力的に歴代首相外遊国数第一位となる外遊を行い、各国首脳に集団的自衛権への理解を説きつつ、積極的に原発や武器のセールスを繰り広げている。
 しかしながら、国民の大半は彼が推し進める〝秘密保護法〟や〝集団的自衛権行使の容認〟に反対である。「戦争ができる国」に日本を積極的に変え急いでいるように見えるから、である。憲法九条がノーベル平和賞を逃したのは、彼が推し進める日本の政権運営が世界的には危険な〝極右政権〟と見られたためかもしれない。
 さて、日常的に医療行為を人が行う医療環境の中で、細心の注意を払っていても、医療事故はある確率で起きてしまう。ハインリッヒの法則やバードの法則によれば、軽微な事故でも一定の確率で重大事故が発生する。そこで医療現場では軽微と思われるヒヤリ・ハットの事例が起きた時に、これらをうやむやにせず有害事例として報告させることにした。その結果、重大な医療事故は大幅に減った(感がある)。
 かつて、静脈ラインに経口注入液を誤投与し、患者を死に至らしめた事例が散見された。これらから得た教訓は、経口液が静脈ラインに物理的に入り得ることが問題視され、互いの注入口の形状を変え、直接経口液が注入できないようにした結果、かような誤投与事例はなくなった。
 先の集団的自衛権行使の容認は、まさに医療事故が起きないようしてきた教訓の真逆をたどっている。医療行為は人間が行うことである。対する集団的自衛権行使も人間が行うものである。二重三重にも間違いがあってはならない。共に人の命が掛かっている。幾重にも間違いが起こらないようにしておく機構が肝腎である。
 かような点からも平和憲法:九条を蔑ろにしてはならない。

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