論壇

今回の診療報酬改定を読み解く
実質1.43%以上のマイナスである

上尾市  小橋 一成
 2016年度の診療報酬改定の改定率は本体でプラス0.49%であるが、薬価、材料価格はマイナス1.33%で、総額(ネット)マイナス0.84%と決定された。
 しかし、内容を精査してみると、前回導入された「外枠」という概念が再び導入された。この「外枠」はマイナス0.4%と概算されているため、運用方法によっては、さらに増えて実質マイナス1.43%以上となる。これでは、医療機関の経営はますます困難となる。

真実を語らない底無し沼のマイナス改定

 今回の特徴は、前回に引き続き「外枠」という改定率分割の手法が取られたことである。前回の改定では後発医薬品の価格設定の見直し、うがい薬の単独使用の禁止、などであった。今回は、前回にに加えて、新規収載された後発品の価格引下げ、経腸栄養製品に関する入院時食事療養等の適正化、湿布薬の枚数制限、費用対効果の低下した歯科材料の適正化などが列挙されている。これらは、いわゆる総額(ネット)に含まれない改定率である。
 これは、事実上の保険外しであり、実際患者にとっては自己負担が増えることになる。
 財務省は、そもそも、本年度の社会保障関係費を1700億円減額すると決め、そのうち、医療費で1500億円減額することにより捻出すると決めた。奇しくも真の改定率がマイナス1.43%(財務省試算マイナス1473億円)になったのは、偶然の一致であろうか?
 また、本体・薬価・材料全体で診療報酬となるため、薬価引下げ分を診療報酬本体に戻すというのは筋であるが、それも簡単に見送られた。
 財務省が2016年度の財政建議で、早々と薬価マイナス部分は診療報酬本体の財源としないとされ、事実、財務省の意見通りにされてしまった。本体に返さないということが固定化される方向にある。それでも財源が足らず、高額療養費の払い戻し基準の引き上げを決めた。
 要するに、患者の自己負担分の割増である。これは医療財源を確保するためである。なりふり構わない医療費の抑制に走っている。

消費税の影響について

 2014年度の改定では、消費税5%から8%に増税することにあわせ、補填分が上乗せされた。当時の中医協の議論で、消費税増税分の補填先として、基本診療料を中心に対応すると決められた。具体的には初・再診料、入院基本料、訪問診療料などであった。
 昨年12月2日の中医協で「医療機関における消費税負担に関する分科会」は、消費税8%への引上げに伴う補填状況の把握結果として、医療機関によってばらつきがあるものの、補填されていると報告した。しかし、中医協委員からは、消費税分の補填を診療報酬で対応する事の難しさも指摘されている。
 事実、消費税が5%となった時、検査の単価が一時的に引き上げられた。しかし、診療報酬改定の度に下げられ、中には無くなったものもある。

来年4月の消費税10%引き上げに対する考え方

 消費税に関して、厚労省は「医療にかかる消費税のあり方」として検討している。
 医療機関にとって、消費税の診療報酬内での対応は、補填されている事実が把握しにくく、結果的に非常に不明朗である。事実、医療機関ごとに痛税感は違う。
 診療報酬は非課税であり、消費税を患者から取ることはできない。一方で、医療機関が購入するすべてのものに消費税がかかる。よって、まずは消費税の増税に反対である。私は消費税ゼロ税率が本来の姿だと思っている。

おわりに

 今回の診療報酬改定を読み解くうちに、あることに気がついた。この中身を懇切丁寧に説明しようという意思が、国からまったく感じられないということである。さいたま市で開かれた公聴会も、パブリックコメントの募集も通り一遍でしかなく、単なる通過儀礼になっている。これでいいのであろうか?
 今、声を上げなければ、後は、疲弊した医療機関と国民・患者が残るだけである。

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