論壇
将来に希望が持てる在宅医療の構築を
川越市 柴野 雅宏
今回の診療報酬改定において、在宅医療は再び大幅な改悪が行われた。それは「同一建物居住者」に加えて、在宅時医学総合管理料(以下「在医総管」)等に「単一建物診療患者」の考え方と、患者の状態による区分けが導入されたことである。
前回、施設入所の患者を中心に、同一建物に居住しているという理由で、大幅な改悪が行われた。しかし、例えば、グループホームに入所中の複数の患者を一回は個別に訪問すれば、その時は、在宅患者訪問診療料(以下「訪問診療料」)の同一建物居住者以外の833点が算定でき、一回でもこの833点を算定していれば、強化型の在宅療養支援診療所の場合、在医総管は5300点、それに訪問診療料の、833点(一人のみ訪問)と103点(複数訪問)を加えて、6236点となっていた。
ところが、今回の改定でグループホームは施設入居者に区分され、在医総管ではなく、施設入居時等医学総合管理料(以下「施設総管」)の対象となった。さらに、患者の状態による区分けも導入された。
これにより、1ユニット9人のグループホームで、難病でもなく、在宅酸素療法や留置カテーテルなどを使用していない安定した認知症患者に前月同様月2回訪問する場合、施設総管1800点と、訪問診療料833点(1人のみ訪問)、203点(複数訪問)で合計2836点となり、3400点の大減算である。
そのため、グループホーム等の入所者で3月末まで在医総管を算定していた患者は、来年3月末まで引き続き在医総管が算定できるという経過措置が設けられている。
それ以外にも問題がある。第1に院内処方の場合、処方せん未交付加算の300点を算定するが、処方内容によっては簡単に赤字になり得る。地域包括診療料の算定で、院内処方を推奨していることと明らかに矛盾している。
第2に訪問診療料の同一建物居住者の点数を算定する患者に様式14(記述は簡略化)を作り、さらに、施設総管の算定要件で、グループホームの1ユニットごとの人数を摘要欄に記載しなくてはならない(経過措置で在医総管を算定する患者も対象)など、事務手続きが増大した。
第3にいろいろな形態の施設が増え、それぞれの施設に合わせた算定が必要で、患者が複数の施設を利用した時など、一つ一つ算定方法を考えなくてはならない。
第4に点数算定の不合理性。誰も納得のいかない物事にお金を払いたくはない。同じ訪問回数、治療内容、投薬にもかかわらず、月によって自己負担金が2倍になったり2分の1になったりする事についてどうやって患者や家族の納得を得ろと言うのか。
ご存知の通り医療というのは医師と患者の信頼関係が不可欠である。説明のしようがない自己負担金の変化により、医療そのものが成り立たなくなる可能性がでてくる。さらに言えば、グループホーム等施設入居者における医療も単一の家庭での医療もそれに要する労力に変わりはない。むしろ特に夜間は施設からの連絡の方が多い程である。単に居住の仕方の問題だけで、施設入居者や同一建物入居者に対する点数が大幅に引き下げられたことについては納得がいかない先生方も多いと思う。
しかし、何より最大の問題はこの様な仕打ちにあっても、患者がいる限り在宅医療はやめるわけにいかないと言うことである。小生は、いくつかの施設を長年受け持っていて、例え赤字だとしても訪問診療を今すぐやめるわけにはいかない。
現在の、特に施設における訪問診療は、それぞれの先生の使命感によって支えられている面が大きいと思われる。しかし、2人より3人訪問した方が点数が低くなるなど、およそ通常の常識では考えられないような点数設定を続ければ、限界はやがて来るはずだ。超高齢社会に向けて、将来に希望の持てる在宅医療の構築を求めていきたい。
前回、施設入所の患者を中心に、同一建物に居住しているという理由で、大幅な改悪が行われた。しかし、例えば、グループホームに入所中の複数の患者を一回は個別に訪問すれば、その時は、在宅患者訪問診療料(以下「訪問診療料」)の同一建物居住者以外の833点が算定でき、一回でもこの833点を算定していれば、強化型の在宅療養支援診療所の場合、在医総管は5300点、それに訪問診療料の、833点(一人のみ訪問)と103点(複数訪問)を加えて、6236点となっていた。
ところが、今回の改定でグループホームは施設入居者に区分され、在医総管ではなく、施設入居時等医学総合管理料(以下「施設総管」)の対象となった。さらに、患者の状態による区分けも導入された。
これにより、1ユニット9人のグループホームで、難病でもなく、在宅酸素療法や留置カテーテルなどを使用していない安定した認知症患者に前月同様月2回訪問する場合、施設総管1800点と、訪問診療料833点(1人のみ訪問)、203点(複数訪問)で合計2836点となり、3400点の大減算である。
そのため、グループホーム等の入所者で3月末まで在医総管を算定していた患者は、来年3月末まで引き続き在医総管が算定できるという経過措置が設けられている。
それ以外にも問題がある。第1に院内処方の場合、処方せん未交付加算の300点を算定するが、処方内容によっては簡単に赤字になり得る。地域包括診療料の算定で、院内処方を推奨していることと明らかに矛盾している。
第2に訪問診療料の同一建物居住者の点数を算定する患者に様式14(記述は簡略化)を作り、さらに、施設総管の算定要件で、グループホームの1ユニットごとの人数を摘要欄に記載しなくてはならない(経過措置で在医総管を算定する患者も対象)など、事務手続きが増大した。
第3にいろいろな形態の施設が増え、それぞれの施設に合わせた算定が必要で、患者が複数の施設を利用した時など、一つ一つ算定方法を考えなくてはならない。
第4に点数算定の不合理性。誰も納得のいかない物事にお金を払いたくはない。同じ訪問回数、治療内容、投薬にもかかわらず、月によって自己負担金が2倍になったり2分の1になったりする事についてどうやって患者や家族の納得を得ろと言うのか。
ご存知の通り医療というのは医師と患者の信頼関係が不可欠である。説明のしようがない自己負担金の変化により、医療そのものが成り立たなくなる可能性がでてくる。さらに言えば、グループホーム等施設入居者における医療も単一の家庭での医療もそれに要する労力に変わりはない。むしろ特に夜間は施設からの連絡の方が多い程である。単に居住の仕方の問題だけで、施設入居者や同一建物入居者に対する点数が大幅に引き下げられたことについては納得がいかない先生方も多いと思う。
しかし、何より最大の問題はこの様な仕打ちにあっても、患者がいる限り在宅医療はやめるわけにいかないと言うことである。小生は、いくつかの施設を長年受け持っていて、例え赤字だとしても訪問診療を今すぐやめるわけにはいかない。
現在の、特に施設における訪問診療は、それぞれの先生の使命感によって支えられている面が大きいと思われる。しかし、2人より3人訪問した方が点数が低くなるなど、およそ通常の常識では考えられないような点数設定を続ければ、限界はやがて来るはずだ。超高齢社会に向けて、将来に希望の持てる在宅医療の構築を求めていきたい。