論壇
薬剤耐性菌対策 日常診療で出来ること
久喜市 青木 博美
拡がっていく薬剤耐性菌への危機感
臨床の場面では、薬剤耐性菌に対する危機感が広がっている。特に感じるのは入院患者の治療場面においてである。MRSA、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)多剤耐性の緑膿菌、ESBL等々が日常的になっている。 カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)は高毒性のものは、日本では広がっていないが他国では広がっているという。
自分でも入院患者の治療に当たっては、耐性菌を想定して治療を開始し、細菌検査の結果をみて耐性菌でなければ薬剤を変更するという手順を踏むことも多くなってきている。腎盂腎炎で入院の患者では、大腸菌が起炎菌の場合、ニューキノロン系耐性菌、ESBLが増加してきており、カルバペネム系薬剤の使用が増えている。
外来の場面でも実は広がっている
マクロライド耐性マイコプラズマによるマイコプラズマ肺炎、ニューキノロン耐性大腸菌による膀胱炎、腎盂腎炎等が広がっている。肺炎球菌ではマクロライドは使えなくなっているし(耐性菌8割以上)、小児のマイコプラズマ肺炎ではマクロライド耐性が8割を超えているという。
外来診療ではなぜ入院診療程には危機感がないのだろうか。外来診療の方が、軽症、自然経過での治癒もあり治ってしまうこともあるだろうし、重症化の危険があれば入院へ移行させてしまうということなどがあるだろう。
耐性菌が増える一方で、有効な抗菌薬が限られて来れば、今後の感染症治療は難しいものになっていく。
やれば出来そう薬剤耐性アクションプラン(2016-2020)が示す目標
①普及啓発、教育 ②動向調査、監視 ③感染予防、管理 ④抗菌薬の適正使用 ⑤創薬促進 ⑥国際協力があげられ、目標が設定されている。
直接的に日常診療に関連するものとして以下の成果目標があげられている。
①肺炎球菌のペニシリン耐性率を15%以下に低下
②黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率(MRSA)を20%以下に低下
③大腸菌のキノロン耐性率を25%以下に低下
④緑膿菌のカルバペネム耐性率を10%以下に低下
⑤大腸菌のカルバペネム耐性率を10%以下に維持
⑥抗菌薬の使用量を3分の2に減少(2013年比)
⑦経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の使用量を50%削減(2013年比)
⑧静注抗菌薬使用量を20%削減(2013年比)
これらは実現可能なのか。既に院内感染対策委員会設置の義務化と感染対策実施、2012年度の感染防止委対策地域連携加算などが行われている。実際、やってみると思った以上に効果があるように感じる。現在は入院患者が対象となっているが、これが、診療所、クリニック、高齢者施設などへも拡がっていけばいいと思う。
正しい知識を患者も、医療者も
耐性菌が注目されると、「良くわからないが怖い菌だ、耐性菌が検出された患者さんはお断りといった対応もあり、良くないと思っている。「MRSAが検出されたので、うちの施設へは入所できません」等、断ることが対策ではないということを理解しなければならない。正しい知識の普及が必要とされている。
まず必要なのは薬剤の適正使用
経口抗菌薬の使用量を50%減少、注射薬を20%減少させるという目標が提示されている。数値目標達成できるかということに目が行きがちだが、適正使用をするということであると思う。経口抗菌薬は外来での使用が九割くらいと言われているが、いわゆるかぜ症候群に対しての使用が相当あると思われる。本来は必要がないが、念のためとか患者希望があるのでなどで処方していることもある。
自分でも意識して患者さんが要求しても、「これは抗菌薬が必要な状況ではありません。余計な薬は服まない方がいいです」と多少は時間が余計にかかるが説明すると了解していただけることが多い。
社会的にも抗菌薬の正しい服用知識の啓蒙、医療者に対しても、化学療法学会が行っているような抗菌薬適正使用生涯教育セミナーのようなものを各地域で受けることが出来るようになると良い。
臨床の場面では、薬剤耐性菌に対する危機感が広がっている。特に感じるのは入院患者の治療場面においてである。MRSA、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)多剤耐性の緑膿菌、ESBL等々が日常的になっている。 カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)は高毒性のものは、日本では広がっていないが他国では広がっているという。
自分でも入院患者の治療に当たっては、耐性菌を想定して治療を開始し、細菌検査の結果をみて耐性菌でなければ薬剤を変更するという手順を踏むことも多くなってきている。腎盂腎炎で入院の患者では、大腸菌が起炎菌の場合、ニューキノロン系耐性菌、ESBLが増加してきており、カルバペネム系薬剤の使用が増えている。
外来の場面でも実は広がっている
マクロライド耐性マイコプラズマによるマイコプラズマ肺炎、ニューキノロン耐性大腸菌による膀胱炎、腎盂腎炎等が広がっている。肺炎球菌ではマクロライドは使えなくなっているし(耐性菌8割以上)、小児のマイコプラズマ肺炎ではマクロライド耐性が8割を超えているという。
外来診療ではなぜ入院診療程には危機感がないのだろうか。外来診療の方が、軽症、自然経過での治癒もあり治ってしまうこともあるだろうし、重症化の危険があれば入院へ移行させてしまうということなどがあるだろう。
耐性菌が増える一方で、有効な抗菌薬が限られて来れば、今後の感染症治療は難しいものになっていく。
やれば出来そう薬剤耐性アクションプラン(2016-2020)が示す目標
①普及啓発、教育 ②動向調査、監視 ③感染予防、管理 ④抗菌薬の適正使用 ⑤創薬促進 ⑥国際協力があげられ、目標が設定されている。
直接的に日常診療に関連するものとして以下の成果目標があげられている。
①肺炎球菌のペニシリン耐性率を15%以下に低下
②黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率(MRSA)を20%以下に低下
③大腸菌のキノロン耐性率を25%以下に低下
④緑膿菌のカルバペネム耐性率を10%以下に低下
⑤大腸菌のカルバペネム耐性率を10%以下に維持
⑥抗菌薬の使用量を3分の2に減少(2013年比)
⑦経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の使用量を50%削減(2013年比)
⑧静注抗菌薬使用量を20%削減(2013年比)
これらは実現可能なのか。既に院内感染対策委員会設置の義務化と感染対策実施、2012年度の感染防止委対策地域連携加算などが行われている。実際、やってみると思った以上に効果があるように感じる。現在は入院患者が対象となっているが、これが、診療所、クリニック、高齢者施設などへも拡がっていけばいいと思う。
正しい知識を患者も、医療者も
耐性菌が注目されると、「良くわからないが怖い菌だ、耐性菌が検出された患者さんはお断りといった対応もあり、良くないと思っている。「MRSAが検出されたので、うちの施設へは入所できません」等、断ることが対策ではないということを理解しなければならない。正しい知識の普及が必要とされている。
まず必要なのは薬剤の適正使用
経口抗菌薬の使用量を50%減少、注射薬を20%減少させるという目標が提示されている。数値目標達成できるかということに目が行きがちだが、適正使用をするということであると思う。経口抗菌薬は外来での使用が九割くらいと言われているが、いわゆるかぜ症候群に対しての使用が相当あると思われる。本来は必要がないが、念のためとか患者希望があるのでなどで処方していることもある。
自分でも意識して患者さんが要求しても、「これは抗菌薬が必要な状況ではありません。余計な薬は服まない方がいいです」と多少は時間が余計にかかるが説明すると了解していただけることが多い。
社会的にも抗菌薬の正しい服用知識の啓蒙、医療者に対しても、化学療法学会が行っているような抗菌薬適正使用生涯教育セミナーのようなものを各地域で受けることが出来るようになると良い。