パブリックコメント

生活保護指定医療機関担当規程の一部を改正する件(告示)に関するパブリックコメント

2018年9月15日 提出
埼玉県保険医協会 理事長 大場敏明
 これまでも、医師・歯科医師が「医学的知見に基づき」後発医薬品を使用できると判断した場合「可能な限り、後発医薬品の使用を促す」とされている。
 今回の「法改正」で「原則として、後発医薬品により給付を行うものとする」と明文化することは、2点指摘したい。
1.現行の「努力義務規定」から大幅に踏み込み、後発品使用を一層強く推進させることになる。
 これまでの「努力義務規程」下においても、県や福祉事務所は後発薬の使用を「原則」扱いとしており、「原則として使用していただくことにしています」「医師が認めている場合には積極的に使用してください」など、 受給者や薬局等に強力に切り替えを奨めているのが実状である。
 今後の「原則化」が明文化されれば、生活保護行政の実務において、受給者の意思、自己決定権などに関知せず、一層の後発薬品使用の徹底が強いられることは容易に想像ができる。処方した医師に対しても、従前以上に「後発品使用」が頻繁に求められてくることが想像できる。
 従前の「努力義務」と今回の「原則」の違いはなにであろうか。
2.そもそも、憲法25条、14条に反し生活保護差別を助長すること、医療の給付差別の先例になる。
 医療の給付において、加入する保険種別によって、受ける医療内容に制約や制限、限定されることは、憲法に照らせば容認されるものではない。特に、生活保護受給者のみに、医療内容の差別・制限を持ち込むことは、経済力に関わらず必要な医療を保障する国民皆保険の精神に反している。
 憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」、14条「経済的又は社会的関係において差別されない」に反するもので人権侵害にもあたる。
 生活保護の患者のみが「なぜ義務化?」なのか、生活保護の患者に対する説明方途を指定医療機関は持ち得ない。
 生活保護のみに後発医薬品を原則扱いとする規程は、将来、加入する保険者毎に、医療給付の内容や水準を差別することを是認し、給付差別を拡大させていくことにもつながるものといえよう。

 「80%の使用率」「医療費の適正化」の名の下に、経済的観点のみから、医療内容の制約が言及されるが、後発品義務化の医療扶助費の縮減効果はそれほど大きくないようにも思われる。

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