論壇

在宅医療の未来は 点数の簡素化と合理化にあり

川越市 柴野 雅宏
 小生はこれまで、機会あれば難解で複雑怪奇、さらに非合理的な在宅医療の保険請求について述べてきた。しかし、未だ改善される気配はなく、むしろ改悪されている現状を鑑み、再度小生の私見を一部ではあるが述べてみたい。新規に在宅医療参入をご検討されている先生方の少しでも参考になれば幸いである。

施設入所者への対応
 第一の問題は、施設入所者へ訪問診療を行った場合、院内処方では赤字になり得ることである。今までの改定では、点数引き下げによる減点はあったが、赤字という概念は無かったはずである。通常の企業の経済活動では到底考えられないことである。
 施設入所者に対する保険点数は入所者の人数、訪問回数、重症度によって異なり、その組合せは数十通りにもなる。毎月パズルをしている感覚で非合理的である。小生が訪問している有料老人ホームでは人数の変化が激しく、大体8~12人の間で推移している。有料老人ホームでは、診察する全体の人数で考えるため、9人以下と10人以上では、全く同じ内容の医療にも関わらず、点数が異なる。一方、グループホームは1ユニット当たりの人数で考える仕組みとなっており、医療側も何がどう違うのか全く理解できず、患者の理解が得られる筈もない。
 笑えない話であるが、以前小生の受け持っているグループホームや有料老人ホームへ、他の医療機関?あるいは企業ともいえる所から意味不明であったのだが、訪問診療を自分の所に変更すればもっと安くできる等のセールスが頻回に行われていた。しかし、同一建物や施設に関する点数の改定後はそういった話が全くなくなった。むしろ、突然解約された施設に訪問診療を依頼された程である。

医療と介護の給付調整の対応
 第二の問題は医療と介護における給付調整である。要するに施設によって同じ内容の医療にも関わらず、請求できる項目に制限があり、毎月の請求点数(ひいては患者の自己負担金)が全く異なり、患者に不信感を抱かせる原因ともなり得る例を紹介する。
 (例1)年に数回、他施設へロングステイやショートステイしている患者がいるが、自宅にいる時と施設入所中(特にそこに配置医師がいる場合)では全く点数が異なり、その都度複雑な制度にストレスを感じざるを得ない。
 (例2)例外はあるものの、基本的には認められていない小規模多機能型施設より定期的訪問診療を依頼される。
 (例3)もともと自宅に訪問診療をしていた患者の家族から、老健や配置医師のいる特養に定期的に訪問診療を依頼されることがある。

点滴とがん患者の酸素の問題
 第三の問題として在宅患者への点滴の問題がある。入院を拒否してグループホームに入所し、そこでの看取りを希望している小生の患者が、飲食不可で毎日の点滴が必要となり訪問看護ステーションに点滴を依頼した場合、特別指示書を出して、1月で連続した2週間は点滴可能であるという取扱いがある。小生も看護師もなぜ2週間が限度なのか全く理解できない。仮に点滴が1カ月必要で、入院等他の施設へ動かせない時はどうするのか。厚労省から合理的説明をぜひ聞きたいところである。

 最後に本紙昨年6月号の論壇でも指摘した、訪問診療料の在宅ターミナルケア加算におけるがん患者に対する酸素療法加算である。がんと診断されている患者に対し、死亡した月に在宅酸素療法を行った場合に算定するというもの。先程赤字の話をしたが、このケースは持ち出しとなる話しである。在宅酸素療法は在宅酸素療法指導管理料と酸素濃縮加算や酸素ボンベ加算等で10,350点くらいになるが、死亡した月はこの点数は算定できず、2,000点の酸素療法加算のみとなり、医療機関は数万円の持ち出しとなる。
 いろいろ述べたが、在宅医療に関する保険点数制度はもはや限界と思われる。簡素化と合理化を早急に図らなければ在宅医療に未来はない。

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