論壇

マスクをしてないとだめなのか?

久喜市 青木 博美
笑顔の効用
 子供の頃から医院、病院へ、しょっちゅう行っていた。小学生高学年になると、一人で行っていた。一人というのは何か心細いものである。こんな時、受付のお姉さんや、看護師さん(当時は看護婦さん)に、ニコッとされて安心の気持ちが広がっていった。
 3カ月ほど入院をした時も、看護師さんたちが笑顔で接してくれたことで暗い気持ちにならないですんでいた。たまにお医者さんが回診に来たが、難しい顔の診察の後で「大丈夫!」と言ってニコっとされるとほっとした。
 「笑顔の効用」である。笑顔の効用については、昔から研究としてのものから、散文的なものまで多くの効用が言われている。

最近は笑顔になかなか出会えない
 ところが最近、なかなか笑顔に出会えない。マスクをしている人が多いのである。さすがに暑くなってくると人数は減るが、受付、検査室、レントゲン室、処置室…。
 中には鼻を出していたり、顎にしていたり、隙間が随分開いていたり等、マスクの効用が期待できそうもない着用をしている人もいる。

顔の見える関係、見えない関係
 孫が急性前骨髄球性白血病となり入院した。医師、スタッフは常にマスクをしている。妻が時々付き添いで行っていたが、担当医がどんな顔なのか、ついに分からなかった。看護師さんも「今晩は私が担当なのでよろしく」と挨拶をしていくが、やはりマスクをしているので、どんな人なのかよく分からなかった。
 病院で仕事をしていても、新人で最初からずっとマスクをしていると、誰と一緒に仕事をしているのか分からないのである。顔の見える関係で仕事を一緒にしたいと思っているのだが、名前と顔が一致しない。
 初めての患者さんに挨拶をする。「内科の青木です。よろしく」そして診察を始めていく。この時お互いにマスクをしていたらどうだろう。
 挨拶と感じるだろうか、観察されていると感じるだろうか。マスクは人との距離を大きくする。

情報が伝わりにくい
 コミュニケーションは言葉だけではなく全身で行っている。特に重要なのが、顔、表情である。同じことを言っていても、固い表情と、笑顔で言っているのでは全く違うものになる。
 診察の場合も、まず顔を見て、辛そうなのかそうでないのか、重症か、そうでないのかを、チェックする。マスクをしていると分かりにくくなってしまう。

いつ頃からなのか
 いつ頃から、こんなにマスクが多くなったのだろう。昔は、風邪をひいた時、結核病棟に入る時、処置をする時、手術室へ入る時などだったように思う。
 2000年頃、新型インフルエンザ騒ぎ、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルスなどが注目を帯びた頃からだろうか。
 マスクの効用はあるのだろうが、限られている物のように思う。これといったエビデンスもないようだし、マスクが多く着用されるようになって、インフルエンザの流行が減った様子もない。

マスクをする時、マスクをしたくなる気持ち
 マスクをするのはどんな気持ちからなのだろうか。医療機関では「ウイルス、細菌を吸い込まない気がする(サージカルマスクでは防げない)」「何か感染予防に役立つような気がする」「飛沫感染を予防できる(飛沫感染対策として推奨されている)」と、マスクをつけるのが良いといった空気を感じる。
 顔はプライバシー、出したくないなど、必要に応じてで良いのではないかと思っている。
 国立大学附属病院感染対策ガイドラインでは、①個人防護具:血液や体液などが飛散し、目、鼻、口を汚染する危険がある場合はマスクとゴーグルを着用する。②呼吸器衛生の咳エチケット:咳やくしゃみの時は、ティシュペーパーあるいはマスクで口と鼻を覆う。咳をしている人が耐えられれば、サージカルマスクを着用させる。③飛沫感染対策:飛沫感染の危険のある患者の処置を、2m以内で行う場合は、サージカルマスクを着用すると、ある。
 こんな場合にマスクを着用することで良いのではないかと思い、私はそうしている。

Copyright © hokeni kyoukai. All rights reserved.

〒330-0074 埼玉県さいたま市浦和区北浦和4-2-2アンリツビル5F TEL:048-824-7130 FAX:048-824-7547