論壇

診療報酬改定 医科歯科の評価格差を考える

戸田市 穴井 恭市
 今年は診療報酬改定の年である。年末には改定率が出され、中医協で具体的な点数の検討も佳境に入った。
 歯科と医科では診療内容が大きく異なるため、その評価は厚労省の判断に委ねられている。しかし、同じ医療であるにもかかわらず、共通している初診料・再診料に医科歯科で点数の差はなぜつけられているのか。改定のたびに感じている評価格差を考えてみる。
 歯科医師はその診療において、処置の大半が国から指定された高価な機材と材料を使い、時間と細かい技術を駆使し施術を行っている。しかし、初診料・再診料に含まれるとされる一部の機器や材料代の使用コストを考慮すると、人件費となる技術料はあまりにも低報酬になってしまう。現在の点数で比べてみると、医科の初診料288点、再診料73点に対し、歯科では初診料251点(87%)再診料は51点(69.5%)と評価が低い。
 歯科診療で患者1人にかける時間は診療内容によるが1人30分は必要で、診療時間を8時間とすると、1日に診られる患者数は16人から20人になる。厚労省の2016年11月25日第3回歯科医師の資質向上等に関する検討会で提示された「歯科診療所に従事する歯科医師1人1日当たりの患者数」の資料では14.1人から17.4人となっている。
 これに対し医科では、『診療所経営の教科書第2版(日本医事新報社)』で厚労省の「社会医療診療行為統計(2015年)と「医療施設調査(2014年)を用いて計算したものが紹介されているが、36人から43人で、平均すると40人。7時間の診療時間で、1人当たりの平均診療時間は10.5分となっている。医科の各診療科目・診療内容にもよるが、これでは収入格差が出るのも当然である。
 私が歯科医師になって感じたのは、歯科医師は世間からあまり評価が良くないということである。「悪徳歯医者。金の亡者」「やたらと自費診療を勧めてくる」「希望通りやってくれない」「削られた、抜かれた」など、報道やインターネットに溢れている。しかし、医科ではあまり耳にしない。この差もなぜ生まれたのか?諸先輩方のせいとは言いたくないが、歯科診療の歴史において、世間では相当ひどい目にあわされていると思っている人が多いという結果ではないかと想像できる。
 インフォームドコンセントという言葉が使われるようになって、かなりの時間が経つ。ネット社会は、良いことも悪いことも、嘘も本当もあらゆる情報が垂れ流しである。ネット上の書き込みは自由なので、これからも益々状況は悪くなると予測される。
 医科は命に係わるが、歯科は命に関係ないなどと言うのは、はるか昔の話である。今や麻酔注射1本で患者が命を落とすこともある。患者はいろんな病気を抱えて歯科診療所にやってくる。我々も患者の命を守るための知識とスキルが求められている。その中には、医科歯科連携として、周術期、在宅医療、生活習慣病の予防での対応も求められている。
 歯科国家試験も昔のように九割が合格とはいかなくなり、各歯科大学は、国家試験を受けるための基準を設けるなど、あらゆる対策を取って合格率を下げないようにしている。こうした厳しい条件で合格した歯科医師はとても優秀で、歯科界を背負っていく十分なスキルを持ち合わせていると思われる。この格差のために辛い未来とならぬよう、医科歯科の格差をなくさなくてはならない。
 しかし、問題は格差だけではない。人件費・物価上昇への対応、医師・歯科医師、医療従事者の医療行為への正当な評価、医療施設の基盤強化のためには現状の初診料・再診料の点数では全く足りない。医師・歯科医師が安心して診療を提供できるような診療報酬となるために、声を上げていきたい。

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