論壇

歯科から見たCOVID-19 パンデミックを乗り切るために必要なこと

鴻巣市  植松 登実隆
同時流行に備えた検査体制の整備を
 我が国は5月25日、1都3県における新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、4月7日から約2カ月に及んだ戦後最大の危機は収束に向かいつつある。現時点ではCOVID-19対策は功を奏してはいるが、第2波の真っ只中にあり、今後は第3波、もしくはインフルエンザの流行を迎えるかもしれない。
 周知のように症状からCOVID-19とインフルエンザを見分けることは難しく、同時流行は非常に恐ろしい脅威である。インフルエンザが流行すれば、COVID-19と症状が似ているので同時流行が起きれば、全国で検査を希望する患者の増加から医療崩壊に繋がる。そのような事態を防ぐ為にも、早急にどちらの検査も受けられるよう、十分な検査体制を整える必要性がある。
 9月末日、国内のCOVID-19累計感染者数は約83,000人、回復者約74,500人、死亡者数は約1,500人という、先進国の中でも類を見ない低水準で推移しており、緊急事態宣言の最大目的であるCOVID-19の感染拡大防止という点においては、日本は他国と比較して一定の成果をあげたと言える。しかし、このウイルスと人間の戦いの終息の日はいつになるのか。

訪問歯科とCOVID-19
 コロナ禍における訪問診療も少なからず影響が出ており、これを行っている歯科医院も外来と同じ打撃を受けている。
 ニュースでも報道があるように、介護施設での集団クラスターが発生しており、親族でも面会謝絶される状況であり、多くの施設で面会の人数、時間に制限がある。その中で施設から訪問診療は延期して欲しいとの依頼もあり、現在は従前の状態に戻ってきているが、当院も訪問診療中止の要請に協力を余儀なくされた。
 訪問診療を行うのであれば、スタッフ(歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、運転手等)のマスク着用、手洗いに加えて検温は基本である。現状では当院スタッフの出勤前と出勤時の体温測定を行い、施設に入る前の衣服、上履き、手指のアルコール消毒を徹底している。また、家族の検温、友人との会食等の禁止にまで制限をかけている。診療を中止する際に、経過観察や口腔ケアの必要な患者への注意点などを記載した文書を渡すことで対応した。それでも義歯を渡す前に亡くなられた患者もおり、残念でならない。

口腔ケアの効果
 また、COVID-19以外にも、誤嚥性肺炎を含む肺炎を罹患して亡くなる患者は例年10万人以上というデータが示す通り、肺炎予防という観点から口腔ケアは無視できるものではない。COVID-19を甘く捉えてはいないが、施設の入居者には治療、口腔ケアが必要である。わからないことも多い中、東京歯科大学の奥田克爾名誉教授が「新型コロナウイルスのパンデミックからオーラルヘルスを考える」を発表している。高齢者に対し口腔ケアを行った結果、インフルエンザウイルスの感染率が10分の1になったことを報告している。また、歯周病が原因でCOVID-19の重症化の危険性があり、免疫が暴走する(サイトカインストーム)リスクが高まると示唆している。

COVID-19における差別
 7月29日、「全国で感染者ゼロ」だった岩手県でついに感染者が発表された。企業ホームページのサーバーは一時ダウン、2日間で100件を超える電話やメールがあり、「会社の指導が足りない」、「感染した社員をクビにしたのか」と中傷もあったと聞く。
 また看護師等4人が感染した医療機関では、多くの職員が地域で風評被害に遭い、職員の家族に対する出勤停止要請が最も多かったという。
 COVID-19に関連して、感染者、濃厚接触者、医療従事者等に対する誤解や偏見に基づく差別を行うことは許されるわけがなく、情報を正確に把握し、冷静な行動にとるように努めてほしいと切に願う。

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