声明・談話

年頭所感

埼玉県保険医協会理事長  大場 敏明
 あけましておめでとうございます。
 新型コロナウイルスが世界を席巻した昨年は、私たちの暮らしや日常全般における「これまで」を考える1年となりました。これまでも地域医療を守ってきた私たちですが、世界規模の感染症の前では日常医療を続けていくことが叶わず、医療とは何かを考えた方も多かったと思います。政府政策にも問題があり経営面でも翻弄、苦境を余儀なくされ続けました。
 医療と公衆衛生の双方の面から病床やマンパワー不足、法や施策の不備も可視化されました。流行が始まった当初から、検査体制や医療体制が足りない状況でしたが、年末の段階でも整備はままならず、閉会がちだった国会の影響で法律の改正や検査体制の強化策も講じられないままです。
 コロナ禍ではっきりしたのは、医療や社会保障のセーフティネットを充実・強化させることや、医療の人員と施設を日常から手厚くしておくことが重要であり、個人の自助努力や効率の追求のみ課すだけでは解決できないということでしょう。英国のジョンソン首相が「社会というものは本当に存在する」と発言し、かつて同じく保守党であったサッチャー首相の「社会というものは存在しない」という言葉に掛けながら自らの命を救った医療制度や社会の連帯に感謝したのは昨年3月のことでした。
 長く続いている新自由主義政策-「自己責任」「公的部門の縮小の民間企業頼み」「規制緩和」「市場原理主義」等-により、日本の医療は徹底した効率が求められ、患者には自己責任が追求されてきましたが今こそ、その転換が求められています。
 日本国内では安倍政権から菅政権に代わりましたが、基本政策、新型コロナに対応する政策は継承されています。感染症対策が進まない原因として、オリンピックやGoToキャンペーンが優先され、感染症対策が国の最重要課題となっていないことと、規定路線の先送りや見直しができないことなどが指摘できます。
 予算は確保されども補助金が医療機関までなかなか充分には届かないという事態は、既存の補助金交付の手続きを採用していることが要因です。詳細な書類による方式は、申請する医療機関にも受ける行政にも負担がかかり支給までに長期間を要し、目詰まりの原因になります。緊急の経営支援策として、概算払いにて減収補填を実施することが求められています。
 既定政策であった患者負担増計画では、2022年から75歳からの高齢者の患者負担を1割から「2割」と2倍に増やすことなどが自民党と公明党により年末に合意されました。医療界から求める支援要請に応えることなく、受診環境を悪化させる患者負担を増やすなど到底認められるものではありません。協会では「クイズチラシ」などにより、患者負担増の計画を多くの患者・市民に知らせるべく活動をしてきましたが、いよいよ、1月からの国会が正念場です。
 昨年の協会は感染拡大防止を優先し多くの催しを見合わせましたが、新たなにリモート講習会も行うなど可能な限り対応に努力しました。会員数も4,230人という大きな組織に成長しております。課題はさまざまありますが今年も会員の皆様方と医療、社会保障の改善運動、協会のさらなる発展に向け、より一層力を尽くしてまいります。
 皆様方にとって本年が健やかな1年となりますよう心より祈念いたします。

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