早急に日米地位協定を改定し、日本人への人種差別を止めさせよう

戸田市  福田 純
 2020年5月、アメリカで黒人が白人警官に首を押さえつけられ死亡。その事件を契機に抗議デモは国境を越え「Black Lives Matter BLM」のスローガンは世界中に広がり、日本でも(黒人のための)BLMデモが行われた。テニスの全米大会でも大坂なおみ選手が黒いマスク姿でこの運動に同調したことを覚えている方もおられるだろう。
 一般に、差別は加害者側が差別を認識していないこともあり、被差別者側が意思表示をしないと改善されないことが多い。ところが、日本人はアメリカから人種差別を受けているが、多くの日本人はそれを認識していない。それ故、自らが受けている差別を改善、是正しようとも思っていない。その差別とは日米地位協定にある。
 アメリカ軍人等が日本で犯罪や事故を起こし、日本人に被害を与えても処罰されない。例え大使館や基地の外で米兵がレイプ殺人を犯しても、基地内に逃げ込めば日本は犯人の身柄引き渡しは特例を除き請求できない。不平等極まりない協定である。米軍基地近くの住民が戦闘機の騒音に苦情を訴えても、日本政府はまったく無力である。現状の地位協定がある限り、日本の最高法規である憲法でさえ、適応されない規定になっているからである。
 それらを踏まえ、今年1月31日、鹿児島県種子島にある西之表市の市長選挙が行われた。種子島の西方10㎞に浮かぶ「馬毛島に自衛隊基地を誘致する」が争点であった。だが、実際は在日米軍空母艦載機の離発着訓練(FCLP)基地の移転誘致が真の争点とわかり、基地誘致反対派の市長が当選した。今後、国はあらゆる手段を使って種子島住民の懐柔に取りかかるであろう。高齢化や過疎化が進む税収の乏しい地方都市にとって、交付金はとても魅力的である。
 かつて岩国市でもFCLP基地誘致反対を表明していたが、交付金という媚薬をかがされ、基地を受け入れた結果、市民は艦載機の騒音に悩まされる羽目になった。そして、人間の基本的人権である睡眠を妨げられ、不眠症からうつ病を発症し、うつにより騒音への反対運動すらできなくなった人もいる。さらに「米軍機は基地以外の上空を低空飛行しない」との約束も反故にしている。自国では住宅地での低空飛行は許されていないが、地位協定では日本の航空法は米軍機には適応されないため、事実上、彼らは日本の空を実行支配している。
 沖縄県辺野古の新基地建設でも民意は無視され続けている。アメリカの無理難題に対し、何でも受け入れる日本の姿勢をつぶさにロシアのプーチン大統領は見ており、再三「現況の日米地位協定下においては北方領土の返還に応じられない」と述べている。北方領土の返還には日米地位協定の見直しが必須であるのに、政権与党はこれを怠り「ロシアが返還に応じない」と日本国民を欺き続けている。
 BLMも良いが日本人なら「Japanese Lives MatterJLM」を訴え、日米地位協定という不平等、理不尽な協定を変えてゆかねばならない。ことは沖縄だけの問題ではない。北方領土返還に時間がかかると旧島民は老齢化により減少。反面、ロシア側は住民が増え、インフラ整備も整え既成事実化が進行。時が経てば経つほど日本にとって不利となる。これらはすべて日米地位協定を改定してこなかった政権与党の不作為によるものと言えよう。
 一方、アメリカは中国に対して、香港の民主化運動や新疆ウイグルやチベットの人権弾圧問題の是正を勧告しているが、対立国のことよりもまず友好国への人種差別を早急に見直すべきである。日米地位協定調印後、60年以上に渡り、既得権益を盾に変更を拒否。日本人への人権侵害・人種差別は続いている。これでは中国に人権問題をとやかく言えた筋ではなかろう。
 そして、外務省もアメリカ追随姿勢ばかりでなく、守るべきは主権者たる日本人の権益である。馬毛島への基地建設は沖縄、岩国等に続く新たな日本人への人種差別を作り出している。

Copyright © hokeni kyoukai. All rights reserved.

〒330-0074 埼玉県さいたま市浦和区北浦和4-2-2アンリツビル5F TEL:048-824-7130 FAX:048-824-7547