論壇

オリンピックの開催は強行すべきか ~IOCの実態~

三郷市  土田 昌巳
 2021年5月14日、弁護士で元日弁連会長の宇都宮健児氏が、東京オリンピック開催中止を求める要望書を小池百合子東京都知事宛てに提出した。中止を求めるオンライン署名は5月5日から、わずか10日間で35万筆を超えたという。更に内閣府で菅義偉首相・丸川珠代五輪相、組織委の橋本聖子会長、IOC、国際パラリンピック委員会、すでに提出済みの東京都を含めた開催推進5者への中止勧告を行った。
 また、署名は6月中旬には50万筆に届く勢いで、世界中から集まっているという。5月28日には埼玉県保険医協会も五輪中止を求める理事会声明を県知事や首相たちに提出した。
 実際オリンピックの中止はどのような場合に行われるのだろう。IOCと東京都の合意内容は極秘で守秘義務があるという訳ではなく、東京都のホームページで見ることができる。興味のある方は「開催都市契約第32回オリンピック競技大会(2020/東京)」で検索すると簡単に見つけられる。
 「契約の解除」という項目で、「IOCは、以下のいずれかに該当する場合、本契約を解除して、開催都市における本大会を中止する権利を有する」とある。大会を中止する権限はIOCにあり、日本・東京都・オリンピック組織委員会(OCOG) にはない。あまりにも一方的な契約といえよう。
 中止の要件はいくつかあるが「いつでも、戦争状態、内乱、ボイコット、国際社会によって定められた禁輸措置の対象、または交戦の一種として公式に認められる状況にある場合、またはIOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」というものがある。要は銃弾が飛び交い住民の命が危険にさらされていたり、某国がミサイルを近海に発射して、密かに核兵器開発をしているというイメージか。COVID-19の流行で「本大会参加者の安全」が脅かされる心配は大いにあるのだが、開催国の国民の安全には全く配慮されていない。
 6月初めのBBCのインタビューで、OCOG橋本会長が大会の開催は「100%確実」と述べた。ただ、COVID-19の感染が急拡大した場合の観客なしでの実施を「覚悟しておかなくてはならない」としたのも頷ける。
 IOCが大会の中止を決めた場合の損害賠償について興味深い記述がある。「すべての損害賠償およびその他の利用可能な権利や救済を請求するIOCの権利を害することなく、即時に本契約を解除する権利を有する」。つまり、中止になっても開催で得られたはずの利益を請求するのはIOCの権利であるという。
 更に興味深いのが、「本契約の解除が生じた場合、開催都市、国内オリンピック委員会およびOCOGは、ここにいかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄し、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする。OCOGが契約を締結している全ての相手方に本条の内容を通知するのはOCOGの責任である」。IOC以外は保証・賠償・救済に対する権利を放棄して、その上で第三者からIOCが訴られたら肩代わりすること。ついでに告知もお願いという。
 随分とたちの悪い連中に絡まれたなというのが率直な感想。実は同じように考えている都市は多いらしく、2004年アテネ大会では11都市が立候補したが、2020年東京大会では5都市、2024年パリ大会では2都市しか集まらなかった。多額のコストや経済効果への疑問、開催したがる都市がゼロになるのも時間の問題なのかもしれない。

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