論壇

日本に原子力発電は向かない 再生可能エネルギーにシフトしよう!

福田 純
 子どもの頃、あなたはご両親と一緒に夏の夜、庭先などで手持ち花火をして遊んだことがありませんか。風の向きをあらかじめ確認し、バケツに水を汲んで、線香花火などに興じた思い出があることでしょう。今では日本煙火協会の安全基準が設けられ、SFマークが記されている。きちんとルールを守っていれば手持ち花火は安全である。このように小さな子どもにも安全に遊べる遊具だが、遊んではいけない場所がある。それは揺れる乗り物の中である。飛行機内はもちろん、電車やバスの車内では花火をしてはいけない。突然、大きく揺れて危険で周りに迷惑が降りかかるからである。
 そんな日本には原子力発電所が33基あり、9基が稼働中である。東日本大震災以前には54基の原発があり、日本で使用する約30%の電力を賄っていた。原発の街には「原子力明るい未来のエネルギー」との標語が掲げられ、原発の安全神話を疑う者はほぼいなかった。あの3月11日14時46分までは。
 あれから既に10年の年月が経過したが、福島原発事故処理の終息には数十年もの期間を要するという。原発近隣の住民は先祖代々続いてきた故郷と生活を奪われ、戻りたくとも戻れない現実がのしかかる。「こんなことになるのなら…」と悔やみきれない思いでいる彼らが今、言いたいことがあるとすれば、恐らく「国や電力会社の甘言に乗ってはいけない」。「魅力的に見えたお金より、もっと大切なものを失うから」と残恨の言葉を発するであろう。
 日本は世界で名だたる地震大国である。プレートテクトニクス理論において、日本は太平洋・ユーラシア・北米・フィリピンの四つのプレートが重なり合う場所で、世界中で起きたマグニチュード6以上の地震のおよそ2割が日本および日本近海に集中している。その上に世界の原発の立地図を重ねてみた(図)。この結果、日本は揺れる大地の上に多くの原発が設置されていることが判る。安全な子供用の手持ち花火でさえ、揺れる場所では遊んではならない道理であるのに。
 さて、世界は21世紀持続可能な社会を目指すとし、日本は2050年までに地球温暖化ガス排出ゼロを目標に舵を切った。原発による電力は事故がなければ安価だが、ひとたび事故が起きれば、福島第一原発では核廃棄物の処理費用を加えると当初の20倍、80兆円以上との試算も出ている。廃炉費用に加え、これらの最終処分廃棄場所の決定とともに難航するであろう。原子力発電は安価な電力ではないばかりか、地球の生物環境に多大な悪影響を及ぼすことが明確になった。
 世界も原発縮小に転進している。日本も地球に負荷をかけない持続可能なエネルギーとして再生可能エネルギーにシフトすべきである。見渡せば日本の立地は、自然エネルギーの宝庫である。日本はもっと地の利と技術力とを生かし、それに特化すべきである。
 太陽光、風力発電はもとより、潮力、地熱、バイオ発電にも大きく期待したい。海に囲まれ黒潮や親潮といった海流は大きなエネルギー源である。また、火山活動が活発で温泉も日本各地から湧き出ている。だが、国内における地熱のシェアは1%にも満たない。日本の地熱資源量は世界第3位であるが、発電量は世界第9位に甘んじている。人口40万人に満たないアイスランドは世界第7位の地熱発電量で国内の3割を地熱発電で賄っており、その地熱発電を支える機器、設備の大部分は日本製である。こういった現状(地政学的、技術的にも)を鑑み、一年中安定供給が期待できる地熱発電にもっと力を注ぐべきである。
 さらに日本は国土の七割が森林である。バイオ燃料は地産地消が期待できる。森林の荒廃を防ぎ、温暖化による豪雨等の治水対策として、森の恵みを活用すべきである。
 原発に費やす費用をこれらの開発に向ければ、日本は再生可能エネルギーの優良国になる資質は十分にある。さすれば、今後ますます原発の必要性は低下する。少なくとも揺れる大地の日本では…。

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