論壇

2022参議院選挙後の問題点とこれから

福田 純
 岸田政権が発足して10カ月が経つが高い支持率のまま参議院選挙に突入。国民の約半数は政権の安定は望むが「与野党が拮抗している状態が望ましい」とのアンケート結果がある。これは自民党一強では党内におごりが生じ、国会軽視との印象があったからだろう。
 結果は自民党の圧勝。単独過半数のみならず、維新など右寄りの政党も加わり、改憲に必要な議席をも確保した。
 だが、国民の関心は急速に悪化する物価高・経済対策にあった。特に日本は「失われた30年」と揶揄されるデフレ経済のため、G7の中で実質賃金の上昇していない唯一の国である。そこに長引くCOVID-19の流行、アベノミクスの副作用としての円安とウクライナ侵攻によるエネルギーや食料等の大幅値上げラッシュ。さらに後期高齢者医療費2倍化が追い打ちをかける。これらに対し野党は低所得者に逆進的に働く「消費税の減税・廃止」を掲げた。一方、与党は「実質賃金アップ」を掲げた。内部留保に腐心する企業に、労働者への賃上げ案、年金生活者救済の妙案が政府にあるのだろうか。
 さて、コロナ・オミクロン株の第7波BA・5の流行が急拡大の最中、経済最優先の岸田政権は7月20日時点で「行動制限は考えていない」と言明。だが、今の状況は菅前政権の「Go to Travel」と同じではないか。思い出して欲しい。昨季オリンピック時にコロナに罹患しても入院すらできず、自宅で亡くなった人が少なからず出た惨劇を。あの頃と比べ「ワクチンは打ったし治療薬もある」といった楽観的風潮が国民に充満。事実、新型コロナウイルスは弱毒化している反面、感染力は格段にアップしている。感染者が増えれば重症者はそれなりに増え、医療は逼迫する。昨年と“同じ轍を踏む”ことは避けたい。「Go to なにがし」は岸田政権の目玉政策であるが、今は自重するのが賢明と言えよう。
 参院選の最中、安倍元首相が凶弾に倒れたとの突然の訃報。殺人は許されざる行為であるが、事件後マスコミの対応が気になった。首相として国会議員として、賛否両論。国を二分してきた元首相であったが、各方面からの弔辞がおしなべて“賛辞”ばかりであった点である。「死者に鞭打つことはしない」との不文律があるが、報道の中立性が脅かされていると感じられた。在任中、「呼吸をするが如く」嘘を言い、国民を愚弄してきた彼の言動を報道畑の方々は忘れた訳ではなかろうに。モリ・加計・桜問題では、お友達を大事にし過ぎた。また財務省内で公文書の改ざんを強要された局員がそれを苦に自死したのに、安倍氏は説明責任を果たさず鬼籍に入ってしまった。
 加えて税金の無駄遣い。外遊回数を誇るだけでその実績は?である。無償円借款などの手土産を持って遠路日本から来てくれた特上の客人である。安倍氏でなくとも歓待されたに違いない。プーチン大統領とは27回も会食し、お友達を演じている。真の友人であれば、今こそプーチン大統領に「あなたは間違っている」と言えなかったのか。飲み食いの費用対効果が見えない。使い勝手の悪い“アベノマスク”の税金の無駄遣いなど可愛く思えるほどである。
 多くの国民が反対した秘密保護法・共謀罪も結局は議員の“数の暴力”で強行採決。極めつけは首相の衆議院解散権をも乱用した国会軽視。日本の未来を改悪し続けた男を「国葬に!」との話が浮上している。国葬は内心の自由に抵触し、それを強要することになる。国内外に多数の非賛同者が居たことを考えると承服しかねる。そして、またまた多額の税金が使われる。
 さて、参議院の本来あるべき姿を論じよう。かつて「良識の府」として設立された参議院。ところが今では「衆議院の焼き映し」となっている。特に衆議院の議席数が与党過半数を占めている状態においては、参議院の存在は無駄と映る。本来、政党と一線を画した党議拘束に縛られない立場で“良識”的判断ができる人達の選出が望まれる参議院にあって、衆院選と同じ選出方法でよいのか。現状は良識とはほど遠い?タレント議員や世襲議員のオンパレード。議員1人あたり年間2,000万円余り、参院維持コストは年500億円超かかっている。今後6年間、議員になった方々が見合った働きをしているかに注意していきたい

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