論壇

埼玉保険医新聞600号発行に想う
まずは機関紙を手に取ってみよう!

機関紙部長  渡部 義弘
 機関紙部長を拝命して1年余、部員・事務局に支えられながら、何とか機関紙部を運営してきました。今10月号を以て、埼玉県保険医協会の機関紙「埼玉保険医新聞」が600号を迎えました。一度も欠号なくお届けできたことを、会員の皆様にご報告するとともに感謝申し上げます。500号発行後の8年間で協会会員数は4,000人を突破(2016年3月)し、2022年8月24日現在、4,303人と増加し続けております。多くの会員に機関紙をお届けできることを幸甚に存じます。

 さてこの8年間を振り返ると、激動の時代といわれて久しい中、世界を席巻した新自由主義、覇権主義による副作用が顕在化し、国際社会の不安定化は更に加速した。
 国内に目を向けても、特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認等、重要な法案が国民に十分説明されないまま閣議決定という国会軽視の形で決定されていった。ところで、他の先進国の労働者賃金が伸びている中、日本の労働者の実質賃金低下は際立ってきた。相対的貧困率もOECD諸国の中では高いほうであり、格差社会が常態化している。
 コロナ禍前から受診控えによる健康格差の問題も指摘されている。疾病や生活困窮は「自己責任」と考える空気を醸成し、社会保障制度を財政の「お荷物」と位置付けて改革する政府方針が連綿と打ち出されてきた。さらに直近では、ロシアのウクライナ侵攻を奇貨とし、台湾危機などを懸念し、防衛費の5兆円積み上げ案が提起されたが、財源論的裏打ちがなく、社会保障費の削減を充てる可能性が極めて高い。米国の年次改革要望書の圧力もあり、このままでは国民皆保険制度が空疎化することになろう。
 これに呼応するよう、医療制度も、医療介護総合確保推進法、医療保障制度改革関連法案などが、多くの重大な問題のある現状変更を含む法案にもかかわらず、短時間の議論で「一括採決」という乱暴な手続きで決定されていった。その具体化として、地域医療構想や地域包括ケアシステムが、コロナ禍の中、「医療崩壊」を直視せず計画通りに強引に推し進められたことは記憶に新しい。医療界の反発に耳を貸すことなく、官邸、財界、財務省の圧力により、当然のように診療報酬ネットマイナス改定が定着し、近年では施設基準や算定要件を利用し、時にはリフィル処方箋のように中医協の頭越しに決定される、政策誘導的改定が目立ってきている。
 消費税の引き上げによる「損税」は野放しにされ、コロナ禍の受診抑制がダメ押しとなり、多くの医療機関が閉院ないし危機的状況となった。また、在宅医療促進の掛け声と裏腹に在宅医療の報酬体系をいたずらに複雑化させ、実質削っているところへ、在宅医療の医師射殺事件が発生し、現場のモチベーションはさらに低下した。また、一定所得の後期高齢者窓口負担の二倍化が決定され、この談話が掲載される頃は実施されているかもしれない。従前よりの懸案であった歯科の「金パラ」問題は、ロシアのウクライナ侵攻とそれに反応した投機により状況が悪化した。
 医療の市場化はデジタルトランスフォーメーションとともにデータヘルス改革の形で医療界のコンセンサス抜きにエンジン全開だ。オンライン診療の拡大、マイナンバーカード普及策としてのマイナ保険証。データヘルス改革の基盤としてのオンライン資格確認の義務化。併せて資格確認システムの盤石化のための保険証発行の停止。上記のように目白押しである。

今後の埼玉保険医新聞
 時代の波に呑まれ、急速に変貌を遂げ、時には強要される医療。機関紙はこれからも医療問題や個別指導・審査情報を可及的早急に詳しく実践的に掲載し、講習会のご案内、共済などの諸情報をお伝えします。「開業医の権利を守る」「県民の医療を守る」という目的を持った運動体の機関紙としてその実現に向け会員に対して協力を求め、結果をフィードバックする使命を持つと考えています。
 一方で、会員参加の気楽に読める紙面も併せ持つ読みたくなる機関紙を目指します。ぜひ、会員の皆様のご意見、ご希望、ご批判などお寄せください。今後とも機関紙をご愛顧いただけますよう役員・事務局一同奮闘する所存です。何卒よろしくお願い申し上げます。

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