論壇
新卒歯科衛生士はどこにいった
三郷市 土田 昌巳
「歯科衛生士学校に求人を出しても応募が来ない」また、東京での歯科衛生士採用は困難を極めて、半数近い歯科医院に歯科衛生士がいないという噂を耳にする。歯科衛生士が配置されていることは、か強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)・歯援診(在宅療養支援歯科診療所)の施設基準になっており、か強診に限定した診療報酬が算定できないという経済的な問題も発生する。
全国の歯科衛生士養成機関177校による全国歯科衛生士教育協議会によれば、2021年の卒業者数6,978人で就職者数6,377人。それに対して求人数は14万4,203人ほどあり、なんと求人倍率22.6倍であったという。歯科衛生士は歯科診療所のみならず在宅・介護保険施設・病院等の様々な場所で従事することが想定されており、競争相手は歯科医院だけではない。これではなかなか応募が来ないのも納得してしまう。それに呼応して新卒の給料も上がっており、ある求人サイトで埼玉県さいたま市を調べてみると、初任給の条件が記載されていたのが46件で平均24.2万円。最大値28万円・最小値19万円という結果であった。歯科医院独自で奨学金制度を作り学生時代から繋がりを持つ取り組みも見受けられるが、給料が高い・駅に近い・設備が良い歯科医院でなくては、はなから相手にされない。
運良く新卒を採用できたとしても歯科衛生士の勤続年数の平均はおよそ6年と言われている。21歳で卒業して27歳というと結婚・出産などのライフイベントが予想され、これを機に退職というケースが多いのかもしれない。出産休暇・育児休暇などの制度を利用して働き続けるのも小規模の医院では難しい面もある。そうなると子育てが一段落した後の復職支援の取り組みに期待がかかる。実際に厚労省・歯科医師会・歯科衛生士会では研修会・求人情報の提供などを行っている。
さて、「東京の歯科医院の半数に歯科衛生士がいない」という噂だが、2020年衛生行政報告例(就業医療関係者) の概況によれば就業歯科衛生士数は東京都1万5,045人。歯科医院数は1万642軒なので1軒あたり1.4人ほど。東京歯科保険医協会が2012年に行った会員アンケートでは82%に歯科衛生士がいると回答している(会員3,450人に対して14%・481人から回答)。全数調査ではないが、歯科衛生士がいない東京の歯科医院は2割ほどと考えて良さそうだ。ちなみに埼玉県の就業歯科衛生士数は6,741人、歯科医院数は3,542軒なので1軒あたり1.9人ほどと東京よりは恵まれた環境になっている。
実際に歯科衛生士はどれくらい足りていないのか調べてみると、東京医科歯科大・小原由紀氏、国立保健医療科学院・安藤雄一氏の「歯科診療所における歯科衛生士不足の現状に関する研究」という論文を見つけた。2014年一歯科診療所あたりの歯科衛生士数は全国平均1.47人、東京都1.09人。論文では歯科衛生士の不足数は約4万5千人程度であると結論づけている。6年間で就業歯科衛生士数は約2万人ほど増えたので、不足は2万5千人ほど。実際に東京都の一歯科診療所あたりの歯科衛生士数1.4人になっているので状況は改善傾向にある。年齢階級別に見ると44歳以下はほぼ変わらず、45歳以上が増加しているのが特徴。ベテラン歯科衛生士の活躍の場が広がってきているが、25歳未満は減少傾向。
2022年度歯科衛生士養成学校入学定員9,609人に対して入学者数8,547人。定員充足率88.9%と定員割れの状態が続いている。2021年東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校閉校、2023年日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校の学生募集停止など、歯科衛生士育成については暗いニュースが飛び交っている。
そもそも歯科の診療報酬が低いことが根本的な原因。歯科衛生士のやり甲斐や雇用を守る上でも大幅な診療報酬アップが必要だ。
全国の歯科衛生士養成機関177校による全国歯科衛生士教育協議会によれば、2021年の卒業者数6,978人で就職者数6,377人。それに対して求人数は14万4,203人ほどあり、なんと求人倍率22.6倍であったという。歯科衛生士は歯科診療所のみならず在宅・介護保険施設・病院等の様々な場所で従事することが想定されており、競争相手は歯科医院だけではない。これではなかなか応募が来ないのも納得してしまう。それに呼応して新卒の給料も上がっており、ある求人サイトで埼玉県さいたま市を調べてみると、初任給の条件が記載されていたのが46件で平均24.2万円。最大値28万円・最小値19万円という結果であった。歯科医院独自で奨学金制度を作り学生時代から繋がりを持つ取り組みも見受けられるが、給料が高い・駅に近い・設備が良い歯科医院でなくては、はなから相手にされない。
運良く新卒を採用できたとしても歯科衛生士の勤続年数の平均はおよそ6年と言われている。21歳で卒業して27歳というと結婚・出産などのライフイベントが予想され、これを機に退職というケースが多いのかもしれない。出産休暇・育児休暇などの制度を利用して働き続けるのも小規模の医院では難しい面もある。そうなると子育てが一段落した後の復職支援の取り組みに期待がかかる。実際に厚労省・歯科医師会・歯科衛生士会では研修会・求人情報の提供などを行っている。
さて、「東京の歯科医院の半数に歯科衛生士がいない」という噂だが、2020年衛生行政報告例(就業医療関係者) の概況によれば就業歯科衛生士数は東京都1万5,045人。歯科医院数は1万642軒なので1軒あたり1.4人ほど。東京歯科保険医協会が2012年に行った会員アンケートでは82%に歯科衛生士がいると回答している(会員3,450人に対して14%・481人から回答)。全数調査ではないが、歯科衛生士がいない東京の歯科医院は2割ほどと考えて良さそうだ。ちなみに埼玉県の就業歯科衛生士数は6,741人、歯科医院数は3,542軒なので1軒あたり1.9人ほどと東京よりは恵まれた環境になっている。
実際に歯科衛生士はどれくらい足りていないのか調べてみると、東京医科歯科大・小原由紀氏、国立保健医療科学院・安藤雄一氏の「歯科診療所における歯科衛生士不足の現状に関する研究」という論文を見つけた。2014年一歯科診療所あたりの歯科衛生士数は全国平均1.47人、東京都1.09人。論文では歯科衛生士の不足数は約4万5千人程度であると結論づけている。6年間で就業歯科衛生士数は約2万人ほど増えたので、不足は2万5千人ほど。実際に東京都の一歯科診療所あたりの歯科衛生士数1.4人になっているので状況は改善傾向にある。年齢階級別に見ると44歳以下はほぼ変わらず、45歳以上が増加しているのが特徴。ベテラン歯科衛生士の活躍の場が広がってきているが、25歳未満は減少傾向。
2022年度歯科衛生士養成学校入学定員9,609人に対して入学者数8,547人。定員充足率88.9%と定員割れの状態が続いている。2021年東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校閉校、2023年日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校の学生募集停止など、歯科衛生士育成については暗いニュースが飛び交っている。
そもそも歯科の診療報酬が低いことが根本的な原因。歯科衛生士のやり甲斐や雇用を守る上でも大幅な診療報酬アップが必要だ。