論壇
AI(人工知能)と医療
さいたま市 昼間 洋平
AIとは、人工知能のことで1950年代から開発が進められてきた。近年、ビッグデータの活用とディープラーニングの発達により、AIは飛躍的な進歩を遂げている。医療の現場でも活用され始め、今、医療現場が変わりつつある。カルテだけでなく、スマートフォンやタブレットといった新しいデバイス、オンライン通話、SNSなどを使用し、少し前では考えられなかった膨大な情報を医療で活用できるようになっている。
これに伴い、大量の情報を用いたAIの支援による医療の可能性が注目されている。放射線画像によるCOVID-19診断、内視鏡動画による腫瘍ハイライト、スマートフォンのカメラ撮影による皮膚がん診断、患者の発話や表情からうつ病の診断など多くの課題が研究され、すでに一部が実用化されている。
すでに医療現場に導入されているAIの例として
①医療画像AI分析
画像AI分析技術を使うことで、人間の見落としリスクを軽減できる。また、時間も削減できる。医療画像AI分析は、放射線画像・超音波画像・内視鏡画像・眼底検査画像・皮膚疾患画像・病理画像等をもとに情報収集されている。
②生活習慣病気リスクの予測生活習慣病に起因する病気の発症率もAIで予想可能だ。
③ウェアラブルデバイスウェアラブルデバイスとは、頭・手首・腕等に装着するコンピュータデバイスのこと。心臓疾患や糖尿病等の症状モニタリングのためにデバイスを使用するケースも出てきている。
④人工知能による診療支援システム
診察の際に医師と患者の対話をAIが認識し、それらをもとに患者の病名や症状、推奨する薬剤や検査を提案してくれるAIである。
このようにAIが医療現場に参入したことで、医師の負担軽減や、病気の早期発見、ヒューマンエラーの削減に繋がっている。
AIのデメリット
一方で、AI医療のデメリットも存在する。例えば、AIは学習したデータをもとに行動するため、学習していない症状に対応することはできない。また、ディープラーニングの仕組みはブラックボックス化しているため、まだ不明な点が多く、エンジニアでも制御できない暴走が起きる可能性もある。さらに、AI医療が当たり前になってくると、医師がAIの判断に依存してしまう可能性も否定できない。
AIは、学習することで判断はできるが、新しい価値を生み出すことはできず、クリエイティブな活動分野では人間を凌駕することはできないから、我々の生活をより便利にするために活用すればよいという楽観論がある。そもそも文明が科学の力で築きあげてきたものは、人体の持つ能力を模した外的延長のようなもので、「足」の延長として様々な交通機関、「目」の延長として天体望遠鏡や顕微鏡、「手」の延長として様々な精密なデバイスが作られてきた。これらのデバイス全般は人間の手中に収まってきたが、産業の発展とともに、CO2排出量は増加し、その結果地球の「沸騰化」が起こっている。人間の所業の結果、人間に災いをなす典型的な例と言える。AIに関してもある時点で人間の手中から離れていってしまうかもしれない。
ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエルは「こうした時代にデジタルテクノロジーと人間性を共生させるための、新たな論理が求められる」と指摘し、「合理と非合理の間を埋め、善を目指す哲学の英知から学ぶこと」の必要性を説いている。
AIはまだ失敗も多く、医療の現場で十分な信頼を得ているとは言い難い。それでもAIがもっと進歩すれば、「そのうち医師がいらなくなる時代が来るのでは?」と危惧してしまう。AIは合理的な回答が多く、人間の持つ弱さまでは理解できないだろう。その弱さを理解するのには、やはり同じ人間であることが必要であり、人間らしい泥臭さが人を動かしていくと思っている。このように社会は日々変化しているが、AIに負けず…というよりはうまく共存しながら日々の診療にあたらねばならない。
これに伴い、大量の情報を用いたAIの支援による医療の可能性が注目されている。放射線画像によるCOVID-19診断、内視鏡動画による腫瘍ハイライト、スマートフォンのカメラ撮影による皮膚がん診断、患者の発話や表情からうつ病の診断など多くの課題が研究され、すでに一部が実用化されている。
すでに医療現場に導入されているAIの例として
①医療画像AI分析
画像AI分析技術を使うことで、人間の見落としリスクを軽減できる。また、時間も削減できる。医療画像AI分析は、放射線画像・超音波画像・内視鏡画像・眼底検査画像・皮膚疾患画像・病理画像等をもとに情報収集されている。
②生活習慣病気リスクの予測生活習慣病に起因する病気の発症率もAIで予想可能だ。
③ウェアラブルデバイスウェアラブルデバイスとは、頭・手首・腕等に装着するコンピュータデバイスのこと。心臓疾患や糖尿病等の症状モニタリングのためにデバイスを使用するケースも出てきている。
④人工知能による診療支援システム
診察の際に医師と患者の対話をAIが認識し、それらをもとに患者の病名や症状、推奨する薬剤や検査を提案してくれるAIである。
このようにAIが医療現場に参入したことで、医師の負担軽減や、病気の早期発見、ヒューマンエラーの削減に繋がっている。
AIのデメリット
一方で、AI医療のデメリットも存在する。例えば、AIは学習したデータをもとに行動するため、学習していない症状に対応することはできない。また、ディープラーニングの仕組みはブラックボックス化しているため、まだ不明な点が多く、エンジニアでも制御できない暴走が起きる可能性もある。さらに、AI医療が当たり前になってくると、医師がAIの判断に依存してしまう可能性も否定できない。
AIは、学習することで判断はできるが、新しい価値を生み出すことはできず、クリエイティブな活動分野では人間を凌駕することはできないから、我々の生活をより便利にするために活用すればよいという楽観論がある。そもそも文明が科学の力で築きあげてきたものは、人体の持つ能力を模した外的延長のようなもので、「足」の延長として様々な交通機関、「目」の延長として天体望遠鏡や顕微鏡、「手」の延長として様々な精密なデバイスが作られてきた。これらのデバイス全般は人間の手中に収まってきたが、産業の発展とともに、CO2排出量は増加し、その結果地球の「沸騰化」が起こっている。人間の所業の結果、人間に災いをなす典型的な例と言える。AIに関してもある時点で人間の手中から離れていってしまうかもしれない。
ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエルは「こうした時代にデジタルテクノロジーと人間性を共生させるための、新たな論理が求められる」と指摘し、「合理と非合理の間を埋め、善を目指す哲学の英知から学ぶこと」の必要性を説いている。
AIはまだ失敗も多く、医療の現場で十分な信頼を得ているとは言い難い。それでもAIがもっと進歩すれば、「そのうち医師がいらなくなる時代が来るのでは?」と危惧してしまう。AIは合理的な回答が多く、人間の持つ弱さまでは理解できないだろう。その弱さを理解するのには、やはり同じ人間であることが必要であり、人間らしい泥臭さが人を動かしていくと思っている。このように社会は日々変化しているが、AIに負けず…というよりはうまく共存しながら日々の診療にあたらねばならない。