理事長声明
政府の「最終とりまとめ」を受けた、国会での検討・判断を求めます
~「保険証は存続」させるしかありません~
2023年10月25日
埼玉県保険医協会 理事長 山崎利彦
埼玉県保険医協会 理事長 山崎利彦
◆ マイナ保険証のみでは不十分と認めた最終とりまとめ
8月に政府が公表した「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会 最終とりまとめ」は、従来からの政府方針がしっかりと踏襲される一方で、先の国会における「保険証廃止法」成立後も次々と発覚する新たなトラブルや医療現場の混乱に対する政府の判断として、多くの現実的な検討がされています。
特に「資格確認書」を「当面の間、マイナ保険証を保有していない者その他保険者が必要と認めた者については本人の申請によらず保険者が交付する運用とする」(「とりまとめ」6頁)としたことは、8月4日に首相が会見で説明したことが公式に示されたという意味において重要です。また、「マイナ保険証の保有者がご自身の被保険者資格を簡易に把握できるよう、(略)、資格情報のお知らせを交付する」(「同」7・8頁)とした全く新たな発行物が提案されたことは極めて大きな判断が示されたものといえます。
健康保険証を廃止する2024年秋以降、「マイナ保険証」を唯一のツールとし、例外として資格確認書を毎年の申請にて入手することを国民に要請している保険証廃止法の構成は大きく修正されました。
大規模な通信障害のみならず様々な事情でデジタルツールが万一機能しなくなった場合の予備的機能、予備的ツールを補完することは、国民皆保険制度を国が責任をもって運営していく限りは必要なことです。今回の軌道修正は大いに評価されるべきものです。
◆ 健康保険証を存続させれば良いだけ
マイナ保険証を保有していない者には「資格確認書」を一律に発行し、マイナ保険証を保有する者には「資格情報のお知らせ」を一律に発行するとの修正は、結局のところは従来の健康保険証を存続させるのが良いと、国民の誰しもが考えています。
そもそも、マイナ保険証は法令上、取得するかどうかの判断は個々の任意です。いくらマイナ保険証の利便性を政府が強調しても取得を強制することができない以上、健康保険証を廃止したうえで、マイナ保険証の保有を原則とすることは、現状では無理がありすぎます。
8月度のマイナ保険証の利用率は4.6%であり、4月以降は毎月下降をしています。また、驚くべきことに厚生局や社会保険診療報酬支払基金などマイナ保険証を推進する厚労行政に関わる職員でも一割程度しか利用していません。これが、現在のマイナ保険証に対する客観的評価です。
現状と「最終とりまとめ」を踏まえて2024年秋に現行保険証廃止としている現行法令の改正の審議が早急に国会で行われることを求めるものです。
◆ 既定方針の遂行は無責任。一旦停止を
付言すると、岸田総理が8月の会見で「総点検」の結果を踏まえて保険証廃止を判断していくとする意向を表明しているにも関わらず、厚労省をはじめとする政府は、現在も既定方針を粛々と進めています。10月18日開催の中医協では、新たに訪問看護ステーションにマイナ保険証のカードリーダーの設置を義務づけることを決定しています。このような政府運営は、総理の会見や「総点検」そのものに対する信頼を失わせるものです。
また、同日にはマイナ保険証のカードリーダー設置が義務化されたことに対して今年3月に経過措置を申請した医療機関等の状況がようやく発表されました。経過措置の期限が履行されていない状況がみられるなど、厚労省自らが定めた義務化の省令を曖昧に放置しています。また、来年秋に廃業閉院することを強制する経過措置に対して968人が申請していることも初めて示されましたが、機器の導入が困難なことを理由として廃業閉院を迫る現行ルールは早急に運用改善をはかるべきです
既定方針そのものの見通しが不十分なままシステム施行を見切り発車したことが、現在の混乱を招いているにも関わらず、尚も既定方針を遂行しようとする政府の進め方は改めるべきです。是非とも国会が点検、チェックの役割を発揮することを求めます。
8月に政府が公表した「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会 最終とりまとめ」は、従来からの政府方針がしっかりと踏襲される一方で、先の国会における「保険証廃止法」成立後も次々と発覚する新たなトラブルや医療現場の混乱に対する政府の判断として、多くの現実的な検討がされています。
特に「資格確認書」を「当面の間、マイナ保険証を保有していない者その他保険者が必要と認めた者については本人の申請によらず保険者が交付する運用とする」(「とりまとめ」6頁)としたことは、8月4日に首相が会見で説明したことが公式に示されたという意味において重要です。また、「マイナ保険証の保有者がご自身の被保険者資格を簡易に把握できるよう、(略)、資格情報のお知らせを交付する」(「同」7・8頁)とした全く新たな発行物が提案されたことは極めて大きな判断が示されたものといえます。
健康保険証を廃止する2024年秋以降、「マイナ保険証」を唯一のツールとし、例外として資格確認書を毎年の申請にて入手することを国民に要請している保険証廃止法の構成は大きく修正されました。
大規模な通信障害のみならず様々な事情でデジタルツールが万一機能しなくなった場合の予備的機能、予備的ツールを補完することは、国民皆保険制度を国が責任をもって運営していく限りは必要なことです。今回の軌道修正は大いに評価されるべきものです。
◆ 健康保険証を存続させれば良いだけ
マイナ保険証を保有していない者には「資格確認書」を一律に発行し、マイナ保険証を保有する者には「資格情報のお知らせ」を一律に発行するとの修正は、結局のところは従来の健康保険証を存続させるのが良いと、国民の誰しもが考えています。
そもそも、マイナ保険証は法令上、取得するかどうかの判断は個々の任意です。いくらマイナ保険証の利便性を政府が強調しても取得を強制することができない以上、健康保険証を廃止したうえで、マイナ保険証の保有を原則とすることは、現状では無理がありすぎます。
8月度のマイナ保険証の利用率は4.6%であり、4月以降は毎月下降をしています。また、驚くべきことに厚生局や社会保険診療報酬支払基金などマイナ保険証を推進する厚労行政に関わる職員でも一割程度しか利用していません。これが、現在のマイナ保険証に対する客観的評価です。
現状と「最終とりまとめ」を踏まえて2024年秋に現行保険証廃止としている現行法令の改正の審議が早急に国会で行われることを求めるものです。
◆ 既定方針の遂行は無責任。一旦停止を
付言すると、岸田総理が8月の会見で「総点検」の結果を踏まえて保険証廃止を判断していくとする意向を表明しているにも関わらず、厚労省をはじめとする政府は、現在も既定方針を粛々と進めています。10月18日開催の中医協では、新たに訪問看護ステーションにマイナ保険証のカードリーダーの設置を義務づけることを決定しています。このような政府運営は、総理の会見や「総点検」そのものに対する信頼を失わせるものです。
また、同日にはマイナ保険証のカードリーダー設置が義務化されたことに対して今年3月に経過措置を申請した医療機関等の状況がようやく発表されました。経過措置の期限が履行されていない状況がみられるなど、厚労省自らが定めた義務化の省令を曖昧に放置しています。また、来年秋に廃業閉院することを強制する経過措置に対して968人が申請していることも初めて示されましたが、機器の導入が困難なことを理由として廃業閉院を迫る現行ルールは早急に運用改善をはかるべきです
既定方針そのものの見通しが不十分なままシステム施行を見切り発車したことが、現在の混乱を招いているにも関わらず、尚も既定方針を遂行しようとする政府の進め方は改めるべきです。是非とも国会が点検、チェックの役割を発揮することを求めます。
以上