論壇

今回の診療報酬改定を読み解く

上尾市  小橋 一成
 2024年診療報酬改定は、今までにないほど医療現場を無視した改定である。診療報酬本体の改定率はプラス0.88%であった。その中身は医科プラス0.52%、歯科プラス0.57%。薬価等は1.0%マイナスとされ、全体(ネット) では0.12%のマイナス改定である。
 この間、医療・社会を取り巻く問題として、新型コロナウイルス感染症・マイナ保険証のオンライン資格確認の導入・諸物価の高騰などがあり、診療報酬は必ず上がるものと思っていた。しかし、現実は六期連続のマイナス改定であった。その問題点の一部を紹介する。
 初診料と再診料は、日常の感染症対策と事務職などの賃上げのためとして引き上げられた。さらに今回は看護師などの医療従事者の賃上げを評価する「ベースアップ評価料」なる、過度の事務負担と申請・報告を求める初・再診料と合わせて算定する点数が新設された。この「ベースアップ評価料」はⅠとⅡがあり、Ⅱでは8区分の点数が設定されている。この状況は、患者にとって理解し難いことだろう。制度の複雑さは患者にますます医療側への不信感を与えることになりかねない。
 また、特定疾患療養管理料に大きな変更がされた。「高血圧症」「脂質異常症」「糖尿病」が対象から外されたのである。そのため外来1回につき225点が算定できなくなり、大きな打撃となる。
 今回の改定は生活習慣病を中心とした管理料や処方箋料等を再編し、マイナス0.25%とされたが、実際にはそのような低いマイナスではない。「高血圧症」や「脂質異常症」「糖尿病」の管理料は包括点数である生活習慣病管理料に統合されるとしているが、もともとこれらの疾病は生活習慣病管理料の対象である。算定している会員もおられるかと思う。しかし、実際には約1%しか算定していない。その理由は算定要件が複雑であり、説明する際に非常に時間がかかるためである。更に、決定的な理由は患者本人からの同意と署名が必要なことである。高齢者や重症患者になるほど理解し難く、承諾を得ることは難しい状況にある。今回の改定では現状の生活習慣病管理料が再編され、新たに再診料の外来管理加算も含んだ生活習慣病管理加算(Ⅰ)となった。そして検査等を包括しない生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設された。おそらく13点~16点の減点になる。そして生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定した場合、6カ月間は点数の高い生活習慣病管理料(Ⅰ)を算定することはできない制限がある。
 さらに問題は、28日以上の長期処方や管理料とは関係ないリフィル処方の対応が可能であることを保険医療機関に掲示しなければならないことだ。医師の判断で行う処方が、患者からの要望に適切に対応することを求められており、安易に生活習慣病管理料を算定すると患者から長期処方やリフィル処方を求められ、その分、外来患者は確実に減ってしまう。
 また、医療DXと称して作業量が圧倒的に増える治療計画などの文書の電子化、電子処方箋や電子カルテでの情報共有ができれば良いと言っている。しかし、電子カルテの共有化はできもしないことで絵に描いた餅だ。オンラインによる情報共有は、電子化に対応できない一部医療機関では医療自体ができなくなるため、地域医療が分断される恐れがある。
 患者の利益と医療の質を守るために、より患者目線に立った改定が必要である。診療報酬の算定要件や分類の複雑さを解消し、地域医療の維持と向上に努めるべきである。

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