論壇
在宅医療の改定はペナルティを課すもの
医療機関が報われる改定を
川越市 柴野 雅宏
今年も点数改定が行われた。小生は長年、在宅医療における点数の簡素化を訴えてきたが、今年もその願いは叶わなかった。それどころか、さらに複雑怪奇なものとなった。そのすべてを詳しく述べるのは到底不可能なため、主な点を指摘したい。詳しくは新点数説明会のテキスト「点数表改定のポイント」にあるので、参照していただければ幸いである。
まず、在宅療養支援診療所(支援診)、在宅療養支援病院(支援病)の施設基準に訪問栄養食事指導の体制整備が追加された。支援診は努力義務だが、支援病は経過措置期間はあるものの義務化された。そもそも寝たきりで意識のない患者や、経管栄養等を施行中の患者に何を指導しようと言うのか。また地域において介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホームから協力医療機関となることを求められた場合、求めに応じることが望ましいとされた。
次に強化型支援診、支援病において各年5~7月の訪問診療の算定回数が2,100回を超える場合は、翌年1月までに「在宅データ提出加算」の届出を行うこととされた。
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)でも、支援診、支援病の施設基準にペナルティが規定された。訪問回数に制限がない疾病以外で「直近3カ月の患者1人当たりの訪問診療の平均回数が12回未満」との基準を満たせない場合は、満たせなくなった後の直近1カ月の同一患者の月5回目以降の在宅患者訪問診療料を100分の50に減算するとの要件が追加された。
要するに、①支援病では管理栄養士を雇わなければならない、②介護老人保健施設等から求められたら協力医療機関が応じることが望ましいとされているのに、③回数制限のない疾患以外の患者に頻回に訪問診療すると、ペナルティが課せられるようになったのである。
ここまででも複雑怪奇で理解しがたい内容であるが、先はまだまだ続く。今度は往診料の改定である。以下のア~エの患者以外に行った往診料の加算点数が引き下げられる。(ア)自院で過去60日間に在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)または在宅がん医療総合診療料を算定している患者、(イ)過去180日間に自院の外来を受診し、要件(新点数説明会テキスト参照)となる点数を3回以上算定している患者、(ウ)往診を行う医療機関(A)と連携する医療機関(B)において過去60日以内に在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)または在宅がん医療総合診療料を算定している患者、(エ)協力医療機関として定められている介護老人保健施設等に入所する患者。
要するに、過去に受診歴がある患者以外は減点となる。往診とは、自宅で動けなくなって受診中の医療機関だけでなく、見知らぬ医療機関に助けを求めるのが本来の姿である。ところが、今回の改定はコロナ禍で初診の患者等に臨時的に往診を行ってきた医療機関などが初診では動けなくなり、助けを求めている患者に手を差し延べようとするとペナルティが課せられることとなっている。
そして、とどめを刺すように極めつきの話がまだある。それは、今までより細分化された人数制限である。在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料の同一建物診療患者数の、10人以上を上限としていた区分が「10~19人」「20~49人」「50人以上」に細分化され、それぞれの区分で点数が大きく引き下げられた。さらに同区分で訪問診療の回数が多い医療機関には、減算が設けられた。
話をまとめると、たくさんの施設を引き受けている医療機関の努力は何にも認められないことが明らかになった。改定の基本方針の「質の高い在宅医療の確保」は現場とかけ離れている。
いい加減、医学的にも合理性があり、まじめに在宅医療に取り組んでいる医療機関が報われる簡素な制度にして欲しいと切に願う次第である。
まず、在宅療養支援診療所(支援診)、在宅療養支援病院(支援病)の施設基準に訪問栄養食事指導の体制整備が追加された。支援診は努力義務だが、支援病は経過措置期間はあるものの義務化された。そもそも寝たきりで意識のない患者や、経管栄養等を施行中の患者に何を指導しようと言うのか。また地域において介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホームから協力医療機関となることを求められた場合、求めに応じることが望ましいとされた。
次に強化型支援診、支援病において各年5~7月の訪問診療の算定回数が2,100回を超える場合は、翌年1月までに「在宅データ提出加算」の届出を行うこととされた。
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)でも、支援診、支援病の施設基準にペナルティが規定された。訪問回数に制限がない疾病以外で「直近3カ月の患者1人当たりの訪問診療の平均回数が12回未満」との基準を満たせない場合は、満たせなくなった後の直近1カ月の同一患者の月5回目以降の在宅患者訪問診療料を100分の50に減算するとの要件が追加された。
要するに、①支援病では管理栄養士を雇わなければならない、②介護老人保健施設等から求められたら協力医療機関が応じることが望ましいとされているのに、③回数制限のない疾患以外の患者に頻回に訪問診療すると、ペナルティが課せられるようになったのである。
ここまででも複雑怪奇で理解しがたい内容であるが、先はまだまだ続く。今度は往診料の改定である。以下のア~エの患者以外に行った往診料の加算点数が引き下げられる。(ア)自院で過去60日間に在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)または在宅がん医療総合診療料を算定している患者、(イ)過去180日間に自院の外来を受診し、要件(新点数説明会テキスト参照)となる点数を3回以上算定している患者、(ウ)往診を行う医療機関(A)と連携する医療機関(B)において過去60日以内に在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)または在宅がん医療総合診療料を算定している患者、(エ)協力医療機関として定められている介護老人保健施設等に入所する患者。
要するに、過去に受診歴がある患者以外は減点となる。往診とは、自宅で動けなくなって受診中の医療機関だけでなく、見知らぬ医療機関に助けを求めるのが本来の姿である。ところが、今回の改定はコロナ禍で初診の患者等に臨時的に往診を行ってきた医療機関などが初診では動けなくなり、助けを求めている患者に手を差し延べようとするとペナルティが課せられることとなっている。
そして、とどめを刺すように極めつきの話がまだある。それは、今までより細分化された人数制限である。在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料の同一建物診療患者数の、10人以上を上限としていた区分が「10~19人」「20~49人」「50人以上」に細分化され、それぞれの区分で点数が大きく引き下げられた。さらに同区分で訪問診療の回数が多い医療機関には、減算が設けられた。
話をまとめると、たくさんの施設を引き受けている医療機関の努力は何にも認められないことが明らかになった。改定の基本方針の「質の高い在宅医療の確保」は現場とかけ離れている。
いい加減、医学的にも合理性があり、まじめに在宅医療に取り組んでいる医療機関が報われる簡素な制度にして欲しいと切に願う次第である。