声明・談話

【理事会 抗議要請書】
「マイナ保険証のスマホ搭載」法の施行は再考を求めます
 ~ これまでのトラブルを教訓としない導入は新たなトラブル温床に ~

2024年6月12日
埼玉県保険医協会理事会
1 医療現場の実用を見通せない法成立は拙速。附帯決議を踏まえれば来春施行は困難

 マイナ保険証機能をスマートフォンに搭載することなどを含む法案が、5月31日に国会で成立しました。マイナンバーやマイナカードの利用を促進させる様々な事項を束ねた法案審議は不十分であり、かつ、医療現場における見通しが検証されないまま拙速に決議がされました。見切り発車の状況で法案を成立させたことに抗議をするものです。
 医療現場への影響が見通せない状態で法案を国会に提起し審議を求めた岸田政権には特に強く抗議をするものです。今後、厚労省、デジタル庁には法施行への準備として、参院の附帯決議にある「オンライン資格確認等システムにおけるスマートフォンの利用については、医療機関等が円滑に対応できるよう、情報の周知に努めるとともに、必要な支援の在り方について検討すること」を重く受け止め、かつ、軽率に来春から一律導入をしないよう強く求めます。併せて導入にあたっては全ての医療機関に対応を強要することなく、任意選択とすることなどの計画を作成し、医療現場の実情、患者に対する関連ルールの啓発状況などを調査、とりまとめを行い公表することを求めます。

2 あと1年での実用化は新たなトラブルの温床になること必至

 現在、政府は医療機関にマイナ保険証への対応を義務づけていますが、法施行に伴い、スマートフォンに搭載されたマイナ保険証の対応も全医療機関に対して義務づけられるのか、国会審議の中では政府から特段の説明はされませんでした。そもそも、スマートフォンに対応するためにカードリーダー機器の交換が伴うのか、という法施行の大前提となる事案についても、政府答弁は二転三転しています。最終的に政府はどのような見解で、どのような導入を医療機関に求めているのか私たちには伝えられていません。
 仮にカードリーダー機器本体の交換が不要であっても、アプリケーションソフトの更新は必須であり金銭的負担は当然のこと、対応するマンパワーなどにも新たな負担が求められます。外付けのケーブルを用いるにしてもカードリーダー本体にはアクセサリーポートはありません。スマホの操作方法の説明にも大きな手間が取られるでしょう。最も危惧するのは、新たな技術をぶっつけ本番で全国導入することにより、様々なトラブルやエラーが生じないのか、それに伴う患者への説明などが医療機関に負わされてこないのかという問題です。

3 教訓化されていないシステム導入経過 導入は手上げ方式にて

 マイナ保険証システム(オンライン資格確認システム)の導入にあたって、政府はパイロット試験を何ら実施しないままにいきなりシステムの全国導入と展開をはかりましたが、このために、トラブルやエラーが多数生じました。医療現場にも患者にも負担を課し不安を与える状況は現在も継続中です。マイナ保険証の利用率が低迷し続け、医療現場と患者を混乱させているのは、政府のこうした杜撰な対応や経過、実績に原因があります。残念ながら今度の法成立と施行に向けた審議ではこれらの教訓が全く生かされていないといえます。
 スマートフォン搭載の実用化にあたっては、機械的、一律な対応を医療機関に求めることなく、希望する医療機関に限定した実証導入やトラブル事例などを含む利用事例の発表により、医療機関が参入を判断できる体制を整え、手上げ方式とするような進め方を最低限、講ずることが必要です。

4 地域医療を担っている医療現場に対して配慮を

 今年3月以降から現在まで、全ての医療機関が24年診療報酬改定による複雑で膨大な数の変更への対応に多大な労力を割かれています。スタッフの賃上げ対応なども原資の確保ができないジレンマに多くの開業医は置かれています。このような医療機関の実情を考慮せずに、マイナ保険証推奨キャンペーンに協力要請をする政府の姿勢は、異常といわざるを得ません。医療機関にも患者にも全く寄り添っていないことが明らかです。
 マイナ保険証のスマホ搭載の実用化に向けては、医療現場の実情を踏まえた対応策を検討するよう、重ねて要請するものです。
以上
 

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