「生活習慣病」診療スタイル変更が求められているが…

久喜市 青木 博美
◆特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行
 今回の改定で、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病と脂質異常症、高血圧症の除外が行われた。これは、2023年12月に中医協を飛び越えて決められた厚生労働・財務大臣の合意「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋等の再編等の効率化・適正化」(0.25%減)の具体化である。
 特定疾患療養管理料に代わるものとして、厚生労働省の誘導に沿って、新設された「生活習慣病管理料(Ⅱ)」を算定している方が多いと思われる。これは、生活習慣病療養計画書を作成、説明し患者の署名を得ることを条件に認められる。
 生活習慣病に対して、これまでもいわゆる生活指導を行ってきたわけではあるが、より一層、量的にも質的にも充実が求められている。

◆療養計画書の作成と患者署名
 「生活習慣病管理料」を算定するには療養計画書の作成と患者の署名が必要で、ひと手間かかる。特定疾患療養管理料の場合は管理内容の要点をカルテに記載することで算定できたが、生活習慣病管理料は「療養計画書」を作成し、患者へ説明し、患者の「署名」を受けて交付し、交付したものの写しをカルテに添付することが必要となる。
 生活習慣病患者の増加を予想し、従来よりもより強固な管理が求められている。
 これは医師と患者が自らの病気について話し合い、相互理解の上に治療を進めるSDM(Shared Decision Making)に則っており、理念としてはあるべき姿である。
 今までの自分の診療スタイルは、初診時には、病状と治療の必要性、起こりうる合併症等について説明し、栄養指導を管理栄養士に、運動療法が必要な場合は理学療法士に依頼していた。しかし、初診時以降の診療では「体調はいかがですか」「まずまずです」「今日の血圧はいいですね。HbA1cはもう少しですね」「食事、運動に気を付けて頑張ってください。では次回2カ月後に」といった調子で、簡略にすませていた。
 また、コントロール状況が良くない場合には、簡単なパンフレットを渡して説明を追加したりしていた。毎回は治療目標の確認などは、特には行っていなかった。
 生活習慣病療養計画書の初回用では「ねらい」として検査結果を理解できること、自分の生活上の問題点を抽出し目標を設定できることとある。【目標】体重、BMI、血圧、HbA1cについて【①達成目標】【②行動目標】【重点を置く領域と指導項目】【検査】について記載説明し患者から署名をもらう必要がある。

◆療養計画書を書くためには
 まず患者の状況を把握する必要がある。受診時にチェックを入れればいいだけの簡単なアンケート用紙を渡して記入してもらう。
 項目:身長、体重(BMIは計算)、食生活、間食、喫煙、飲酒、体重測定、血圧測定、歯科受診、眼科受診、等
 初診時には喫煙していた方が禁煙していたり、運動していた方ができなくなっていたり、いろいろな再発見もあり有用である。

◆治療目標を確認することに意義
 初回は目標の確認に重点を置いている。改めて確認してみると、目標については理解されていない場合も多い。厳しすぎる目標を持っていたり、逆に緩すぎたりすることもある。
 目標値はガイドラインで示されているが、患者には複雑に見える。分かりやすいようにガイドラインでの目標値を一枚ずつのパンフレットにして、手渡しし確認している。ガイドラインではこうなっているが、あなたの場合は…など、目標の確認を行う。
 現在は、①体重、BMI、サルコペニア、握力、②血圧、④HbA1c、④脂質異常症について作成し、大きく丸を付けたり、書き込んだりして渡している。

◆生活習慣病の診療スタイルの変更 -多職種連携- が求められている
 薬物療法に偏らないでライフスタイルを変えるような指導が求められている。
 いろいろ工夫をしているのだが、作成に説明にとどうしても時間がかかってしまう。日常の診療の中では毎回、十分な時間をとって説明を繰り返すことはなかなか困難である。医師一人でやろうとするとなかなか難しい。多職種と連携して診療を行う体制を作っていく必要があると感じている(望ましい要件としてあげられている)。算定要件としても、糖尿病においては「眼科受診の推奨」に加えて今改定より「歯科受診の推奨」が加わっている。
 「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」「二次性骨折予防継続管理、骨粗鬆症リエゾンサービス」のやり方などが参考になる。
 いろいろ忙しくなるが、有用な手順と考えて、やるしかないか。

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