衆院選に向けて各党、前議員(候補者)等に以下の要請書を提出しました。

【要望書提出】

現行の保険証廃止は延期してください
医療機関、患者、国民、保険者の混乱回避のために

2024年10月10日
埼玉県保険医協会
理事長 山崎 利彦
 石破内閣の発足とともに、平デジタル相、福岡厚労相が就任直後から次々と廃止路線の「堅持」を表明。10月7日の国会では石破総理も、保険証の新規発行終了について「従来のスケジュールどおりにすすめる」「資格確認書でも保険診療が受けられることを高齢者にも周知し」「不安の払拭に努める」と述べたと報じられました。石破総理の自民党総裁選中の「先送り」発言には多くの期待が寄せられていましたが一転し、混乱回避方針は撤回されてしまいました。
 私たちはこれまでも保険証が今後どのように切り替わっていくのか案内が不足している面、資格確認の券種が多様化する実務面から、多くの混乱が予見され、その回避のために保険証廃止を延期するよう求めてきました。廃止を強行していけば大きな混乱は必至です。私たちは改めて現在の保険証を残して、マイナ保険証との併用・選択制とすることを総理や国政を直接担う国会議員、来たる総選挙の候補者の方々に求めます。

◆1.予見される混乱を回避するために
 私たちが保険証の新規発行の停止を延期するよう求めるのは、各場面における混乱が避けられず、ひいては医療現場での大きな混乱が予見されるためです。
 これから保険証に替わり使用していく「資格確認書」や「マイナ保険証と資格情報のお知らせ」の交付時期は保険者やマイナ保険証の所有の有無によっても異なるため一元的に解釈することが不能です。加えて、証明用のカード類も次々と種類が増え、医療機関では9種類ものカード・証書への対応が求められてきます。保険者による証書の切り替えも順当に準備が進んでいないと聞きます。発行に滞りがあれば、医療機関における資格確認が滞ります。
 交付時期という時間軸による変更と券面の種別の多様化という事態で混乱が予見されるものの国民、患者や医療機関が直接相談できる窓口も設置が見込まれていません。医療機関の窓口で全ての対応が迫られることは必至です。
 これまでも政府等からはマイナ保険証の利用推進、取得要請一辺倒の案内が強く行われてきましたが、肝心の利用率はいまだ12.3%(8月実績)であり政府の案内効果が及んでいないことは明らかです。これから資格確認書を説明しても、国民や患者に安心を与えることはできないと思われます。

◆2.運転免許証は「従来版」が残り、保険証と矛盾
 加えて、運転免許証では「マイナ版」と「従来版」が選択できることに対して、保険証では、なぜ「従来版」が廃止されるのか合理的な説明は存在せず大きな矛盾が生じています。今後、国民からの不満と疑問が拡がるのは必至で、こうした対応も医療機関の窓口で迫られることも予見されます。
 政府や与党による人災ともいえる混乱の対応を医療機関に求められることは容認できません。

◆3.「マイナ保険証」の利点は妄想
 政府はマイナ保険証には様々なトラブルが避けられず、補完用の「資格情報のお知らせ」というアナログツールの必要性(2枚持ち)を既に周知しています。そのうえでマイナ保険証の利点と紹介されている「受付での資格確認簡素化」や「災害時の医療情報共有」ですが、これらは現行保険証でも同様に行えるものでありミスリード、失当です。「より良い医療」も現状では処方情報や健診情報の共有程度であり、お薬手帳で十分であるとする医療関係者の声は多くあります。医療情報を共有したり、ましてや電子カルテを共有するなどは遠い将来のことで、不備が頻発しないシステムが完備されていない現状では妄想です。既述した混乱と比較考察すれば保険証を残すメリットが勝ります。
 平デジタル相が保険証の悪用防止としてマイナ保険証の効果を紹介している点も、これまでの国会で答弁されてきた件数等を無視したものです。効果やメリットがあるのならば所管庁としてデータを示すのが最低限の大臣の任務でしょう。

◆4.慣れ親しんだ保険証が混乱回避に必要
 資格確認書をアナログツールと見做し、この発行によって保険証廃止の不安払拭に努めるとのことですが、国民に定着した保険証に替えて資格確認書が交付されても国民に安心は拡がりません。見かけは同じでも扱いや有効期限は異なります。根拠法上で申請主義が採られている点は一切説明がなく、国民有権者に対する説明としては不誠実です。
 保険証は国民皆保険という社会基盤を守る重要インフラであるにも関わらず、新たなルールの周知がこれまでされておらず、国民や関係者に理解と準備がされてきていないことは明らかです。資格確認等システム(マイナ保険証システム)の脆弱性ともあわせてみれば、保険証廃止を延期して保険証を残すこと以外に混乱回避の方途はありません。関係者の皆様の賢明な判断と行動をお願いいたします。
以上

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